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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
73/94

七十三、お宅訪問



「はい、これ」


私は翌日、教室で美琴にメモを渡した。


「あ!もしかして紫苑さんの番号?」

「うん、そうよ」

「わあ~~!早速、訊いてくれたんや~~!ありがとうな」

「小春・・仕事が早いでありんすな」

「それで・・かけるの?」

「もちろんやがなっ!かけいでかい」

「なに・・会う約束とかするわけ?」

「紫苑さんがOKしてくれたら会うに決まってるやん、な?紬」

「そうでありんすな。私はもっと、花魁の話をしたいでありんす」

「私はやっぱりお笑いやで」


二人はとても楽しそうに話していた。


「小春はどうするん?」

「私は・・会員じゃないし・・」

「会員じゃなくても、特別に許可するっ!」

「許可って・・私は別に・・」

「小春も一緒に行こうや」

「そうでありんすよ」

「何を話したらいいか、わかんないし」

「合気道の話したらええやん」


あ・・合気道か・・

紫苑さんはやってないけど、お母さんがやってるのよね。

紫苑さんのことだから、きっと詳しいに違いないわ。

そうね・・会うのもいいかも。


「そうだね。んで、三人の方が楽しいし」

「そやでっ!やっぱり私らは三人でないとな」



そして放課後・・

早速、美琴が電話をかけた。


「もしもし?あ、どうも~~こんにちは。私、美琴ですねん。そうそう。昨日は、文化祭、ありがとうございましたぁ~!そうそう、そうですねん。いや、用事っちゅうか、紫苑さんと話がしたいな~って思いまして、それで電話させてもろたんですわ。それで、会いたいな~って思ってるんですけど、ええですか?っんな~策略とか違いますって。紬も小春も会いたがってますねん」


げ・・私はそんなに・・


「それで、どうです?はいはい、あっ、そうですかぁ~!ほな、今度の日曜日でええですか?えっと、そやなぁ~、ああ、はいはい、そうしましょか。わっかりましたぁ~。ほな日曜日に!」

「紫苑さん・・なんて?」

「最寄りの駅に来てくれって」

「そうでありんすか~。会ってくれるでありんすか・・」

「紫苑さん、私らのことちょっと疑ってたわ。おもろい人やな」

「純粋なんでありんしょな・・」


こうして私たちは、日曜日に紫苑さんと会うことになった。

いいのかしら~・・

美琴たち・・変なこと言って、機嫌を損なわなければいいんだけど・・



そして日曜日が訪れた。

私は朝から出かける支度をし、家を出た。


「よう、小春」

「あっ、たけさん」


アパートの前を、たけさんが歩いていた。


「今から行くのか?」

「そうなんですよ~」

「俺も今からバイトなんだよ」

「そうですよね、お疲れさまです」

「楽しんでこいよ。紫苑によろしくな」

「はい~、では行ってきます~」


私は自転車を走らせ、駅に向かった。

その後、美琴たちと電車で会い、私たちは都内へ向かった。


紫苑さんの指定した最寄りの駅に着くと、紫苑さんが改札の外で待ってくれていた。


「やあ、きみたち」

「紫苑さん~、もう待っててくれたんや~」

「おはようございます、紫苑さん」

「今日は、よろしくお願いしますでありんす」

「早速なんだが、話とはなんだ」

「まあまあ~、そないに急がんでも~」

「いや、僕は勉強があるので、手短に願いたいのだが」

「紫苑さんの家って、ここから近いん?」

「そうだが」

「外で話すとゆっくりでけへんし、家にお邪魔させてもろてもええですか?」

「僕の家に?」

「そうですがな~」

「僕の家に来ても、なにもないぞ」

「そんなんは、ええんですわ。なんもいりません」

「そうか。じゃ行くとしようか」


ええ~~・・いいんだ・・

絶対に断られると思ったけど・・いいんだ・・

そして私たちは紫苑さんの案内で、紫苑さんが暮らすマンションに着いた。

うわあ~~・・なんか、高そうなマンションだな・・


「ここだ」


そこは三階の312号室だった。


「入ってくれたまえ」

「お邪魔します~」


私たちは中へ入らせてもらった。

あっ・・なんか買ってくればよかったな・・しまった・・


部屋は1LDKだったが、とても広く、リビングは二十畳くらいはあった。

リビングには大きな書棚が置いてあり、たくさんの本が並べられていた。

私たちは、ソファに座らせてもらった。


「紫苑さん・・テレビはないんですか」


私はそう訊いた。


「テレビなど必要ない」

「え・・テレビ、観ないんですか?」

「テレビなどもはや、時代遅れだ。パソコンがあれば事足りる」

「そうなんですね・・」

「お茶くらいは入れる、待っていてくれ」


そう言って紫苑さんはキッチンへ行った。


「なんか手伝うことがあれば、言うてくださいよ~~」


美琴がそう叫んだ。


「なにもない。それより話とはなんだ」


紫苑さんは、コップに入れたお茶を、トレーに乗せて運んできた。


「話しとはなんだ」

「実はやな、私と紬、紫苑さんのファンクラブを作りましてん」

「なっ・・なにぃぃぃ!ファンクラブだとっ!」

「そうですねん。もうな~私と紬、紫苑さんの真面目な姿勢と、物知りなところが好きになりまして、それでファンクラブ作ったんですわ」

「僕を高く評価してくれるのはありがたいが、クラブなどと。一体何を企んでいるのだ」

「あはは、企みなんてありませんって。私たちは、紫苑さんともっと話がしたいだけなんですわ」

「だからなんの話なんだ」

「私はお笑い。美琴は花魁」

「なるほど、そういうことか」

「私な~、性格もこんなんやし、関西のお笑いっちゅうたって、わかってくれる人はいてないんですわ。でも紫苑さんは、少なくとも理解しようとしてくれましたやろ。だからそれが嬉しいんですわ」

「そうか」

「私も同じでありんす・・。今の若い人は花魁に興味を持つ者はいないでありんす。でも紫苑さんは知ってるでありんした。それがとても嬉しかったでありんす・・」


紬・・今の若い人って・・あなたも十分・・若い人なんですけど・・


「僕は花魁に、さして興味はない。ただ雑学として知っていただけだ」

「それでもいいでありんす・・。知ってるということが大切なんでありんす・・」

「僕とそういう話がしたい気持ちは理解したが、クラブは解散してくれ」

「えええ~~~!そんなあ~~あきませんか?」

「僕には関係ない」

「紫苑さんって、恋愛とか、興味ないん?」

「ないね」

「あらら・・クイズと同様・・即答でありんしたな・・」

「でもさ~、将来結婚とかあるやん?」

「それは先のことだ。今の僕には勉強だけだ」

「はぁ~~・・今しかでけん恋愛ってあると思うんやけどな~」


ルルル・・


そこで紫苑さんの携帯が鳴った。


「ちょっと失礼」


そう言って紫苑さんは電話に出た。


「ああ、きみか。いや、今は客人がいる。女性三人だ。ああ、そうだが。なにを言ってるんだ、勘違いしないでくれ。え・・今からか?それは別に構わないが。あはは、そうじゃないさ」


え・・紫苑さんの笑った顔、初めて見た・・

なんていうか・・結構・・素敵な笑顔なんだけど・・

美琴と紬も、紫苑さんの顔を凝視していた。


「そうか。それでは待っている。ああ、じゃ、後で」


そこで紫苑さんは電話を切った。


「突然なのだが、大学の知り合いがここに来ると言っている」

「え・・友達ですか・・?」


美琴がそう訊いた。


「友達ではない。知り合いだ」

「私ら、いてもええんですか?」

「別に構わないが」

「それって・・女子でありんすか・・」

「そうだが」

「えええええ~~~!マジか~~!」

「驚くことはないだろう。地球には女性と男性、この二種類しか存在しないのだから、五割の確率だぞ」

「そりゃま・・そうやろけど」


知り合いが、一人住まいの男性の家に来るって・・それって知り合いじゃないでしょ・・

しかも・・来るっていうことは、少なくとも何度かここを訪れているってことよね・・

でも紫苑さんは・・恋愛に興味がないって言ってるし・・


「紫苑さんさ~、ギャグの中で何がお気に入りなん?」


美琴が話を変えるようにそう言った。


「お気に入りという境地までは、まだ行っていないが、共感できるものはあったな」

「えええ~~、それってなんです?」

花紀はなききょうという、かつての人気団員が、押し入ってきたヤクザに対し「ここには、いてへんぞ」と、ロッカーで匿っている者の居場所を自ら知らしてしまうと言う杜撰な下り。あれはいけない。花紀京という人は、その後「なんでわかったんや」と言うんだ。僕は思わずそこで笑ってしまった。当然じゃないか、わかるに決まっているだろう!と口に出していたよ」

「あはは、そうなんや~」

「なぜ共感できたかと言うと、人間というものは、何か後ろめたいことがあると逆に大袈裟に隠そうとする。例えばだな、放火犯などに見られることだが、犯人はなぜか現場へ戻って確認したがるんだ。現場検証の写真にも写り込んでいることが、ままある。それと花紀の行動は共通点があるのだ」

「あはは~、さすが紫苑さん。すごい分析やな~」

「それを客席の者は、笑って観ているんだ。あれは笑わせようとして、わざとああ言ったのだな」

「そやで~」


それからしばらく、お笑いの話が続いた。

紬は、どこで口を挟もうかと、タイミングを計っているようだった。

花魁の話をしたいんだね・・


「そういえばっ!紫苑さん、花魁が「ありんす」とか言うのって、なぜだか知ってます?」


私は紬の気持ちを察して、そう言った。


「あれは方言を隠すためだ」

「おお・・そうでありんす・・」

くるわことばと言って、出身を隠すために使われたのだ。ちなみに「ありんす」だけではなく「なんし」という言葉もあるぞ」

「そうでありんす・・。おいでなんし、とか言うでありんすよ」

「きみは、花魁が好きなのだな」

「そうでありんす。絶世の美女が花魁でありんすからな・・」

「それを傾城けいせいと言うのだぞ」

「傾城・・?それはなんでありんすか・・」

「城が傾くほど美しいという意味だ」

「おお・・そうでありんしたか・・」

「国、つまり城を滅ぼすほど、君主が大夫に入れあげてしまうことの意だ」


ひゃ~~~・・紫苑さん、ほんとにすごいわ・・


ピンポーン


そこでインターホンが鳴った。

あ・・来たんだわ・・

どんな人なのかな・・


紫苑さんは玄関へ行き、その人を中へ招いていた。


「どうも・・こんにちは・・」


え・・

なに・・

めちゃくちゃかわいいんですけど・・

その女性は、私よりも小柄で細く、顔は有村架純に似ていた。


「きみたち、紹介する。この人は大学の知り合いで、下田しもだ夏海なつみくんだ」

「初めまして・・下田です・・」


下田という女子は、とても大人しい感じで、おしとやかだった。


「初めまして。薄柿小春です・・」

「柴土美琴です・・」

「路考紬でありんす・・よろしくでありんす・・」


私たち三人は、なぜか圧倒されていた。


「下田くん、きみも座りたまえ」

「う・・うん」


そう言って下田さんは、私たちの向かい側に座った。

そしてそれは、紫苑さんの隣だった。

げ~~~・・なんか・・カップルそのものなんですけど・・


「下田くんとは、学部も同じでサークルも同じなんだ」

「サークルって・・?」


私はそう訊いた。


「ミステリー同好会だよ」

「そうなんですか・・」


いかにも紫苑さんらしいサークルだわ・・


「あの・・慶太くん・・」


げぇ~~~!慶太くんって・・下の名前で呼ぶ仲なんだ・・


「なんだ」

「私・・ケーキ買ってきたんだけど・・」

「またか。気を使うなと何度言ったらわかるんだ」

「でも・・お客さんいるって言ってたし・・」

「そうか。それじゃ、遠慮なくいただくとしよう」

「私・・お皿の準備するね」

「ああ。頼む」


このやり取り・・

美琴と紬は・・どんな顔して見ているんだろう・・

紫苑さんは、さほどでもないんだけど・・

下田さんは・・絶対に紫苑さんのこと好きだよね・・


「なんだ」


私たちは黙ったまま、妙な雰囲気になっていたので、紫苑さんがそう言った。


「あのさ・・紫苑さん。下田って子・・彼女ちゃうん・・?」


美琴が小声でそう言った。


「バカなっ!勘違いも甚だしいぞ」

「でもさぁ・・じぶんらそんな感じに見えるで・・」

「はっきり言うが、僕は恋愛に興味はない。下田くんは、ただの知り合いだ」

「いや・・下田さんは、紫苑さんのこと好きやで・・」

「僕には関係ない」


あらら・・紫苑さん・・

冷たいのね・・

でも、少なくとも・・現時点では、紫苑さんってモテモテ男子よね・・

美琴と紬・・どうするんだろう・・

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