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【書籍化&コミカライズ】冒険者アル -あいつの魔法はおかしい  作者: れもん
第29話 王都奪還

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29-9 パトリシア即位

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。



 テンペスト王国暦257年(シルヴェスター王国暦174年)1月1日


 新年を迎えたこの日、テンペスト王国の王都ではパトリシア新女王の即位式が行われた。プレンティス侯爵の降伏によって実現したこの国王交代は、一昨年彼の行った王位簒奪に比べて多くの血が流れるような事もなかったことに加え、新女王が王都に帰還した際の、魔法使いの呪文の一言による王都の全ての門の開放、そして彼女自身は空を飛ぶ馬車に乗ってゴーレムを従えていたなど、魔法使いテンペストの伝説を改めて思いださせるようなその演出は、テンペスト王国の民にとっては新たなる繁栄を予感させるものであり、王都はまるでお祭りの雰囲気となっていた。


「前国王の弟リチャードの娘である私、パトリシア・テンペストはテンペスト一族の血統を継ぎ、ここにテンペスト王国の女王に即位する事を宣言します」

ゴーレム(マスターオブ)(ゴーレム)であるアルフレッド・チャニングは、テンペスト王国建国より伝わりしこの王城の魔道装置がパトリシア王女をテンペスト一族の長として認めた事をここに証言する。彼女こそテンペストの女王である」


 パトリシアの即位宣言に続き、アルはグリィに助けてもらいながらなんとか声を張り上げてその役割を果たした。

 この儀式の説明をタバサ男爵夫人から受けた際に、アルは皆の注目を浴びるこんな場で僕が本当に言うのかと信じられず、パトリシアにその質問をした。だが、そのパトリシアからは、女王として即位するに際して、王城の地下の魔道装置にパトリシアが認められゴーレムに命令できる事を誰かが証人として告げる必要があり、今、家族が誰も居ないパトリシアにとって、それを宣言できるのはアルだけなのだと説明され、ゴーレム(マスターオブ)(ゴーレム)としてアルにそれを証言の言葉を告げてほしいとお願いされたのである。

 彼女の言う通り、王城の魔道装置に登録されているのはパトリシアとアルだけであり、パトリシアから王城の魔道装置に準王族として登録したいのはアル様だけですと言われれば、アルとしてもその役割を拒否する事はできなかったのだった。


「パトリシア女王陛下万歳。即位おめでとうございます」


 即位式に参列した者たちからは2人の言葉に一斉に祝いの声が上がり拍手が起こった。家臣筆頭は新生第1騎士団の騎士団長のペルトン子爵であった。彼はこの後の任命式で新たに女王に即位したパトリシアより伯爵に昇爵され、新生第1騎士団の騎士団長をドイル子爵に譲って宰相を拝命する予定となっていた。


「ありがとうございます。プレンティス侯爵による王位簒奪の企みを打ち破り、この日が迎えられたのも皆の努力によるものです。感謝します。テンペスト王国の発展と人々の生活の向上にこれからも尽力してください」


 そう言ってパトリシアは微笑む。アルの立つ位置はパトリシアのすぐ横であった。今日ばかりは呪文の練習なども出来ず、アルは立派に仕立てられた服を着て神妙な顔で式典が終わるのを待ち続けたのだった。


----


 パトリシアの即位式典とそれに続いて論功行賞が行われた後、与えられた部屋で休憩していたアルを訪れた者が居た。和平同盟が結ばれているシルヴェスター王国より祝賀の使者として訪れたナレシュと従者のクレイグである。旧セネット伯爵領は今回の和平同盟によってテンペスト王国とシルヴェスター王国に東西に分割されることになったのだが、その分割された東側の領主を拝命したのがナレシュであった。彼はセオドア王子から東セネット子爵に任命され、両国の架け橋としてテンペスト王国との国境に位置する領主として外交窓口でもあるらしい。


「アル様、お疲れ様です」


 入室してナレシュはそう言って軽く頭を下げた。それにアルは慌てて首を振る。


「ナレシュ様、アル様なんて言わないでよ。むず痒い……」


 そう言ってアルはナレシュたちが入って来た扉の入口の方をちらりと見た。3人を案内してきた衛兵はもう退出していった後である。他の貴族や騎士、魔導士なら従者や女官、召使などが居るのが当然だが、アルはそういった者たちをすべて断っているためこの場に居るのは3人だけだ。


「いや、でも、ゴーレム(マスターオブ)(ゴーレム)でしょう? あまり聞かない役職だから伯爵に昇爵されたパウエル閣下に祝いを述べた後に、どのような地位かとお尋ねしたら、諸侯の筆頭と同等ということになっていると教えて頂いたよ。ということは伯爵かそれ以上の扱いって事だよね」

「うーん、それは……たぶん、その通りなのだけどね。でも、ナレシュ様に様付けでよばれるとなると……。なんとかいい方法はないかな? とりあえずこの3人で話すときには敬称はナシでも良いと思わない?」


 ナレシュの答えにアルは困った顔をしてそう尋ねた。ナレシュの言うのは確かに間違いではないし、ゴーレム(マスターオブ)(ゴーレム)という役職のテンペスト王国での立場から考えると、ある程度の畏敬の念をもって接してもらわないといけないのだろうとはアルも理解している。

 その上、ナレシュも子爵という立場であるし、余人が居る場所ではお互い敬称をつけて呼び合わないといけないのだろう。だが、気心のしれた同士しかいない今のような状況なら堅苦しい事はなしにできないだろうか。


 アルの問いにナレシュはクレイグの顔をちらりと見た。クレイグは少し悩んだがゆっくりと頷いた。それを見てナレシュはアルに再び向き直った。


「わかったよ。私も様付けで呼ばれるのは好きじゃない。ここはお互い名前だけで呼ぶというのでどうだろう? 私は君の事をアルと呼ぶので、君は私の事をナレシュと呼んで欲しい」


 ナレシュの提案にアルは我が意を得たりとばかりに軽く微笑んで頷く。


「わかったよ。それがいいね。じゃあ、ナレシュって呼ばせてもらう事にするね。クレイグさんは僕より年上だから、クレイグ“さん”でいい?」


 アルがナレシュに仕える従者としての仕事をした時には、クレイグにも様をつけて呼んだものだが、ナレシュを敬称なしで呼ぶとなると様付けは良くないだろう。アルからすると“さん”付けぐらいがしっくりくる。


「周りに誰も居ない時ならそれで結構です。ですが、私がお呼びする際には、ナレシュ様と同様に、アル様にも“様”をつけてお呼びさせていただきたく存じます」


 そうなるか……。アルとしてはまだ堅苦しい気もするが、ナレシュとそう呼びあっているのなら、それに合わせることにしよう。


「じゃぁ、改めて、アル、お疲れ様」


 ナレシュがそう言ってほほ笑む。


「ありがと、ナレシュ。ほんと、僕はゴーレムの事をもっと知りたいだけなのにさ。大変な立場になっちゃったかもしれない」


 アルの返事にナレシュは苦笑を浮かべた。


「アルの言う大変な立場になりたい人はたくさんいるのだよ。もっとありがたく思ったほうが良い。それにこれで、アルがパトリシア陛下の王配になったとしても、誰も力不足とは言えなくなったのじゃないか? そちらの意味でも感謝すべきだよ」


 ナレシュの説明にアルはうーんと言いながら頭を掻き、顔を赤くした。


「そうか、そう思ってもいいよね……。自意識過剰というか……僕が都合よく考えているとかじゃない? 大丈夫?」


 アルの言葉にナレシュは意外そうな声を上げる。


「ちょっと待って。アル、アルはパトリシアとは恋人関係なんでしょ? ずっとそう思っていたんだけど……」

「あ、え? 恋人というか、もちろん僕はパトリシアの事は大好きだよ。でも、王族として努力しているパトリシアを見ていると、政治や戦争の事なんてまったくできない僕は王配にはなれないと思っていたんだ。なのでどうしたらいいのかずっと迷っていて」


 ナレシュは頭を抱えた。


「大丈夫さ。安心してくれていい。ゴーレムを扱えるだけで、君は十分にその資格があるよ。私が思うには、今夜にでもアルは個人的にパトリシア様の部屋を訪れるべきだろう。ああ、もちろん本人には事前に告げたほうがいいよ? 何も言わずにこっそり忍び込むんじゃなくて、花束ぐらい用意して行くと良いんじゃないかな?」


 ナレシュの言葉にアルはごくりと唾を飲み込む。その様子を見てクレイグも微笑んで、大丈夫ですよ、もっと自信をお持ちくださいと囁いた。


「わー、それはそれでちょっと勇気が……。でも、わかったよ。花束についてはタバサ男爵夫人と相談してみる」


 アルの返事に、ナレシュとクレイグは揃って頷いた。


「そうだ、これは返しておくよ。もうこれがなくてもクレイグも大丈夫そうだ。貴重なものを長い間ありがとう」


 ナレシュはポケットから腕輪を取り出した。貸したままになっていたテスのアシスタント・デバイスである。それは良かったとアルは腕輪を受け取る。


「その魔道具と同じようなものがたくさんあれば、魔法使いがもっと増えると思うのだけど、そこは残念です」


 クレイグがしみじみと言う。たしかにそれはそうかもしれない。アシスタント・デバイスか……。それを作り出すにはどうしたら良いのだろう。グリィと他のアシスタント・デバイスの差についても、人形ゴーレムをつくるという話をしていた際に話題にしたこともあった。古代遺跡巡りについては、まずマラキたちを作った魔法使いの住んでいたところを訪ねるところから始めてもいいかもしれない。


 そう言った事を話していると、慌ただしく何者かがアルたちの部屋に近づいて来る足音がした。続いてノック音がした。


「誰? どうしたの?」

「警備担当です。チャニング閣下、ドイル子爵閣下がプレンティス侯爵領で発生した事件について至急お話したいと仰っておられます」


 この棟を警備している衛兵隊に所属する騎士だった。彼はすこし慌てた様子でそう答えた。プレンティス侯爵領で起こった事件? 一体何が起こったのだろうか? 



ここで、29話は一旦区切りとします。

パトリシアの即位によって、話としては大きな区切りを迎えました。ですが、アシスタント・デバイスを含めてまだいくつかお話できなかった謎などもあり、そのあたりの話を軸に冒険者アルの話はまだ継続したいと考えています。

とは言え、この後の展開については少し練り直したい構想がありまして、その整理のために1ヶ月ほど時間をいただきたいです。

そのため、続く30話のエピソードの投稿は2月6日を予定したいと考えております。ご了解の程よろしくお願いいたします。


尚、1時間後の11時には登場人物を整理して投稿します。


読んで頂いてありがとうございます。


2026.1.8 アルの事を衛兵がアル閣下と呼んでいたところを修正しました。

  訂正前)警備担当です。アル閣下、ドイル子爵がプレンティス……

  訂正後)警備担当です。チャニング閣下、ドイル子爵閣下がプレンティス……

誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。


いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。


冒険者アル あいつの魔法はおかしい 書籍版 第4巻 まで発売中です。

山﨑と子先生のコミカライズは コミックス3巻まで発売中

        Webで第19話(new!)が公開中です。

https://to-corona-ex.com/comics/163399092207730


諸々よろしくお願いいたします。

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一気に拝読致しました。めちゃくちゃ面白いです。 サラマンダーのサーリのパパ、アイネスさんの話も今後出てきますかね? 楽しみにしております イングリッドは戦争に負けたテンペストの魔導士に攫われて教育され…
アル様ラブ、アンチパトリシアなので、テンペストに抗議活動しに行ってきます
普通は苗字呼びだからチャニング閣下だと思うよ
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