7話 やり直し勇者は学ばない 博愛エンド
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第7話 【やり直し勇者は学ばない 博愛エンド】
早速、スキルを使いこなすクロードさんの活躍をお楽しみください!
女神セレーネとの感動的な別れが終わり――
(クロードさん?)
俺はその場で振り返ると、談話室前のセーブポイントへ戻る前に、一度深呼吸し――
(もしもしクロードさぁ〜ん、聞こえてますかぁ〜?)
そして、覚悟を決めたのだった。
「……よし! いくか!」
「……よし! いくか! じゃないですよぉ!! 無視しないでくださいぃ!!」
「うるさいっ!! あんな小っ恥ずかしい台詞を言い合った直後の相手と普通に話せるかっ!!」
「そんないけずぅ〜」
「なぁにがいけずだ! 馬鹿女神! 俺は忙しいんだよ!」
俺は泣いて縋りついてくるセレーネを、強引に引き剥がして、話を戻した。
「とりあえずはロードだ! あの談話室前に戻るぞ!」
「……でもクロードさん、もうちょっと作戦とか考えたほうがいいのでは?」
「問題ない! 作戦ならすでに考えてある!」
俺はセレーネの質問に自信満々に答えると、心のなかでスキルを使用するための言葉を念じた。
(スロット1をロード)
【スキルの使用を確認しました。スロット1のセーブポイントをロードします】
俺は頭のなかに響く謎の声に戸惑いつつ、確かにスキルが発動したことを確認した。
そして、目の前が真っ白になり……
――スロット1 ロード後 談話室前――
「着いたぞ! ここが目的の部屋だ」
聞き慣れた声と台詞が聞こえ、俺は目を開ける。
そこは、いかにも王族専用の部屋だと思わせる重厚な扉があり、その両横には全身を甲冑で包み、ハルバードを手にした近衛騎士が直立不動の構えで佇んでいた。
(やったぞ! 本当に戻ってきた!)
俺はスキルが無事に発動した安堵と、先ほどの地獄絵図から解放された喜びで顔がにやけていた。
「どうしたクロードよ? 顔がにやけておるぞ? もしや、もう緊張しておるのか?」
陛下が俺の異変に気付き、問いかけをしてきた。
「いえ……問題ありません! いきましょう!」
俺は陛下の問いに勢いよく応えると扉の前に立った。
俺の右後方の上辺り……宙に浮いているセレーネの方に目線を向け、俺は心のなかで彼女に宣言した。
(見ていろ駄目女神! 俺がこの状況を華麗に攻略する様をな!)
俺の意図に気付いたのか、それとも毎度の女神の謎の力で心の声を聞いたのか……俺に向かって彼女は、言葉を送った。
「なにをする気か知りませんが、お手並み拝見させていただきますよぉ〜」
その声に俺は軽く頷き、扉に向き直す。
近衛騎士が俺に向かって一礼し、扉の引き手に手をかけると、重厚な扉がゆっくりと開いた……
そしてその先には、戦場のなかで見慣れたはずの……(以下略)
俺は彼女たちのドレス姿をしっかり確認した。
するとクレスが、俺の到着に気付き声をかける。
「遅い! クロードのことみんな待ってたんだよ!」
「あぁ、すまない……」
俺は軽く返事をしつつ、次にくるだろうイリーナの言葉を待った。
「クロードさま、お待ちしておりました……どうぞこちらにおかけください」
「……ありがとう、そうさせてもらうよ」
彼女の着席を促す言葉がくることは、最初の展開で覚えていた。
彼女の提案に賛成すると、イリーナは席をずれ、俺の座る場所を作る。
俺はゆっくりとソファに腰を降ろし、わざと状況に戸惑っている様子を装って彼女たちのドレス姿を再度確認した。
すると、ルーシェが口を開いた。
「いつまで惚けてるの? その、……テーブルのクッキー……美味しいわよ……」
「……えっ? そうだな、もらうよ」
(よし! ここまでの流れは、前回とほとんど一緒のはずだ! だがここからが俺の本領発揮だ!)
そう……最初のときも前回のときも俺が失敗した理由は、明確だ。
それは、余裕をなくし、とっさに思ってしまったことを口に出してしまったが、今回の俺は違った。
状況を理解し、彼女たちのドレスコーデをしっかり目に焼き付け、次の一手を打てる完璧な状態だ。
そして、俺はその一手を打つための言葉を紡いだ。
「お前ら……どうしたんだこんなところで?」
前回は状況が理解できずに言ってしまった質問を、今回はわざと彼女たちにした。
すると、やはりクレスが、俺の問いに反応する。
「どうしたって……やっぱり変かな?」
(きた!)
俺は罠にかかった獲物を捕らえるが如き勢いで、クレスの問いに答えた。
「いや……すごく似合ってるよ!」
「えっ……?」
「クレスはいつも動きやすい格好ばかりだったから気付かなかったけど、その太陽みたいな温かみがあるオレンジのドレスも、綺麗に結われた髪に付けられたその髪飾りも……クレスのいつも元気な姿も素敵だけど、今日は一段と愛らしいよ!」
「へぇ……!? あ、あ……愛らしぃ!?」
よほど予想外の言葉だったらしく、クレスはあたふたした反応を見せてくれた。
「おいおい、俺が褒めると思わなかったみたいな反応だなぁ、ちゃんと本心で言ってるぞ?」
「ち、違うの!! 褒めてくれたら嬉しいなぁ……て思ってたけど、それ以上の返しでビックリしちゃって……」
そう言ってクレスが照れながら俺に応えると、イリーナが割って入ってきた。
「クレスさん……この日のために、みんなで一生懸命準備したんですから……褒めてもらえないなんてことありませんよ! よかったですね! クレスさん」
(やはりイリーナがきたか! なら!)
「なにを言ってるんだ? イリーナこそ、いつもの聖女服もとても似合っているけど、今の純白のドレスも最高に魅力的じゃないか!」
「み、魅力的だなんてそんな……」
イリーナも俺の言葉に虚を突かれたのか、恥じらいの表情を見せて顔を背けてしまった。
しかし俺は彼女に追い打ちをかける。
「そういえば今日は、髪を下ろさないで結んでるんだな? とても似合っているけど、いつもと長さが変わらない気がするんだが……?」
「こ、これは、髪を一部だけ使って結っているので、その……」
動揺を隠せていないイリーナは、戸惑いつつ俺に説明をしてくれた。
だが俺は最後の言葉を待たず、彼女に畳みかける。
「そうなのか? すまないな、こういうことは、どうも疎くて……しかし綺麗だな! いつもの下ろした髪型も好きだが、今の髪型も俺は好きだな!」
「すっ……!?」
俺の『好き』という言葉にイリーナは、顔を背けたままでもわかるくらいに、肩を大きく跳ねさせて動揺を見せていた。
するとルーシェが俺に強めの口調で指示してきた。
「もっと言ってやりなさい! 私たちがここまでしたんだから、アンタは感謝して頭を下げて喜ぶべきね!」
(よし! 次はルーシェだな!)
俺は次の標的をルーシェに切り替える。
彼女は目の前のソファに脚を組んだ状態で座り、右手で自身の髪をいじりながらそわそわとしていた。
「そうだよな、2人もそうだけどルーシェも前からスタイルがいいと思ってはいたけど、今日のドレスでそれがひときわ目立って感じるよ」
「そ、そうよね! まぁ体型の維持は魔術師の基本だから大したことないのだけどね!」
「そうなのか? さすがルーシェだな!」
俺の褒め言葉に調子をよくしたルーシェが胸を張り、わざと胸の下で腕を組んで、自身の体がよく見えるようにしてきた。
彼女は3人のなかでは年長者であること、そして前回の俺への叱責のことを考慮して、次の言葉を考えた……
「それにしても気のせいかな? こんなことを言うと引かれてしまうかもしれないけど……ルーシェからいい香りがする気がして……体が勝手に吸い寄せられそうなのを、実は必死にこらえてるんだよ」
俺は気恥ずかしそうに……ていうか恥ずかしいのを堪えて、彼女が魅惑的であることを伝えた。
するとルーシェの動きが完全に止まり、胸を持ち上げるように組んでいた腕が、だんだんと下に降りてきた。
そして、誇らしげにしていた顔は横を向き、表情を震わせ、上ずった声で応えた。
「そ、そ、そうなの? ま、まぁアンタも男だから仕方ないわよねぇ、私は全然気にしてないけどぉ」
彼女は余裕ぶった態度を取ろうとしているが、横を向いた顔の火照りを隠せずにいた。
俺は確かな手応えを感じ、イリーナの侍女がいつの間にか用意してくれた紅茶を飲んで口の渇きを潤した。
すると俺の背後からセレーネの声が聞こえた。
「クロードさぁん、こんなにみんなを褒め倒してぇ、どうするつもりですかぁ?」
俺はセレーネの問いかけに、伝わるかわからなかったが、心のなかで答えた。
(まぁ見ていろ……俺がこの場を華麗に切り抜けてやる)
「はぁ……華麗にねぇ」
(やっぱり聞こえてるのかよ! この盗聴女神!)
「あっ! ひどい! 全部聞こえてる訳じゃないですぅ〜、私に向かって話してる声だけですぅ〜、お祈りと一緒ですぅ〜」
(お前に向かってって、だいぶ範囲が広過ぎないか?)
「そうですよぉ、だから『セレーネたん萌えぇ』とか諸々聞こえますので、ご注意くださいね!」
またよくわからないことを彼女が言っていたが、俺はそれを無視した。
そして、俺と3人とのやり取りを見ていた陛下が、一番奥のソファに腰掛け口を開いた。
「クロードよ……実に見事な手腕だ! まさか貴公にこのような一面があるとは思わなかったぞ!」
「いいえ、陛下……私はただ思ったことをそのまま口にしてしまっただけですよ」
「はっはっは! そうか、そうか! これは、この後の展開が楽しみだな!」
陛下の機嫌もよくなり、俺は今回の作戦が成功に向かっていることを確信した。
(セレーネ……今までの失敗の原因は、俺がまともに会話しないで失言を繰り返したからだ)
「まぁ、そうですねぇ」
(だから今回は、しっかりみんなを褒めて、好意を示す!)
「……でどうするんですか?」
(そんなの決まってるだろ!? 急には決められないから、また今度話しましょう……って言って終わりだよ)
「……はいっ?」
(だから、また今度ゆっくり話しましょうってするんだよ!)
「いやぁ、クロードさん? それはちょっとぉ〜」
セレーネが何か言おうとしていた――
が、そのとき陛下が俺にさらなる質問を投げかけてきた。
「してクロードよ……誰が一番なのだ?」
その瞬間……部屋のなかを包んでいた、なごやかな雰囲気が消え去った。
(その質問は想定外だった……)
俺は前回までの経験で、陛下は全員を花嫁にすることに肯定的な感じがあった。
だから、陛下から『誰が一番』という言葉がでると思っていなかった……
すると、セレーネが俺の動揺に気付き、煽り始めた。
「クロードさぁん、どうしたんですかぁ? 焦りが見えますよぉ?」
(うるさいっ! 陛下から予想外の言葉がでてビックリしただけだ! お前は黙って見ていろ!)
「ふえぇ〜い!」
彼女のふざけた返事を聞き流すと、俺は陛下の質問に答えた。
「陛下……その答えは、もう決まっております」
「ほう、して貴公は誰が一番と申すのかな? すでに気付いているだろうが、今回の見合いの相手は彼女たちだ! 貴公の答えは、そのまま花嫁を選ぶことになるぞ?」
陛下は念を押すように、俺に返答を促した。
クレス・イリーナ・ルーシェの3人も俺の返答に息を呑んで待っていた。
そして陛下の、3度目の口上が始まった。
「長き時をともに過ごした幼馴染か!? それとも信仰深き聖女か!? それとも才溢れる魔術師か!? それとも!?」
陛下は高らかに選択肢を挙げ、彼女たちに目線を向けた後、満面の笑みで俺に目線を戻した。
「全員……と申すなら、それでも余はかまわぬぞ……」
俺は陛下の口上が終わり、静けさが戻るときを待ち、答えを述べた。
「誰が一番だとか……順位付けるなんてこと、俺にはできません……、だって彼女たちは俺の『大切な仲間』なんですから」
そう……彼女たちは死地を共にし、共に乗り越えてきた『大切な仲間』だ! そんな彼女たちから誰かなんて選べる訳がない! それを伝えれば、きっとみんなわかってくれるはずだ!
(どうだ、セレーネ! これが俺の完璧な作戦、名付けて『みんな大切作戦』だ!)
俺は後ろを振り向くことなく、セレーネへ自信満々に語りかけた。
しかし、俺の期待とは裏腹に彼女の反応は予想外のものだった。
「……ぶっ、くすっ……」
それは笑いを堪えるような反応で……俺はてっきり『さすがクロードさぁん!』って、いつもの間抜けな声で賞賛の声が聞けると思っていたのに、なぜ笑いを堪えている?
俺はもう一度セレーネに語りかけようとしたとき、クレスが小さく呟いた。
「みんな大切な仲間……」
「あっ、あぁそうだクレス! みんな大切な仲間だ!」
俺がクレスの言葉に応え、同じことを伝えると、イリーナが続いた。
「だから誰も選べない……」
「そっ、そうだよイリーナ、だから誰が一番なんて選べないよ……」
イリーナの言葉に重ねるように伝えると、ルーシェが俺に問いかけてきた。
「つまり……選ばないってこと?」
「……んっ? いやいや、ルーシェ違うよ! 選ばないんじゃなくて選べないんだよ! だってみんな大切なんだから」
俺はルーシェの質問の意味を飲みこめずに、間抜けな返事をしてしまった後、慌ててルーシェの言葉を否定した。
だが次の瞬間、3人が同時に口を開いた。
「「「なら、なんで全員って言わないの! (ですか!)」」」
「……えっ?」
3人同時の反論に、俺はまた間抜けな声を出していた。
「クロード、私たちのこと大切って言うなら全員選べばいいのに……なのに選べないって……それって別に好きでもないってことでしょ!?」
「いやっ、そうじゃなくて……」
「クロードさまのためならと……この身を捧げてきたつもりでしたが……クロードさまにとって、わたくしたちは『その他大勢』のなかの1人で、私たちの献身など石ころが転がった程度の些細なことだったのですね……」
「待て待て、それは考えを飛躍し過ぎだ!」
「色々あったけど、アンタにとって私たちは……ただ利害が一致していたから一緒に旅をしていただけだったのね……なのに私のこと変な目で見て……馬鹿みたい!」
「いやっ! あれはだな」
俺は戸惑いつつも、彼女たちの反応に手を焼いていると、陛下が重い口を開いた。
「クロードよ……貴公がそのような軽薄な男だとは思いもしなかったぞ……みな、すまなかった! こやつに代わり、謝罪させてほしい……」
「陛下!?」
俺は陛下に頭を下げさせてしまったことで、自分がまた失敗したことを理解し、大量の汗が吹き出してきた。
ふと、背後から視線を感じそちらに振り向くと、そこにはイリーナの背後で待機していた侍女がいた。
(あれっ? 俺この子に何か言われた気がする……)
そう心のなかで思ったとき、彼女と目が合った。
そして誰も気づかないほどの小さな声で――しかし俺の耳にはハッキリと届く呪詛のような響きで、彼女は短く鋭く呟いた……
「……下衆」
その言葉を聞いた瞬間、俺は静かにソファにもたれかかり、目を閉じた……
(スロット1をロード)
【スキルの使用を確認しました。スロット1のセーブポイントをロードします】
俺はセレーネの堪えきれなくなった笑い声を聞きながら、3度目のロードを行った……
――やり直し勇者は学ばない 博愛エンド 完――
最後までお読みいただきありがとうございます!
まさかのハーレムエンドでもヒロインたち的にOKだったことがわかる回でした。
まあ、クロードさんは気付いてないでしょう……
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▼次回予告
8話『やり直し勇者は学ばない 寄生虫エンド』
明日 20時 更新予定!




