18話 お赤飯とテンプレミステイク
『ねぇ、お姉ちゃん………お姉ちゃん?お姉、オネェ…………オカマ?』
『誰がおカマかね……知り合いにオカマでもいるのかい?お姉ちゃんにいくら男運ないからってアタシの性別に疑いを持たないでおくれ』
『いるんだよなぁオカマの知り合い』
ってこんなことをしている場合じゃない!本日最大の疑問!
『で話逸れたけどさ、お姉ちゃん………なんで今日ウチ赤飯なの?』
そう、本日の青海川家の食卓には何故だか知らないがお赤飯。あのもちもちした食感がたまらない、がしかし、TPOについて深く考えさせられる一品だ。
『初潮のお祝いだよ。まぁ女の子の身体なんだからそうなるわよね〜』
『逆に今まで来なかったのが不思議だったわねぇ、高校入ってからだなんて』
『お母さんお赤飯に入れる塩と砂糖を間違えてる……めっちゃクラシカル』
こちとら突然血が出てきて凄くびっくりさせられたというか、その後の青海川姉妹の対応が早すぎてちょっとキュンとしちゃったこととか、色々ありすぎて脳内理解が得られないんですが、僕の脳内反抗期かな?
『昔からね、初潮の時はお赤飯って決まっているのよ。ほら、伊奈や香澄の時も食べたでしょ?』
『あ、あの突然のお祝いムードはこういう意味だったのね。まさか身を以て体験するとは…』
当時はなんのデリカシーもなく「姉ちゃん!よくわかんないけどおめでとう!」とか言ってた気がする。これはその報いなのか………とっても恥ずかしいんですけど…
『ねぇ、僕よく知らないんだけど、こういうのって最近は子供が恥ずかしがってやらないって聞いたというか………』
『あら?こういう大事なことはちゃんとやっておくべきよ!あら、お赤飯美味し♡』
『子供の意思無視なのね………』
お母さんこそ昔の僕以上にデリカシーを持って欲しい、って何これ甘っっ!!!さっきのテンプレミステイクの結果が僕に回ってきた!?
『来夢もこれで子供を産むってことを自覚しなくちゃ。身体は大事にしなきゃだめよ?』
『あの僕一生独身…』
『産むわよね?』
『独……』
『ね?』
『怖いわ!!!』
ヤンデレママってなんの需要が…………コアなファンに受けそうだな、うん。しかし一ヶ月前まで男だったのに何故か子供を産む未来を見なくてはならない情況になってるというのがもう笑えてくる。
『あら、お母さんもとうとうおばあちゃんになっちゃうのね〜〜なんか感慨深いわ』
『ちょっと、それより先に子供できそうな方が僕の右にはいるでしょ』
『伊奈は………………………まず、いい人を探すところから始めましょうね…』
『かハッ!!!』グサッ!
おっと何かがお姉ちゃんの心を抉りとったぞ…。にしてもお母さん容赦ない。
『それで、学校の方はどうなのよ〜?』
『あー、芳樹も絵梨も違うクラスだけど友達できたよ?友達と学校通おうかな〜とか思ってたりもする』
実はアリアの家が青海川邸に近かったりします。
『あら?芳樹くんや絵梨ちゃんはいいの?』
『芳樹があんまりに女子からモテすぎて自転車が通れない……』
『流石ねえあの子は。学校でやっぱ人気あるんでしょ?』
『そりゃもう入学一週間でファンクラブできそうな勢いで人気だね』
主な構成員は1.3.4.6組の女子とみた。2組でも既に加入すると意気込んでいた子が数名いたな。このままでは真知や苺も参加しかねない。因みに5.7組にはどうやら別のイケメンがいるらしく、ある程度の流出は食い止められているらしい。特に理数科コースの7組は教室が遠い上に天才という名の変人が集うクラス。まぁ無理もないだろう
『ほら来夢も負けてらんないわよ!幼馴染なんだから、その特権を生かしてグイグイ攻めていかなくちゃ!』
『合コン前の肉食女子のノリだ…』
『ほら、男は度胸、女は愛嬌っていうでしょ?あれよあれ』
『んでオカマは最強…と……』
『なんかさっきからおカマネタが多くないかい?』
入学式とかいうイベント差し置いて今週もっとも印象深かった出来事がオカマとの邂逅だからね。ちなみにエミちゃん先生出身は鹿児島だとか。に、似合う……
そうそう、なんだかんだ赤飯は美味しかったです。父さんと目があった時の気まずさと言ったらもはや形容しがたいものがありましたが…。そらそうよね、息子が生理だよ?俺がパパなら気まずすぎてぬいぐるみ買ってくるのそろそろやめると思うんで、これ以上増やさないでもらえます??
……
…………
………………
『ケラケラッ!久しぶりじゃなぁ青海川の末裔』
『な!?く、ククリ!?』
高校の、それも特に進学校の「週末課題」というものはその名の通り「終末課題」と在学生から皮肉られるほど、提出を要求される課題は多い。特にひまりヶ丘のような私立高校では公立高校に負けじと課題や小テストがオンパレードのため、一年生には辛いらしい。そんなこんなで机に向かって勉強を始めたはいいものの、その圧倒的な数の前に絶望。なんて思ってたら予想外のものが週末にやって来ました…
『ククリ、今までどこにいたの?』
『ワシか?色々手続きがあっての。その事後処理じゃな』
『?意味不明なんだけど』
『まぁ気にするでない。それより、ワシそろそろ外に出たいんじゃが』
『いや、出てるじゃん。バリバリ窓の外で浮いてるじゃん。なんか幽霊みたいで怖いんだけど』
『そうではない。おぬしの体を借りて外に出たいのじゃ!夜の街に繰り出すのじゃ!朝チュンじゃ!』
『言葉の意味知らないでいうのやめろぉ!い、嫌だぞ!?僕は誰ともそういう行為をする気はないっ!』
ぜ、絶対に、ないんだからねっ!
『何をかたいことを言っておる?せっかく女子の身体なのじゃぞ?逆に楽しまなければ損であろう?なぁに、楽に考えればよい。さすれば快楽に身をまかせ、自らが満たされていくのがよくわかるものよ。のぅ、青海川の末裔』
『そ、その口振り、さてはククリ非処○だな!あと青海川の末裔っていうのやめて。ちゃんと来夢って呼んでほしい…』
『む、まぁお主は大事な寄生体……依代じゃからな。では来夢、ワシと共に快楽に浸りに行くぞ』
『だ、だからぁ!なんでそういう話になるわけ!?お前のキャラ、処○厨にぶっ叩かれるよ?』
『?なにを言っているかわからんが、大体将来間違いなく行われる行為じゃぞ?なら今でもその後でも変わらんじゃろ。むしろ今のうちに慣れておくのが吉じゃ』
『う、慣れろって言われても……別にそもそもする気が無いわけだし…』
『お主のその容姿でそれはなかろうよ。どのような男もお主と夜を共にしたいと考えるじゃろう。それほどまでに美しいことを自覚するがよい』
『なんでそんな自信満々で言うのか知らないけど、これククリのせいなんだからね!?それとさ、最近あんまり女子の服着ることに違和感がなくなって来てるんだけど、これってどう言う意味?』
『身体が女子なのじゃ、心がそれに順応して行くというのが自然であろう?まぁそういう仕組みにしているのじゃ。ほれ、お主だんだん女子のような感情が芽生えてくるぞ?今はそうでなくとも、いつか男に抱かれたいと考えるようになるかもしれんのぅ、カラカラッ』
『勘弁してくださいって。ああもう、普通に出歩くだけならいいから!』
『誠か?カラカラッ!血が騒ぐわい!服はワシが選ぶ〜』
『ちょ、乗っ取らな……』
ククリがスウッと僕の体に入ってくる。すると、髪が毛先の方からみるみる純粋な白へと変化していく。僕はこの時、少しだけ中に押し込められるような感覚に陥る。何か透明な箱のようなものに入れられ、そこからテレビのように目の前の光景を視認する感覚。ブラウン管の向こうには現実が広がっていた。
『ふむ、せっかくじゃし可愛いの着たいのぅ。これとかどーかの?』
こうやって服を選んでいるククリを温かく見守りつつ………じゃねぇや!僕が着てるわけじゃん!
『あの、ククリ、、ちゃんとコーデできんの?』
『任せておくがよい。その辺はちゃんと勉強したのでな』
………閑話休題………
ああ、勉強したって……こういうことか
僕用に買われた大きな鏡には、白いフリルのついたブラウスと、コルセット付きの黒のハイウエストスカート、そしてニーソを履いた白髪の女の子。うん、これあれだ、、あざとい
いや、可愛いのは認めますとも。因みに僕も童貞だったんで可愛さはよくわかります。でもね、白髪で出歩く気ですか?
『これワシ気に入った!フリフリ可愛いんじゃ!』
『いや、あの、、この髪なんとか隠せないですか?』
『隠さねばだめなのか?』
『ちょっとこのオーラはやばいでしょ。特別な人間はちゃんと自分を特別として第三者目線に立たないと痛い目をみる、っていう僕の持論が盛大なブーメランとして流血沙汰だわ』
多分アボリジニーとかのブーメラン。つ、強そう!
『ふむ、わかった。ではこれでどうじゃ』
2分後、そこには黒のミニスカートと白パーカーでニーソを履いた白髪の女の子が映っていた。不満は色々あるが、取り敢えずこれなら出歩けるくらいにはなるだろう。
『じゃぁククリ、取り敢えず家族にバレるとやばいから一回僕から出てって』
『無論じゃ』
………
……………
……………………
夜の街、といってもまだ7時ではあるのだが、そこは昼間のそれとは全く異なる光景であった。街の明るさに対して星も負けじと輝き、溜息が出るくらいに美しい夜空をまたも見ることが出来た。そのゆるゆるした大きめのパーカーのフードを深く被り、スカートの裾を抑えながら歩く。画面越しみたいなものなので恥ずかしさはあまりないが、やはりククリに任せておくということに相当な不安を覚える。もしククリが所構わず、誰これ構わずに襲いかかるようなことがあれば、全力で阻止するつもりだ。
だが予想とは違い、ククリが街でやることと言えば…
『これ食べたいのぅ!』
『た、たこ焼き最高じゃ!』
『や、焼き芋も出ておるのか!?』
『ふわふわ!ふわふわじゃぁ!なんじゃこの甘くてふわふわしたものは!「鈴カステイラ」というのか!?』
とまぁただの食べ歩きである。なるべく目立たないようにはしてほしいんだけど…
『ふぅ満腹じゃ。では、本命の食事にいくとするかの』
『ちょっ!!食事ってどういう意味!?どういう意味ぃ!?』
『焦らずともよい。ワシはその手の嗜みは上手いのでな』
『ククリ!お前の評価が今日でうざいカミサマからビッチへ降格だ!』
もともとその評価は低かったが…
『………そこまでいうならやめるがの。じゃがその代わり、、ちと付き合え』
『?』
それからだんだん街から外れ、大橋の方へと歩いていくククリ。古くは江戸時代に港町として栄えたこの街は、昭和初期までは小舟が客を乗せて川を渡り、大型船が港に停泊するような通称:水の都とまで呼ばれていた。現在はただちょっと都会な街となってはいるものの、当時の名残として街のいたるところには水路があり、少しだけなら小舟も出ている。古き良き遊覧船として観光客には人気のスポットだ。
また、街のあちこちには柳の木が植えられていて、夜に柳が揺れる姿はなんとも風情がある。また、柳が原因なのか幽霊目撃回数が全国トップレベルなので、オカルトマニアらはよくこの街に訪れるらしい。それとはまた別に江戸時代以前、強力な戦国大名が支配していたこの土地ではそれにちなんだ観光名所が多く、夜でも人が多い。郊外のとある山には戦国最強とまで言われた山城跡があるし、その地域には砦跡が残っていたりする。また神社や祠も然り。
ククリと僕が出会った神社は、これはまた後ほど述べさせていただこう。しかしこの地域の祠は、今通ってきた場所をみただけでもかなり廃れているようだった。
『ふぅ、やはりここは落ち着くのぅ。ワシの神社、ワシの家。1000年前からなにも変わらぬ』
(検非違使とか言ってたからまさかとは思ってたけど、本当に千年生きてるんだね)
『そうじゃな。大分、変わったものじゃ、ケラケラッこの池は昔からあるのじゃけれど』
…………この池もそうだけど、今気づいたことがある。僕は、ククリのことを何も知らない。この神社のこと、途中の祠や社、道祖神、この地域の古き大木、そして青海川家のこと。ククリは僕を青海川の末裔と呼んだ。過去に僕の先祖様とククリとの間で何かあったのだろう。でもそれは、ククリというカミサマのことを知らなければ何もわからないことなのだ。この土地の千年の歴史、いやククリ以前の歴史。それは、一体どんな物語だったのだろうか?
『知りたいかえ?』
(心読まれちゃうよねそりゃ。うん、知りたいかも。というか、ククリの依り代である以上知る必要がある気がする)
『カラカラッ良い良い。その為にここに連れ出したのじゃ。ワシはな、お主だけでなく、この街の人間には正しく歴史を理解して欲しいと思っておる。歴史を、神々を、ワシらの物語を、知って欲しい』
(……)
『ここの眺めは素晴らしいじゃろ?この街はな、そんなところがいくつもあるのじゃよ?いつか思い人と来るが良い、ケラケラッ』
(な!?だ、誰が行くか!!1人でくるわ!)
『素直じゃないのぅ、まぁ良い。お主確か新聞部に入ってたのう』
(うわなんで知ってるの?ストーカー?)
『見くびるでない。ワシが学び舎に行かないとでも思っておったか?その新聞部、存分に活用するが良い。設立者とは知り合いでな、面白い書物もあるのじゃ』
(初耳、というかまだ活動してないからな…)
『ではしっかり活動すると良い。好奇心は発見の源じゃ。無限の知識欲が無尽蔵に好奇心を生み出し、それはこの世のすべての真理へと向く。せっかく入ったのじゃから、活動してもらわねば困るわい』
(ククリのその言い方だと、活動を知っているよう『あ!!そうじゃお主!!ここで巫女として働いてみぬか?ワシは自分の社に居れるし一石二鳥なんじゃが』
(巫女!?いやいやいや、なんでまたそんな面倒なことを…)
『報酬なら出すぞ?ワシの宝物庫には面白いものが眠っておるからのぅ』
(………………………まじ?)
『まじまじじゃ。まぁその気になったらいうが良い。その姿でみっこ巫女☆とかもう萌えしか感じぬぞ』
(お前本当に千年前のカミサマなのかよ!?)
『最近のカミサマはそういうとこちゃんと勉強してるのじゃ!!』
『いらん知識だよっ!!』
『ほれ、暗くなってきたし帰るぞ?帰りに鈴カステイラが食べたいのじゃ!』
(まだ食べるんすか……)
一応僕の身体であることを理解してくださいね?
その後、ククリが身体から出た途端に僕のお腹には凄まじい胃もたれがやってきた。巫女………報酬云々は別として、神社のことを知る機会でもある。ちょっと考えておこうかな。あと巫女服って可愛いし……
え、僕何考えてんだ?




