0話 プロローグ
はじめまして『希月タカトラ』と申します。
本作を見つけていただき、誠にありがとうございます。
本作は、魔王討伐を果たした勇者がなんやかんやあって、元パーティメンバーのヒロインたちの愛(愛の形って色々あるよね?)に立ち向かう物語です。
※本作には、以下の要素が含まれます。
・ヒロインたちが重い感情を見せる描写
・R15に該当する描写(残酷描写・性的発言もしくは示唆する発言や描写・倫理観の欠如)
・メタ発言(特定のキャラで多発します)
たぶん、いい男なんだけど、まともな幸せを得られない。
そんな主人公を、どうか応援してあげてください。
――3ヶ月前 魔王の城 最奥の間――
重く息苦しさを感じる通路のその奥に……奴はいた。
『魔王ベルガドーラ』
赤黒い岩のような皮膚、赤褐色の逆立った髪、側頭部から伸びる王冠のような巨大な黒い角、黒い目に赤い瞳、牙が生えた凶悪な人外の顔立ち、巨大な両腕を覆うガントレット、右肩に着けられた巨大なショルダーガード、腰から下に着けられた重厚な黒鎧、そして露出した肌に付いた無数の傷跡。
25年前、世界の端の島に暗黒の城と共に突如として現れ、その最奥に女神セレーネを封印し、そこから人間と魔族の長い戦争が始まった、その原因である魔族の王。
人類の勝利のために、女神セレーネ解放のために倒すべき存在が、玉座に座りこちらを睨んでいた。
勇者クロードは剣を構え、魔王を睨み返す。
そして魔王が玉座から立ち上がり低く短く言葉を発する。
「来い!!」
その声を皮切りに、クロードは剣先を魔王に向け突進する。
それに合わせるように仲間も動き出す。
純白の修道服に身を包み、長い金髪を揺らし、聖女イリーナが身体強化の魔法をクロードに付与する。
突進に勢いが増し、魔王に斬りかかる。
だが、片手で軽々と受け流され反撃の拳がクロードの顔面に振り下ろされ、クロードは紙一重でそれを躱す。
しかし、その拳圧は凄まじく、避けたはずが吹き飛ばされる。
その隙を見逃さず魔王が勇者に飛びかかろうとした瞬間、スリットの入ったローブを翻し、ブルーのロングヘアをなびかせた、魔術師ルーシェが放つ、無数の炎弾が魔王を襲う。
その場で動きを止めた魔王に低い姿勢で、動きやすい軽鎧を身に纏った、オレンジ色のショートヘアの戦士クレスが素早く近づき、両手の小剣で魔王とすれ違いざまに斬りかかる。
魔王の後ろに出たクレスは、振り向きざまに風の魔術で作った風の刃を飛ばし追撃を行う。
二人の攻撃に翻弄され魔王がよろけている隙に、イリーナの神聖術が展開される、味方の身体強化と共に敵の身体能力を低下させる高等術だ。
クロードは、長い深呼吸を一度だけ行い、剣に光魔法を付与し、再度魔王に向かって走り出す。
その動きに仲間の3人は、目を合わせることもなく、自らの役割を理解し動き出す。
クレスが再度魔王の周りを持ち前の素早さと風魔法の応用で縦横無尽に動き回り斬り付け撹乱する。
そして、ルーシェが特大の雷球を作り出し、クレスが魔王から離れた一瞬を狙って放ち、魔王の動きを雷の衝撃で完全に鈍らせる。
クロードは、その隙に天高く飛び上がり、剣を振り下ろす為の姿勢に入る。
だが、魔王はクロードの動きをしっかりと見ていた、魔王は飛びかかろうとするクロードに対し、魔力を込めた拳を振り上げる。
先ほどの攻撃とは訳が違う、凄まじい拳圧は当たったら確実に死ぬことを宣告する恐怖の塊だった。
しかし勇者は、姿勢を変えることなく、魔王に剣を振り下ろす。
なぜなら、イリーナが神聖術でクロードに1度きりの完全防御術を付与すると信じていたからだ。
魔王の拳がイリーナの防御術で弾かれる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
クロードの雄叫びと共に、光の剣が魔王の体を斬り裂き、魔王が膝をつく。
「入った!!」
クロードは確信めいたものを感じたが、構えを崩さず魔王を見つめる。
息を整える魔王は、自らに負った傷を確認し、勇者に語りかける。
「見事だ……」
短い賞賛の言葉、そして不敵な笑みを浮かべる。
「我は戻ってくる……待っていろ……」
不穏な言葉を残し、誰もが息を呑んで立ち尽くしているなか、魔王は霧散して消えたのだった。
「終わったのか……?」
しばらくの沈黙を破り、呆気ない最後に戸惑いつつも、魔王の気配が完全に消えたことで、緊張の糸が切れたクロードは尻餅をつく形で座り込んでしまった。
(終わった……人間と魔族の25年にわたる長い戦いが、人間の勝利で終わったんだ!)
心の中で戦いの終わりを実感していると、背後から急にクレスが、座っているクロードに抱きついて来た。
「クロードー、やったよ! 私たち勝ったんだね!」
(感極まってるとは言え、幼馴染でもあるクレスは、いつも距離感が近くてちょっと困る)
クロードは、思いっきり抱きつくクレスに、そんなことを思いながら首を絞めそうになる腕をなんとか解こうとする。
「ほら、また怪我してる。私がいないとすぐこれなんだから」
クレスは嬉しそうにクロードの頬の擦り傷を指でなぞる。
(クレスは俺が完璧じゃない方が嬉しそうなんだよな……)
「まったく! 本当にアンタは無茶な戦い方をして、もっと頭を使った戦い方は出来ないの?」
そんな呆れた物言いをしながらルーシェが近づいて来た。
(彼女はとても戦略的だから、俺の直感的な戦闘スタイルが気に入らないらしい)
「だって、ルーシェが絶対フォローしてくれるって信じてたんだよ!」
本心を話すと、ルーシェは少し考えた後、真剣な顔でクロードを見つめる。
「……なら、約束して! 次も、その次も、私を信じるって。ちゃんと言葉にして!」
(ルーシェは俺との約束を異様なまでに重視する。一度交わした約束は、絶対に守らせようとするんだ)
「わかったよ、約束する」
そう答えると、ルーシェは満足そうに「……バカ」と小さく呟いて顔を赤らめた。
「みなさん、ご無事ですか?」
そう言ってイリーナが待機させていた従者の手を借りながら、クロードたちの方に歩いて来た。
「イリーナ、大丈夫だ! 最後の魔法助かったよ!」
そう言ってイリーナへ感謝の言葉をかける。
「いいえ……クロード様のお役に立てることが……わたくしの全てですから」
イリーナは謙遜した返しをしながら、クロードの前で膝をつき、頬に手を当てながら回復術を行う。その眼差しは、神像を見つめる信徒のように深く熱い。
(イリーナの瞳には、時々何か狂おしいものを感じる……俺はそこまでの存在じゃないのに)
回復術が終わりイリーナは、クロードに伝える。
「クロード様……あちらの方から強い力を感じます。」
強い力、それは封印された女神から漏れ出た魔力のことだろう。
クロードは立ち上がり、イリーナの示す方向に向き直す。
確かに、魔王の城とは思えぬ光の波動を微かに感じる。
「行こう!」
静かにそう言い、歩き出すとクレスが急に座り込んでしまう。
「あれ? ゴメン、さっきの戦いで足痛めちゃったみたい」
「クレスさん、大丈夫ですか? 足を、見せて下さい」
クレスの足首が赤く腫れていたのを確認した、イリーナが回復術を行う。
「気が抜けたのね。周りに敵の気配はしないから、安心して傷を治しなさい」
ルーシェは、二人にそう言うとクロードに目を向けた。
クロードは、ルーシェに二人を任せ、一人で女神の封印された場所まで向かうことにした。
クロードは微かに感じる光の波動を頼りに、城の奥にある部屋を見つけ出す。
「ここか?」
その扉は、重厚な作りで出来ていた。
クロードは、扉に手をかけ、あることに気付く。
「……封印が解けている?」
魔王が消滅したからなのかわからない。
封印をどうやって解除するか、破壊は可能なのか、悩みながらここまで来たのだが……その扉には封印がされておらず、後はこの重い扉を開けるだけだった。
「……罠か?」
クロードは警戒しつつ、扉に渾身の力を込めて、扉を開け放った。
その瞬間、部屋の中から漏れていた暖かな光に包まれ目を細めた。
「女神セレーネ! 助けに参りました!」
光で見えないながらも、そこに女神がいることを確信したクロードは、徐々に慣れてきた目を開けながら女神へ声をかける。
そして……光に慣れてきた目を開けた瞬間、そこにいたのは椅子に座り、テーブルに肘を付けながら、パンとパンの間にタレ付きの肉の塊が入った何かを頬張る、女神セレーネだった。
「くぅ! やっぱり人間界の食べ物って最高!! コレがチェーン展開されてるって神過ぎない!? って私が神だったわぁっ……あれ?」
そこにいたのは封印された女神……ではなく、ご馳走を食べながら一人で騒いでいる、頭の悪そうな女だった。
「はぁ?」
――プロローグ 完――
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
まったく綺麗に終わらない、お話でしたね!
クロードが助けた(?) 女神セレーネとの、今後の掛け合いを、どうぞ楽しみにお待ちいただければ幸いです。
▼次回予告
第1話『平穏は女神によって砕かれた』
この後すぐにお読みいただけます。




