37話 お宝ざっくり資料室 前編
ひまりヶ丘高校は県内でもトップクラスの進学校だ。それ故毎日の小テスト、週末の課題がとても充実している。毎週月曜日には週末課題テストというものが実施され、一週間の実力が試されることとなる。のだが………
『来夢〜!どうだったんですの〜?』
『NO』
『二文字!?そんなにヤバかったんですの!?』
テストは各教科最初の10分間。国数英しか始まっていないが、化学基礎、生物基礎、物理基礎、日本史A、現代社会も、授業進行に沿って各テストがカリキュラムに組まれている。理社科目は1ヶ月ペースでの実施らしい。因みに2年生から文理選択なので、1年生諸君は余計な教科を受ける羽目になるのだ。地方高校における最大の弱点である。
さてそんな授業が終わり、かの寂れた四階、新聞部の部室にやってきた。
『ここは誰も来ないですし、いっそ見せ合いませんこと?』
『いいけど、アリアも東夜も見せてよ?なんか余裕そうな顔してるけど……』
『…絶対ェヤダ』
『あ、東夜の答案発見ですわ』
『あっ!馬鹿っ!』
『どれどれ?』
国語92
英語81
数学54
『oh………数学………』
『カバン勝手に開けんな』
『明らかな文系脳ですわね』
『アリアは?』
国語48
英語100
数学80
『oh………国語………』
『まぁ、英語は流石にハーフなだけあるな』
『来夢のが一番気になりますわ』
『え、や、僕は、その』
国語60
英語72
数学87
『うわ微妙…』
『ですわね…』
『強いて言えば数学が少しできるくらいかな……』
『なんか見事に得意教科が分かれましたわね。いっそ次のテストこの3人で教えあいっこするのはどうですの?』
『あ、いいね、お互いの苦手科目がカバーできるし』
『いや国語とか教えるところないだろ。俺だけさりげなく役に立たない奴宣言ですか?』
『なんでそう捻くれちゃうかなぁ…』
今日は週明けの月曜日で、基本この日から部活動はスタートする。校庭はすでに新入部員たちのエネルギーある声で満ち満ちており、部活動体験で優しかった先輩方の変貌っぷりを思う存分体験している頃だろう。あれトラウマになるよね
かくいう新聞部も本日から活動開始である。そんな新聞部にはデストロイな先輩はいない。代わりにデストロイな顧問はいる。
『はぁぁい♡元気してたかしらぁん!自然教室楽しかったぁ?』
書類の山片手にラスボスオーラ溢れたケバメイクの教師。新聞部顧問:葛籠山 蝦夷だ。一瞬東夜から「オエッ」って声がしたが気のせいだろう。気のせい……だろう。
『はぁ、それで先生、まず何からすればいいんすか?結局何するかよくわかんないんすよね』
『新聞部は実際なんでもアリの部室よ〜?調査活動をしたくない日は炬燵でぬくぬく〜みたいなのもよくあるわねぇ』
『じゃぁ俺らはこれからぬくぬくすりゃいいんすかね…』
『あらぁ?アタシの胸でぬくぬくさせてあげようかしらん?』
『すいませんごめんなさい許してください』
初見のトラウマがデカすぎて東夜の震えがとまらない….
『じゃあ先ずは何か調査したいことを決めるというのはいかがかしら?』
アリアがおずおずと手をあげる。まぁそれが妥当だよね
『賛成〜!先生、過去にはどんなこと調査してたんですか?』
『まぁまぁ、あんまり慌てない慌てない。新聞部ではね、入部してから最初に調べてもらう内容は伝統的に決まっているのよぉ?』
『はひ?』
伝統??なんか嫌な予感がする…
『……で、なんなんすかそれ?』
『ウフフ、ズバリ……』
……
…………
…………………
みなさんの学校には「七不思議」と呼ばれる怪談話は存在するだろうか?存在するとまではいかないとしても、子供たちが勝手にソレを作り出すみたいな遊びをしたことはないだろうか?作者はあるらしい(大爆笑)。
まぁソレはさておき、どこの学校にもやはり奇妙な噂話というものは存在する。学校が建っている場所は昔墓地だったとか、昔自殺した生徒が校舎を徘徊しているとか、、まぁそんな感じだ。
そしてかく言うひまりヶ丘高校にも、そんな怪談話が存在するという。
『新聞部は毎年人が入部するわけじゃなくてね、四年に一変とか6年にいっぺんの定期で復活するのよぉ。そして復活する度に調べるのが、「ひまりヶ丘高校七不思議」ってわけよん!』
『はぁ…。いや、それって過去に調べたやつ纏めたら普通に七不思議になるんじゃ?』
『資料室にはたしかに過去に調査した結果が詰まってるわねぇ。でも、それを実際に足を使って調べに行くっていうのが、新聞部の初任務って感じなのよぉ〜』
つまり、先輩たちの調査結果を自分たちの目で確認しろってことだよね?あれ?ちょっと待って
『いや、先生、あの。それってつまり、、夜の校舎調べろってことなの?』
『アタシは教師よん?校則違反は推奨できないわねぇ〜。勿論放課後オンリーの活動よ。まぁ、貴方達が夜調べに行きたいって言うなら止めはしないわねぇ』
『む、むむむむむ、無理ですわ!!よ、夜の校舎なんて、、何が起こるとお思いですの!?』
アリアが大慌てする。あれ、もしかしてこう言う話苦手?
『あ?何が起こるんだよ?』
『ほら、よくあるじゃないですの!怪談話を調べに行ったら、それは実は殺人鬼とかの仕業で、高校生達が翌日死体となって、、、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!みたいな!』
あ、違った。思ってたよりリアリストだった。
『行きている人間が一番怖いってな。ほら過労死とか、ブラック上司とか、パワハラ上司とか、、怖すぎて働きたくねえな…』
『結論の終着点がいつもそこになるのは何故なのか…』
東夜の将来が非常に心配です。うーん、顔の良さとか活かしてモデルとかで食って行けるような気がするけど、、まぁ目が死んでるから無理かなぁ
『いや、何その微妙そうな顔…』
『いや〜、東夜顔はいいからこのままだと将来本当にヒモになりそうだなぁって』
『あー、多分こう言ってるけど普通に入社して社畜やって一生を終えると思うぞ?つまんねぇ人生だった…』
『諦めてんじゃねぇ!』
サトリ世代怖!!同い年だよね!?家庭環境の差ってやつなの??現代日本怖っ!!
『さて、取り敢えず資料室でも行くか。ここでこうしてても拉致があかない』
『そだね。えっと、鍵は空いてますか?』
『アタシが開けといたから行ってらっしゃい♡』
手際がいいよね。毎回顧問やってるのかな?
……
…………
…………………
『へっくちょんっ!!うぅ、埃っぽいですわ…』
『アリアのクシャミめっちゃ可愛い…』
『へぇぇ!?な、何を言いだすんですの!?』
『えへへ、照れてる照れてる〜』
『イチャイチャしてないで手を動かせ…』
資料室は、新聞部部室の隣に位置する教室だ。大層な名前がついているが、実質ただの倉庫みたいなもので、あまり使われていないためかダンボールはかなりの量の埃を被っていた。
『郷土の歴史、ひまりヶ丘新聞のナンバー、う、浮気調査表!?』
桃色の可愛らしい表紙とは裏腹に、なかなか題名が凄まじい資料が出てきた。こんなことまでやるんだ新聞部。
『み、見なかったことにしません!?って、開いてるぅ!?』
『ひゃ、ひゃぁぁ、、2組の石井君と3組の大野君の禁断の恋!?こ、こっちは安倍くんと野田くんの密会スクープ!?はわ、はわわわわ』
『なんで全部ボーイズラブなんだよ…』
と、まぁ、こんな感じでお宝ザクザクである。新聞部は大分腐っているらしい、色んな意味で。写真付きとか、浮かばれないな安倍くん。
『お、ありましたわ!!七不思議ファイルNo. 1』
『なんか大分黄ばんでるな。うちの古文書と同レベル』
『え、東夜の家古文書あるの?マジで?』
『あー、、まぁ、爺さんの家にな。まぁそれは良いから早く見ようぜ。ビニール手袋持ってきてくれ』
『そんなにバッチい!?僕開くからいいよ!』
ノートを手に取る。薄いのに、どこか重みを感じるその黄ばんだノート。表紙のは女の子の字だろうか?丸まった文字で、ひまりヶ丘七不思議ノートと書かれている。なんというか、雰囲気はバッチリだ。
ごくり
『あ、開けるよ?』
『え、ええ』『ん、頼む』
そう言って僕は、ゆっくりとそのノートを開いた。




