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おいしいはしあわせ  作者: 南 さくら
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喫茶店の幻カレー

 高校生以下は入店禁止。昔よく通っていたライブハウスの店長から聞いたカレーがおいしいという喫茶店。大人になったら絶対に行くんだと心に決めていた。大人になって、そのことをふと思い出してなんとかお店を探し当てて行ってみた。ジァンジァンという年季の入った喫茶店。初めて入るときは緊張した。高校生以下は入店禁止とか言うぐらいだから、相当気難しい店主なんだろう。ところが至って普通のレトロな雰囲気の喫茶店だった。ご夫婦で営んでいる様子で、寡黙そうな店主が調理をしている。上品な奥様がお水を持って注文を聞きにきてくれた。私はここのカレーを食べにきたのだ。もちろん、カレーライスを注文する。しばらくして運ばれてきたのは、魔法のランプのようなきれいな銀色の容器に入った少し黒っぽいドロっとしたカレーのルーと、黄色く色づいたサフランライス。そして、小さなサラダ。これが噂のカレーか…なんだかイメージしていたものとは違っていた。もっと欧風のナチュラルなカレーかと思っていた。気を取り直して食べ始めようとしたそのとき、奥様から忠告が。「途中でお水を飲んだら辛さが増すから、最後に飲んでくださいね」なんと!ご親切なアドバイス。そんなことを言われたのは初めてだ。なんだかワクワクしてきた。ルーだけスプーンですくって口に運んでみる。ん?甘い?と思いきや、あとから時間差で辛さが追いかけてきた。辛いけどフルーティ、複雑に溶け込んだ食材の味がしっかりまとまっていて、サフランライスと絶妙にマッチする。長時間かけてじっくり煮込んであることがすぐ伝わってくる繊細さ。フルーツ何種類入ってるんだ?トマトとバナナも入ってる?本格的なスパイスの味も見え隠れする。これは癖になる。一気にかきこんで完食。深い味わいなのに後味はとてもスッキリしている。ここでようやくお水を一口。うん、これはおいしい!噂になるだけある。

 それからもときどき無性に食べたくなって何度か足を運んだ。残念ながら数年前に店主が亡くなられ、今はもう二度と食べることができない。だからこそ、忘れられない幻のカレー。あれはカレーではなく、「ジァンジァンのカレー」という唯一無二のメニューだった。

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