16話 告白そしてエスケープ
ようやく怒涛の一週間が終わる。そんな金曜日は………朝から災難だらけであった。
「よ、芳樹くん!偶然だねっ!こ、この近くに住んでるのかな?」
「あたし、別にあんたに会いたかったわけじゃなくて、、ただその、偶然なんだからねっ!」
「絵梨ちゃん!今日も芳樹くんと仲良いね〜」
はやい、早いよ1組コミュニティ……なんにせよ僕たちは自転車登校だから、前を塞がれるとそれはもう最高にめんどくさい。
『ねぇ芳樹、僕先行くから!遅刻しないようにね〜』
流石に付き合ってらない。なんか昨日もやらかしたらしいが、もう正直興味ない。中学の時も大体こんな感じだった。いつも芳樹は女の子に囲まれてて、人気者で、カッコよくて……敵わない。いつだって僕は脇役で、腰巾着なんて呼ばれてて、いつも助けてもらってて、それが周りの女の子たちには、よく思われていなかったらしい。
僕は芳樹が好きだ。勿論親友として、という意味だ。でも、それと同時に嫉妬の対象でもあった。好きな子が芳樹に告白してるところを見ちゃった日には死にたい気持ちでいっぱいだった。クラスの女子たちが陰で、
「来夢くんっていつも芳樹の側にいるけど、正直友達として釣り合ってないよね〜」
「それな〜☆」
なんて会話を聞いた日もまた然り。芳樹はいい奴で、親友だけど、そんな単純に同じ関係でいられることができないことを、痛いほど思い知らされた。芳樹は知らないのだ。自分が特別な人間であることに。いつも自分のことを
「俺は普通の中学生だ、普通が1番」
とかいうけど、周りはそう見ない。特別な人間と一緒にいる人間は少なからず注目を浴びてしまう。そして、比較されてしまう。
神は、人間と同じ位置にいてはならない。神性が失われるからだ、なんて考える人と同じだ。偶像は特別な人がいてはいけないのだ。常にその周りは信者で溢れてて、慕われてて、皆に平等に接する。これは極端な例だが、ある意味では的を得た暗喩といえよう。途中から薄々芳樹も気づいていたのだろう。だから進学先を無理やりでも偏差値の高い高校へと定めた。それである程度は振り分けられるからだ。また3人一緒になった時、本当に嬉しかったけど、心の中ではこうなることは初めから分かっていたのだ。そして今の僕は女の子。余計芳樹ハーレムを敵に回してはいけない。当然中学時代からの芳樹ハーレムが高校にもポツポツいるのだし…
『いや、待てよ来夢!!』
『やーだよ♪いつものことじゃんっ♪』
全力で自転車を漕ぐ。芳樹は特別だ。そのことを本人はそろそろ自覚すべきだと思う。欲を言えば禿げろ!死に晒せぇ!!
……
………
「はあぁ、芳樹くん、かっこいいなぁ……」
「ほら、芳樹くん来たよ!話かけてきなよ!」
「ていうか、絵梨ちゃんずるいよね…幼馴染とかさ〜」
「あんたが幼馴染なら芳樹くん可哀想だわ…」
「そう言えば芳樹くんの幼馴染に、絵梨ちゃんと同じくらい可愛い子居たよね??」
「あ、知ってる知ってる!青海川さんだよね?でも、芳樹くんの近くに居なくない?」
「あー2組の子でしょ?苺ちゃんとかと仲良いっていう。めっちゃクールだよね〜」
「僕っ子だよね?みなもちゃんとはまた違った癒されキャラだよね〜」
「えーあの子なんか色々分かってますよ〜感がうざくない?話したことないけど」
「キャハハハッなにそれうけるぅ!あー、でも芳樹様の幼馴染とかいう時点でもうウゼーわ」
「嫉妬乙wwwwwwwそれ絵梨もじゃん!」
「絵梨はいいの〜優しいし、そそのかせばその辺の男子とくっつきそうだからさ!キャハハッ」
朝から嫌〜な話ししてるなひまりヶ丘の乙女達は……
『おはよ東夜!』
下駄箱から内ばきを出そうとした時、後ろから声がかかる。振り向くとそこには銀の天使こと小国翠花……男だけど
『お、おう、おはよ……』
『ん?どしたの?あぁ、そこの女子達の話気にしてるの?』
『………ん、まぁ、な』
『最初だけだよああいうこと言うのは。だんだんみんな言わなくなっていくよ!』
『………だと、、いいけどな』
相川芳樹が高校で人気でい続ける以上、女子達の嫉妬が収まるかどうかはわからない。付き合っていたならば話は別なのだが、そうでなければそれはいい感じに嫉妬の対象となる。
『ゴミみたいなブスの雑魚どもは群れるのが大好きだからね〜』
ん!?え!?なにこのどす黒い声!ちょっと翠花!?
『ん?どうしたの東夜?変な顔だよ?』
うん、気の所為だな。こんな天真爛漫な子があんな毒を吐くわけない…うん。気のせい……かな?
…………………………………………………………………
『え?なんか入ってる………』
下駄箱の中には、一枚の手紙。まぁ、要するに……アレでしょ?
嫌がらせ…
【教室にて】
『いや違うわよ!それラブレター!』
真知、よく考えてみて。今時ラブレターとかあるものなの?
『キャーー!来夢告白!?ラブレターとかまぢ!?放課後、屋上で、、憧れの王子様からの告白っ!そして、甘くとろけるようなkiss!』
『苺、告白する側にプレッシャーをかけるな…』
いや、、しかしこれ明らかに男の字なんだけど…
『でも、来夢は芳樹くん好きだもんね〜』
『違うんだよね〜』
『往生際が悪いよぅ!そんな悪い子には、おっぱいの刑だぁぁ!』
『///////ぅぅぁぁ!馬鹿じゃないの!?ねぇ、馬鹿じゃない…ひゃぁ!!!』
慌てて苺を引き剥がす。時々ちゃんと威厳を見せつけないといいように身体を弄ばれてしまう……ので、キッと苺を睨みつけ、そして
『バカじゃないの?ホントもう、バカ…』
ん、なんかこれ逆効果のような…
『クーデレの「バカじゃないの?」可愛すぎ!!アタシが来夢もらっちゃおうかな〜☆』
ちょ、ちょっと心惹かれる提案ですね…。こんな可愛い子に養ってもらえるとかQunQunします…………え?いいの?
『で、ラブレターには何て?』
『いや苺の予想通り、放課後校舎裏で待ってますって。これ虐められるやつじゃん…』
『ぶぅー。校舎裏とかQunQunしない〜』
『まぁこの学校屋上立ち入り禁止だから…』
おかしいな、アニメとか漫画だと学校の屋上って問答無用で解放してあるのに、このお話現実世界を重視しすぎなのでは?
……
…………
………………
「一目見た時からめっちゃタイプっす!!いろんなことシタイっす!!付き合ってほしいっす!」
『お断りします…』
告白について色々間違ってませんか?なんで性欲を優先するし…
しかしほんとに告白だったとは…喧嘩を覚悟して色々持ってきたのに全然役に立たなかったなこの物騒なグッズ類。トンカチとか、ノコギリとか………普通に必要なかったなぁ
告白してきた2年生の先輩を置いて、プールを避けて校舎に戻ろうと歩き出す。人気がないからここは静かだ。
「ちょっとあんたちゃんと聞いてんの!?まじうっざいんだけど!!」
『キーキーと騒がないでくださいまし。お得意のメイクがボロボロと肌を巻き込んで剥がれますわよ?』
…………ん、なんだこれ?喧嘩?確か旧更衣室の裏側から………あれは、月潟アリア?
たなびく金色。染めたものでなく、純粋に綺麗な金色の髪。どこか貴族的で、しかし日本人らしい顔つきの少女。誇らしげに笑みを浮かべているが、、これは、やばいんじゃ…
なにせ相手はおそらく先輩と思われる女子6人。みんなけばけばメイクの不良っぽい女子。絵に描いたようなテンプレにしては相手の人数多スギィ!!なにやらもめているようなのだが…
『わたくしはただ身の程もわきまえずに身勝手に寄ってきた男を突き放しただけ。それでわたくしから誘ったのだと怒るのは筋違いですわね』
「はぁ!?あんたが誘ったに決まってるでしょ?カズきゅんは私の彼ピッピだもん!顔が良いからって良い気にならないでよ!!」
「言葉は丁寧に使うべきよ、その人の品格が疑われますわ』
す、すごい。先輩相手に一歩も退いてない。
「もういい。やっぱこいつ痛い目見ないとわかんないみたいだわ。あんたちょっと来な?」
『お断りしますわ。わたくしのことが気にくわないのであれば、この場で糾弾すればいい。どうしてこそこそ裏で、それも大人数で攻め立てようとするんですの?自分に自信がないから、かしら?』
「このクソ女!!言わせておけば!おぃ、出番だよ〜』
このリーダー格の女の合図と同時に、これまたDQN風の男2人が校舎の陰からでてくる。えぇここ進学校なのに??ってあれ違う制服…
『!?なにをする気ですの?』
「おおー可愛いじゃん。ほんとにこの子もらっちゃっていいん?ギャハハっ」
「金髪JKの初物頂きってか?俺1番な〜」
さ、最悪だこいつら!!自分たちがいじめたら進学に響くから他校の男子を使って強姦させる気!?それ以上はやばい!!
しかし月潟アリアは、物怖じしなかった。男が月潟アリアに手を伸ばすも、
『触るな下郎!!』
パシッと手を払いのける。それが逆鱗に触れたようで、
「ああ!?自分がどういう立場か分かってんのか!?おぃもうヤろうぜ!!お前ら押さえとけ!」
「うーい。ヘヘッ!」
どんなに良くない状況でも、、彼女はまっすぐ前を向いて、曲げないで、それが僕の目には
どうしようもなくカッコよく映ったから…
『アリア!!!』
『!?』
気づけば飛び出していた。
「あ?なんだお前…」
『唐辛子びーむ!』(唐辛子入り水鉄砲用意しつつ)ビューーーー
「ギャァァァァァ目が、目がぁぁ!!」
運動部の部室にあった水鉄砲を拝借しました。唐辛子は料理部からお借りしました。持つべきものは友達だねっ!
主力の男は目潰ししたからもう1人は、まぁトンカチでも投げとくか…
ガンッ!
「あああああああ!!顔に当てるなぁぁあ!痛ってええぇ!!!」
う、間違って顔面にclean hitさせてしまった。南無三…
「ちょ、ちょっとあんた………ひっ!!」
ひぃっ!とは失敬な。ほら、唐辛子って健康にいいんだよ?多分
「ちょっと待ちなさいよ!」
『逃げるよアリア!!』
『え!?あ、えぇ!』
すかさず月潟アリアの手を引っ張って校舎へと走り出す。それと同時にさっきの方へと走り出す陰、、、葛籠山蝦夷ことエミちゃん先生だった。
わぁ早〜い!!なにあの引き締まった筋肉、マジで惚れる〜〜にしても今日も化粧濃いなぁ
なんて思いながら僕は、その手を引っ張ったまま新聞部の部室まで逃げ切って、鍵をかけたのだった。
運動部の部室には何故かいろんなものが置かれてる不思議。漫画読み放題とか最高かよ




