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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
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38/94

三十八、美人でしっかり者の設楽さん

           


そして翌日・・

私は朝から支度をし、時間はもう九時半になっていた。

十分で行けるから・・まだいいよね・・


私は一人暮らしを始め、まだ食事らしい食事を作ったことがなかった。

今朝も、先日スーパーで買った、おにぎりを食べた。

自分のために食事を作るって・・面倒なものなのね・・


時雨さんにだったら、何でも作ってあげたいと思うけど・・でも、作れないし・・

これでも私は、掃除や洗濯は好きだった。

そこはいいんだけどな・・


そういえば時雨さんって、掃除や洗濯もしてるのよね。

頭もいいし、家事もできて、奥さんなんて必要ないよね・・

ヤダ・・私、奥さんって・・なにを言ってるのかしら。


さてと・・そろそろ出かけなきゃね・・

ああ~~・・気が重いな・・


やがて私はコンビニに着き、仕事の準備をした。


「薄柿さん、昨日はお疲れさま。今日もよろしくね」


店長が優しくそう言ってくれた。


「はい、よろしくお願いします」

「えっと、今日は、別のバイトの人が来るから、後で紹介するね」

「あ・・はい」


そっか。

決まった人と仕事をするわけではないのね。

何人もいるんだよね。


「おはようございます」


そこに学生らしき若い女性が入ってきた。


設楽(したら)さん、おはよう。えっと、この子、昨日から来てくれてる薄柿さん。よろしく頼みますね」

「そうですか。設楽です。よろしく」

「初めまして・・薄柿と申します、よろしくお願いします」

「店長、在庫、確認しますね」


設楽というその人は、とても頭がよさそうだけど、冷たい印象を受けた。

でも、スタイルもよく、とても美人だった。

私はなんだか、圧倒された。


「薄柿さん、お客さんだよ」


店長にそう言われ、目の前にお客さんがいることに気がついた。


「あ・・はい。いらっしゃいませ」

「あれ~設楽さんは?」


その男性客は、設楽さんを知ってるのか、そう言った。


「えっと・・奥にいらっしゃいますが・・」

「レジ・・設楽さんがいいんだけどな」

「え・・」

「呼んでよ」

「は・・はい」


そして私は設楽さんを呼びに行った。


「設楽さん・・なんかお客さんが呼んでますけど」

「え?そうなんだ」


そして設楽さんはレジへ行った。

すると設楽さんはとても迷惑そうな顔をした。


「いらっしゃいませ」

「設楽さ~ん。今日も綺麗だね」


設楽さんは無視して、レジ打ちをした。

なんだろ・・ストーカー?


「ねぇ・・設楽さ~ん。今日は何時に終わるの?」

「ありがとうございました」


設楽さんはそう言って、また奥へ行った。


「お客さま」


店長がその男性に声をかけた。


「なんだよ」

「いつも言ってますが、うちの従業員を誘惑するのはやめてくださいませんか」

「誘惑って、人聞きの悪いことを言わないでほしいな」

「設楽は迷惑だと言ってるのですが」

「冷たいな~。僕、お客だよ」

「いくらお客さまでも、誘惑は黙って見過ごすわけにはいきません」

「ったく・・なにさまだよ」

「よろしいですね。今後はおやめください」

「わかったよ!うるさいな、まったく・・」


そう言って男性客は出て行った。


「はあ~~・・いつもああなんだから、困っちゃうよ」

「ストーカー・・ですか・・?」

「ううん。ストーカーではないんだけど、設楽さんのことがお気に入りでね」

「そうなんですね・・」

「設楽さん、美人でしょ。だから他のお客さんにもしょっちゅう声をかけられてるんだよ」

「そう・・ですか・・」


そりゃ・・あんな美人なんだもん・・当然だよね・・


「薄柿さん」


設楽さんが奥から出てきた。


「はい・・」

「今後は、私を呼びに来ないで」

「え・・」

「迷惑なの」

「はい・・わかりました」

「店長、補充の商品、発注しますか」

「あ、そうだね。頼むね」

「はい」


そして設楽さんは、また奥へ行った。


「彼女ね、大学生なんだよ」

「そうなんですか・・」

「ここの他に、モデルのバイトもしてるんだよ」

「へぇ~、そうなんですね」

「しっかり者でね。彼女が働いて弟さんを養ってるんだよ」

「え・・」


そうなんだ・・

設楽さんが働いて・・弟さんの面倒を見てるんだ・・

しかも大学へ通いながら・・

だったら・・ご両親はいないのよね・・

すごいな・・

私なんて、足元にも及ばないな・・


「おお~~、時雨くん!」


げっ・・ま・・まさかっ!

入口を見ると、時雨さんが入ってきた。

なんで~~!来ないでって言ったのにぃぃ~~


「店長、おはようございます」

「来てくれたんだね~」

「こいつ、どうっすか」

「まだ二日目だからね、これからだよ。ね?薄柿さん」

「は・・はい・・」

「お前、頼りない返事すんなって」

「はい・・」

「時雨くん、ゆっくりしってってね」

「はい、ありがとうございます」


私は少しだけ時雨さんを睨んだ。


「っんだよ、その顔」

「来ないでって言ったのに・・」

「いいじゃねぇかよ。買い物に来たんだよ」

「うそ・・」


「ちょっと私語は慎んでくれないかな」


奥から出てきた設楽さんがそう言った。


「あ・・すみません・・」

「外のごみ箱の袋を変えてくれない?」

「はい・・わかりました」


そして私はゴミ袋を持って外へ出た。


「小春、悪かったな・・」

「あ・・いいえ・・」

「あの子、怖ぇな」

「いえ・・でも私が悪かったから・・」

「んじゃ俺、ジュース買って来るわ」

「はい」


そして時雨さんは再び中へ入って行った。

確かに怖いけど・・でも弟さんを養うために頑張ってるんだもんね・・

人がサボってるの見たら、腹が立つよね・・

私も頑張らなくちゃ・・


その後も設楽さんの働きぶりは、非の打ちどころがなく、完ぺきにこなしていた。

冷たさはあるものの、お客さんに対しては不愛想でもなく、特に男性客はその姿に見惚れて行く人が多かった。

美人は得だな・・羨ましいな・・


そしてバイトも終わりの時間になり、また時雨さんがきた。


「小春~、迎えに来たぞ」

「そうなんですか。わざわざありがとうございます」

「んで、どうだった?」

「うーん・・ほんの少しだけ慣れましたかね」

「おおっ、二日目で慣れるなんて、すげぇじゃん」

「そうですかね~」


「お先に」


そう言って設楽さんが私の横を通り過ぎた。


「あ、お疲れさまでした」


設楽さんは返事もせずに、歩いて行った。


「なんだよ、あいつ」


時雨さんは不機嫌そうに言った。


「いいんですよ。設楽さん忙しいんじゃないかな」

「ふーん」

「なんかね、一人で弟さんの面倒見てるらしいです」

「へぇー」

「偉いですよね・・」


設楽さんの長くて綺麗な髪が、風になびいていた。

いいなぁ・・顔も美人で髪も綺麗で・・


するとそこに一人の男性が、設楽さんに近づいて行った。

設楽さんは逃げるように、その男性から離れようとした。

しかし男性は、しつこく設楽さんを追いかけた。

ヤダ・・なに・・?マジのストーカー?


すると時雨さんが、その場へ走って行った。

私も後を追いかけた。


「おい、てめぇ」


時雨さんがその男性に声をかけた。


「なんだよ」


その男性は、とてもいかつく、ガラの悪い風貌だった。


「そいつ嫌がってんじゃねぇか」

「お前に関係ねぇだろ!」

「嫌がってるっつってんだろ!」

「なんだと!やるってのか!」

「上等じゃねぇか!」


えっっ・・うそ・・ケンカになる・・?


「時雨さん・・やめて・・」

「うるせぇ、黙ってろ」


時雨さんは私の声に、耳を貸さなかった。


「時雨くんーー!ストーーップ!」


そこに店長が駆けつけてきた。


「店長・・」

「時雨くん、手を出したらダメだよ。ここは僕に任せて」


そう言ったと思ったら、あの優しい店長とは思えないほど、恐ろしい顔に変貌していた。


「きみ、やめるんだ」

「はっ!うっせぇよ!」

「やめろと言ってるのが聞こえないのか」

「聞こえねぇな」

「舐めた真似してたらぶっ殺すぞ」


げっ・・

店長・・一体どうしたの・・


「なっ・・なんだよ」

「てめぇ・・ぶっ殺されてぇのか」

「ぐっ・・う・・うるせぇ!」


その男性は店長の凄みに怖気づき、走って逃げて行った。

ひぃぃ~~~・・店長って・・何者・・?


「設楽さん、大丈夫かい?」

「あ・・すみません。ありがとうございました」

「気をつけて帰りなさい」

「はい」


そして設楽さんは時雨さんを見た。


「あの・・ありがとうございました」

「いや、別に」

「じゃ・・失礼します」


そう言って設楽さんは帰って行った。


私は呆然と店長を見ていた。


「あはは、どうしたの、薄柿さん」

「え・・いえ・・」

「そんなに驚かないでね」

「は・・はい・・」

「店長、さすがっすね。ありがとうございました」

「ううん。時雨くんもさすがだね」

「いや、そんなことないっす」

「じゃ、二人とも気をつけて帰ってね」


そう言って店長は店に戻って行った。


「あの・・時雨さん・・」

「なんだよ」

「店長って・・」

「あはは。何者かって?」

「はい・・」

「あの人な、昔ヤクザだったんだよ」

「え・・」

「でもとっくに足を洗って、今はカタギだぜ」

「そ・・そうなんですね・・」

「まあ、小春はびっくりしただろうな。でも店長はマジでいい人だから心配すんな」

「は・・はい・・」


ヤクザ・・だったのね・・

道理であの凄みは・・並みじゃなかったわ・・

それにしても・・時雨さんの知り合いって・・その筋の人が多いな・・

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