七十一、クイズ大会
「さて、お集りの皆さん!ただ今よりクイズ大会を始めます!本大会は、従来のようなありきたりのクイズ形式ではなくっ!私たちが独自に考え出したものです。参加者の皆さんには、それぞれ得意分野などあるかと思いますが、そこはっ!限りなく平等にしたつもりです。なので老若男女問わずお楽しみいただけるかと思いますっ!ほな~~早速、始めさせてもらいまっさ~」
美琴が、なんとも言えない「しっかりした」挨拶を述べた。
関西弁を交えたことで、客席からは笑い声が挙がっていた。
「えー、それではトップバッターの方、こちらへどうぞ!」
紬がトップの人を舞台の真ん中まで連れて行った。
「お名前をどうぞ!」
「はい・・君塚と申します・・」
君塚というその中年女性は、大勢の人の前に立ち緊張したのか、声が小さかった。
「君塚さん、もう少し大きな声で!」
「はっ・・はいっ」
「クイズは得意なんですか?」
「いえ・・そういうわけではありませんけど・・なんだか楽しそうなので参加しました・・」
「わっかりましたぁ~~、では、ここに座ってくださいね」
美琴は椅子に座るよう促した。
そして私は、その女性にマイクを渡した。
「頑張ってくださいね」
「は・・はい・・」
「大丈夫ですよ。楽しんでくださいね」
「は・・はい・・」
「では第一問!スポーツの問題ですっ!1988年、ソウルオリンピックの水泳競技で、背泳ぎに出場して金メダルをとった鈴木大地選手が行った泳法を何というでしょう!」
「ええっと・・知ってるのよ・・あれよ・・あれ・・」
「なんちゃらキックで有名になりましたね!」
「そうそう・・えっと・・あっ!バサロ!バサロです」
「正解~~~!」
観客席から拍手が起こった。
「では第二問!その鈴木大地さんですが、現在の職業はなんでしょう!」
「ええ~~・・職業・・」
「ヒントは・・政府内で働いておられますよ!」
「政府・・え・・なんでしょう・・」
観客席から「頑張れ~~」と声援が送られた。
「えっと・・オリンピック関係かな・・」
「そうそう!その役職も兼務しておられます!」
「えっと・・オリンピック大臣!」
「惜しい~~、正解はスポーツ庁長官です!」
「あら~~そうだったのね・・」
「君塚さん、残念でした~~。主婦向けの問題もこの後、あったんですよ~」
「あらぁ~~・・残念だわ~」
「では、あちらで参加賞を受け取ってください。ありがとうございました~!」
そして紬は君塚さんを舞台の袖に連れて行き、参加賞のフェイスタオルを渡していた。
「それでは、どんどん行きましょう~~!次の方、どうぞ!」
紬が二番目の参加者を、舞台の真ん中まで連れて行った。
「おお~~、今度は打って変わって小学生の男の子ですね!お名前をどうぞ!」
「麻川大毅です」
「大毅くんか~。何年生?」
「三年生です」
あ・・あの子はさっき、斎藤くんに絵を描いてもらってた子だわ。
そっか~・・三年生なのね。
「では大毅くん、頑張ってね!」
「はいっ」
大毅くんは椅子に座り、私はマイクを渡した。
「では第一問!おおっ、大毅くんは漫画は好きかな?」
「うん!大好き!」
「よっしゃーー!漫画の問題やでぇぇ~~!漫画やアニメでおなじみの『進撃の巨人』の主人公の名前は!フルネームで答えてください!」
「エレン・イェーガー!」
「わあ~~即答やな~~!さっすがーー!正解!」
大毅くんは、嬉しそうに笑っていた。
「では第二問っ!そのエレン・イェーガーには幼馴染が二人います。その人たちの名前は!これもフルネームで答えてください!」
「ミカサ・アッカーマンと、アルミンアルレルト!」
「うっわあ~~!大毅くん、すごいな~~!正解!」
即答する大毅くんに、客席から大きな拍手が起こっていた。
「では第三問!ちょっとこれは難しいでぇ~。パソコン用語でもある、カスタマイズとはどんな意味!」
「僕・・知ってるよ」
「おおっ!」
「自分の使いやすいように設定を変更することだよね」
「わおっ!すごいな~~正解!大毅くん、頭ええんやな~~」
「パソコン教室、通ってるんだ」
「ひゃ~~さすがやな~~。では第四問!これも難しいでぇ~。雷が起こる原因とはっ!」
「雷・・んーと・・わかんないや・・」
「ヒントは・・何かと何かがぶつかり合って、起こる現象やで~~」
「空気!」
「あ~~残念っ!正解は、氷と氷の粒同士がぶつかり合って、静電気が発生することです!それが雷です!」
「そうなんだ~」
「でも大毅くん、頭ええな~。ありがとうな~」
そして紬は大毅くんを舞台の袖に連れて行き、参加賞を渡していた。
こうして参加者は、次から次へとクイズに挑戦していたが、五問までたどり着ける人がおらず、ここまでは普通のクイズ大会になっていた。
そうなのよ・・もっと先へ進んでくれないと、斬新な「あれ」の出番がないのよね。
「それでは次の方、どうぞ!」
すると斎藤くんが舞台に出てきた。
「おお~~斎藤やんかいさ~~」
「どうも」
「参加者の中で、我が校の生徒は斎藤だけやで。頑張ってや~~!」
「うん、頑張るよ」
「では、第一問!おおっ!斎藤、運がええな。漫画の問題やで~。漫画『愛と誠』の原作者は誰!フルネームでお答えください!」
「梶原一騎」
「正解~~!では第二問。その『愛と誠』の作画は誰!これもフルネームで!」
「ながやす巧」
「正解~~!」
斎藤くん、さすがだわ。
『愛と誠』なんて、すごく古いのに・・よく知ってるわ。
「では~!第三問っ!これはサービス問題ですよっ!三角形の面積の公式は!」
「えっと・・小学生の問題だよね・・えっと・・」
「げ~~斎藤、このくらい即答せなっ!」
「あっ!底辺×高さ÷2だ!」
「正解~~~!って・・当然、正解せなな」
「あ~~・・ちょっとビビった・・」
「では~~!第四問っ!この漢字はなんと読むでしょう!」
そう言って美琴は、画用紙に「欠伸」と書かれた漢字を見せた。
「けっし・・いや・・違うな。えっと・・見たことあるんだよ・・」
「ヒントは、生理現象ですっ!」
「え・・あっ!あくびだっ!」
「正解~~~!斎藤~~、やるやん」
「よ・・よかった・・」
「では~~!第五問っ!また漫画の問題ですっ!漫画『ドカベン』に登場する、殿馬くんの特技とはっ!」
「ピアノ」
「正解~~~!では~~第六問!」
斎藤くんは五問まで正解し、ようやく六問目に辿り着いた。
「さあ~~体操部!出番やで~~!」
美琴がそう言い、体操部員が一名、舞台に出てきた。
「今から、この男子にある技をやってもらいます。斎藤にはその技の名前を答えてもらいます。さっ、やって」
美琴がそう言うと、体操部の男子は床に手をつき、開脚旋回を行った。
「さあ~~!この技の名前は!」
「ええ~~・・技の名前かぁ~・・なんだろ・・」
「ヒントは人名ですっ!」
「ああ~~・・確かに技には人名がつけられるよね。ええっと・・斎藤!」
「なんでやねんっ!正解は、トーマスですっ!」
美琴が「なんでやねんっ」と突っ込んだことで、客席は爆笑になっていた。
「へぇ~トーマスって言うんだ。勉強になったよ」
「ちなみにこの斎藤くんは、絵がとても上手いんですわ~。教室で絵を描いてますんで、よかったら後で寄ってくださいね~」
美琴はそう言って、観客に呼びかけていた。
優しいな・・美琴。
「それでは次の方!あっ、最後の方ですね。どうぞ!」
そこで紫苑さんが舞台に出てきた。
頑張って~~紫苑さん。
「お名前をどうぞ!」
「紫苑慶太です」
「紫苑さん、クイズは得意ですか?」
「まあ、得意といえばそうだが」
「おお~~かなりの自信ですね!では紫苑さんには飛び切りの難問をお出ししましょう!」
「望むところだ」
客席から「紫苑~~頑張れよ~~」と、たけさんが叫んでいた。
私は紫苑さんにマイクを渡し、「頑張ってくださいね」と言った。
「では第一問っ!地球の直径は何キロですか!」
「12,742km」
「ぬぅおっ!いともあっさりと。正解ですっ!」
「軽いジャブだ」
「では第二問っ!その地球ですが、円周は何キロ!」
「40,075km」
「これも正解~~!さすがですね~紫苑さん」
「造作ない」
「では第三問っ!パソコン用語です。コンベンショナル・メモリとはどんな意味!」
「640Kbyte以下のメモリ領域のこと」
「ぐわっ・・即答ですか~~!正解!では第四問!西部太平洋に存在するパラオ共和国では、現在においても日本語が使われていますが「ツカレナオス」とは、どういう時に使うでしょうか!」
「ビールを飲む時」
「おおお~~正解~~!」
ひゃあ~~・・紫苑さん、さすがだわ・・
「では第五問っ!小春、それ持ってきて」
私は美琴にそう言われ、テーブルにスタンバイしていたカレーライスを紫苑さんの前まで運んだ。
「さて紫苑さん、まずはそのカレーを食べてください」
「食べるのか」
「そうですっ!」
「食べてどうすると言うのだ」
「ええから、食べてください~~」
紫苑さんは、少し戸惑いながらカレーを口にした。
「ここで問題ですっ!そのカレーには隠し味が入ってます。その隠し味とはっ!」
「なにっ・・隠し味だと?」
「そうですっ!」
「うーん・・」
「もう一口食べてもええですよ」
「そうか。では」
紫苑さんは再びカレーを食べた。
「あっ・・これは・・わかったぞ」
「おおっ!では答えをどうぞ!」
「ココアだ」
「わお~~!正解~~!」
ひゃあ~~紫苑さんって、味覚も鋭いのね~~!
「これは誰が作ったんだ」
「私でんがな~~」
「そうか。なかなか料理上手なんだな」
「そうでっしゃろ~~!家族の間でも評判ですねん」
「さあ、次へ進んでくれ」
「よっしゃーー!では第六問っ!小春~~ダンベル持ってきて」
私は舞台の隅に置いてあったダンベルを両手で抱え、紫苑さんのところまで持って行った。
結構重いわ~~・・
「では紫苑さん・・そのダンベルを持ってください」
「え・・」
紫苑さんは身体も腕も細く、すこし戸惑っていた。
「持ってどうするんだ」
「まあ~~・・紫苑さんは腕が細いから、五回でええわ」
「五回とは」
「持ち上げてください~~。そうでないと、回答する権利を失いますっ!」
「なっ・・なんだと!」
「ちゃんと頭の上まで上げてくださいよ~~」
「よしわかった。やってみせようじゃないか」
そして紫苑さんは立ち上がって、ダンベルを右手で持った。
五回は・・きついんじゃない・・?
観客席から「い~ち、に~い」と声がかかった。
そして五回目を上げる時、少し時間がかかったが、なんとか達成した。
「ふぅ・・」
「では問題ですっ!そのダンベルの重さは何キロでしょう!」
「重さか・・そうだな・・、これだと・・」
紫苑さんは頭の中で、なにやら考えている風だった。
「十キロもないはずだ。八キロってところだな」
「八キロでいいんですね!」
「そうだ」
「正解~~!」
そこで客席から「おおお~~いいぞ~~」という声が挙がり、拍手が起こった。
「それでは第七問っ!これは超難問ですよっ!」
「望むところだ」
「寒くなると息が白くなりますが、南極のような場所ではそうなりません。それはなぜでしょうか!」
「チリや埃が少ないから」
「ぎゃあ~~、そんなことまで知ってるんかいなっ!正解~~!」
「常識だぞ」
「そうでっか~~!ではっ第八問っ!これは更に超難問ですよっ!かつて吉本新喜劇の団員で岡八郎という人がいましたが、この人のあだ名はなんだったでしょう!」
「奥目の八ちゃん」
う・・そ・・
紫苑さん・・即答した。
あっ・・そういえば・・ファミレスで「今後の僕を見ているがいい」とか言ってたよね。
え・・まさか・・マジで調べたってわけ?
っていうか・・岡八郎って誰っ?
「マジか・・せ・・正解~~~!」
美琴は驚いてもいたが、とても嬉しそうにしていた。
「では第九問っ!その岡八郎さんですが、彼が通信教育で会得したものとはなんだったでしょうか!」
「空手」
うわあ~~・・また即答だわっ。
通信教育で空手を習ってたの・・?
まさか・・そんなことあり得ないわ・・
これって正解なの・・?
「正解~~~!すごいですわ~~紫苑さん」
「だから造作ないと言ったはずだ」
え・・正解なんだ・・
通信教育で空手って・・習えるんだ・・
合気道は・・そんなことやってないよ。
「では、いよいよラストの問題ですっ!紫苑さんの全問正解なるか!小春~~こっち来て」
「え・・」
「ええから~~はよ」
なに・・?私、出番ないはずだけど・・
私は美琴の傍まで行き、美琴は私の耳元で囁いた。
「小春・・急きょ・・合気道の技を紫苑さんにかけて」
「え・・」
「簡単なやつでええから」
「かけてどうするの・・?」
「技の名前が問題や」
「なるほど・・でも、紫苑さん大丈夫かな・・」
「体操部にマットを持ってこさせるから」
「そっか・・わかった」
「おおーい!体操部員!急いでマット持ってきて~~」
そこで体操部の男子が体育館へ行き、急いでマットを持って戻り、舞台の上に敷いた。
「さて、今からこの小さい女子が合気道の技をかけます。紫苑さん、その技の名前を答えてください!」
「そうか。わかった」
紫苑さんはそう言って椅子に座ったままだった。
「紫苑さん、なにやってんの。あんたが相手や」
「ほぅ・・この僕が相手だと言うのか」
「さて、小春、始めてや~~」
「わ・・わかった・・。行きますよ・・紫苑さん」
「きみ・・合気道の心得があるのか」
「はい・・習ってるんです」
「ほぅ・・」
そして私は紫苑さんの腕を掴み、肘を押さえて倒した。
紫苑さん・・受け身、ちゃんとできてる・・
「さて、答えをどうぞ!」
「一教だ」
「小春・・正解なん?」
「う・・うん・・正解よ」
「おおおお~~!紫苑さん、全問正解、おめでとうございます~~!」
紫苑さんって・・合気道やってるのかしら・・
観客からは拍手喝采が起こった。
「紫苑さん・・大丈夫ですか・・」
「ああ、平気だ」
「あの・・紫苑さんって合気道の経験者なんですか」
「いや、僕はやってない」
「え・・でも受け身、できてましたよ」
「母がやっててね。僕はよく見学に着いて行ったのさ」
「そうなんですね」
「その時、受け身だけ教えてもらったってわけさ」
「そうだったんですね~」
「それにしてもきみ、合気道とは意外だな」
「はい~一人暮らししているので、危ないから習ってるんですよ」
「そうか」
そして美琴から紫苑さんに景品が贈られた。
「なんだ・・この包みは」
「さて~、なんでっしゃろ~。開けてみてください~」
そして紫苑さんは包みを開けた。
景品は、吉本新喜劇のDVDだった。
「あっ・・これは、僕はもう持っているぞ」
げ~~~・・紫苑さん、持ってるんだ~~
「ええええ~~~!マジかいなっ!」
「無論だ。研究材料として購入し、既に鑑賞もした」
「ひゃ~~!そら「奥目の八ちゃん」って即答するはずやわ。まいった!」
「同じものを持っていても意味がない。これは誰か他の人にプレゼントしてくれ」
「そうでっか~~!ほな、このDVD欲しい人~~!」
美琴がそう言って、観客に呼びかけた。
何気に・・私・・欲しいんですけど・・
でもここは・・遠慮しよう。
「はーい!僕、欲しいです~~!」
さっきの大毅くんが手を挙げた。
「おお~~大毅くん、ほな、これはきみにあげるけど、なんでこれが欲しいん?」
「だって、このお兄ちゃん、すごく賢いもん。僕もそれを観たらもっと賢くなれると思うんだ!」
ぎゃあ~~・・大毅くん・・それはちょっと違うんですけどぉ~~・・
でも、お笑いだし、いいよね。
勉強の息抜きにもなるし!
「よっしゃーー!」
美琴はそう言って、大毅くんにDVDを渡した。
こうしてクイズ大会は無事に終わった。




