表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
22/94

二十二、風邪



「小春~~~!」


次の日、美琴と紬が早速、声をかけてきた。


「小春~~、昨日、手を繋いでたやんかいさ~~!」

「そうそう。驚いたでありんすよ~!」

「そうなのよ~!んでね、携帯の番号も交換しあったの!」

「ひゃあ~~マジかーー!」

「ああ~~・・とうとう・・この日がきたでありんすな・・」

「紬・・この日ってなによ」

「我々が、日々妄想し続けたことが・・現実に・・。感無量でありんす・・」

「そんなあ~。まだ付き合うとか、そういうんじゃないのよ」

「いいえっ!手を繋ぐ・・そして!携帯の番号まで交換しあうとは・・これぞ一足飛びラブっ!でありんす」

「なに~~、それ」

「でもよかったな、小春」

「うん!私、すごく嬉しかった!で、時雨王子・・やっぱり優しい人だったわ・・」

「そっかー。それはなによりやん」

「でね、遊園地のチケット、翔王子が用意してくれたのよ」

「あらまあ~、翔王子、粋な計らいをしたでありんすな~」

「私・・諦めなくてよかった・・ほんとに・・よかった・・」


私はそこまで言うと、涙が溢れてきた。


「泣きなや・・私まで泣けてくるやんかいさ」

「小春・・気持ちは痛いほどわかるでありんす・・」

「二人とも・・ありがとうね・・」

「んで、小春。電車の時間はどうするん?」

「あ・・そっか・・」

「また同じのに乗りたいでありんしょ・・」

「どうしようかな・・」


私の気持ちとしては、毎朝、時雨王子に会いたいけど・・

それより、時雨王子から電話がかかって来ることを待ちたかった。

それと・・これは二人には言えないけど、また三人で一緒に乗ったら・・「事件」が起こりそうな気がして、私はそれが不安だった。


「通学は・・今まで通りでいいよ」

「え・・そうなん?」

「会いたいでありんしょ・・」

「いいの。なんていうか・・連絡があるまで待ちたいの・・」

「おお~~。なんや小春、色々と考えてるやん」

「ここは・・浮足立たずに、でありんすか」

「うん。そんな感じかな。あはは」

「よっしゃ、わかった!」

「私たち、全力で応援するでありんすよ」

「ありがとう・・」


それから私は毎日、時雨王子からの連絡を待った。

一日が過ぎ・・二日が過ぎ・・

そしてとうとう、一週間が過ぎた。


どうしたのかな・・

こういうのって・・すぐにかかってこないものなのかな・・

ひょっとして・・私のことなんて、もう忘れちゃったのかな・・


「ねぇ・・紬・・」

「なんでありんすか」

「時雨王子・・どうしたのかな・・」

「うーん・・そうでありんすなぁ・・」


美琴と紬は毎日、時雨王子から連絡があったのかと訊いてきたので、連絡がないことを知っていた。

そのため、紬は返事に困っていた。


「ただの・・気まぐれだったのかな・・」

「いや。それは違うでありんすよ」

「どうして・・?」

「時雨王子は一時の気まぐれで、女子を惑わせるようなことしないでありんすよ」

「そ・・そかな・・」

「からかうつもりだったら、これまでも、いくらでもからかえたでありんしょ」

「うん・・まあ・・ね・・」


「なんやの~~!暗い顔してからに!」


そこに、トイレへ行っていた美琴が戻ってきた。


「時雨王子のこと・・」

「それかいな~。っんなもん、小春から電話したら済む話やがな」

「えっっ!わ・・私から・・?」

「だって小春、私も連絡しますって言うたんやろ」

「そ・・そうなんだけどぉ・・」

「ほな、したらええがな」

「でも・・冷たくされたりしたら・・」

「っんなこと、ないって」

「小春。美琴の言う通りでありんすよ。こっちからかけるべきでありんす」

「えええ~~・・」


私から、電話を・・

もし・・冷たくされたりしたら・・

そこで私の夢は終わっちゃう・・


「ほら~~、迷てんと、かけぇな」

「え・・」

「傍で聞いててあげるでありんすから、大丈夫でありんすよ」

「でも・・」

「でももへったくれもあらへんっ!迷うなら行動すべし!」

「んじゃ・・放課後になったらかけてみる・・」


そして放課後になり、私は電話を手に取った。


ううう~~・・どうしよう・・

なんて言えばいいのかな・・

まずは・・この間のお礼よね。

そうよ!お礼の電話をすればいいんだわ!


「じゃ・・かけるね・・」


私の傍で美琴と紬は、心配そうに見ていた。


ルルル・・


出てくれるかな・・

もう、授業も終わってるはずだし・・


ルルル・・


「は・・い・・」


あっ!出たっ!時雨王子の声だ~~~!

ん・・?でも・・なんか様子が変よ・・


「あのっ!もしもしっ!わ・・私・・小春です」

「あ・・そうか・・」

「あのっ!この間は、ありがとうございました!」

「ああ~・・」

「あの・・どうかされたんですか・・」

「うん・・?ああ・・ちょっと寝てて・・」

「そ・・そうなんですか・・すみません」


え・・寝てたって・・学校は・・?


「あの・・学校は・・」

「ああ・・ちょっと風邪ひいてよ。んで、今は家で寝てる・・」

「ええええ~~~!だっ・・大丈夫なんですか!」

「ったく・・でけえ声出すなよ。頭に響く」

「あっ・・すみません・・」

「んじゃ、そういうことだから」

「いやっ・・あのっ・・」

「なんだよ」

「えっと・・熱とかは・・あるんですか」

「ああ・・ちょっとだけな」

「病院へは行ったのですか」

「行ってねぇし。つか・・もう切るぞ」

「いや・・あの・・」


プチッ・・


げ~~~切られた・・

時雨王子・・とてもしんどそうだった・・

そっか・・風邪ひいてたから連絡がなかったのね・・


「どうやった?」

「時雨王子・・風邪でもひいたでありんすか」

「うん・・。で、寝てたみたい」

「あら~、そうでありんしたか」

「でも・・しんどそうだった・・」

「小春・・」

「なに・・?美琴」

「行き」

「え・・?」

「行くんやがな」

「行くって・・どこへ・・?」

「時雨王子の家に決まってるやろ」

「ええええ~~~!なっ・・なんで私がっっ!」

「絶好のチャンスやがなっ!」

「げ~~~!」


その後も私は美琴と紬に押され、結局、時雨王子の家へ行くことになった。


「ええな、家は知ってるやろ」

「う・・うん・・」

「大丈夫ですか~~、言うたらええねん」

「でも・・引かれないかな・・いきなり押しかけて・・」

「あれこれ考えるのは後や」

「なんか買って行った方がいい・・?」

「そうやな~、ヨーグルトとかプリンとか、ええんちゃう?」

「いや・・風邪には生姜湯でありんしょ」

「うわっ・・オバハン臭いなあ」

「なにを言うでありんすか。効果てき面でありんすよ」

「それか、シンプルに市販の風邪薬とかええんちゃう」


二人はあれこれ案を出してくれたが、私は清涼飲料水を買おうと思っていた。


「じゃ・・行って来るね・・」

「ご武運を祈ります!」

「なによ・・ご武運って・・」

「細かいことはええがな。頑張ってな」

「うん・・」

「小春、しっかり・・でありんすよ」

「うん・・」


そして私は、時雨王子の家の前に到着した。

うわあ~~・・ほんとに来ちゃった・・

この扉を開けると・・時雨王子がいるんだ・・

ダメだ・・ドキドキしてきた・・

ちょっと深呼吸・・はあ~~~・・

いよーーっし、行くぞ!


「こんにちは」


私はまず、玄関の前で声をかけた。

しかし、返事がない。

きっと寝てるんだわ・・


「時雨さん!いらっしゃいますか!」


また声をかけたが返事がない。

えぇ~~い・・仕方がない・・扉を開けるしかないよね・・


ガラガラ・・


私は思い切って扉を開けた。

すると玄関を上がったところの部屋で、時雨王子が寝ていた。


「あの~~・・お邪魔しますぅ・・」


すると時雨王子の身体が、少しだけ動いた。

起こした方がいいのかな・・

でも・・かわいそうだな・・

ペットボトルを置いて帰った方がいいよね・・


私は玄関先に、ビニール袋に入れたペットボトルを置いて帰ろうとした。

すると物音に気がついたのか、時雨王子が目を覚ました。


「あ・・お前・・」

「あっ!あのっ・・!風邪、大丈夫ですか・・?」

「お前、なにしに来たんだよ」

「え・・なにしにって・・」

「来てくれと言った覚えはねぇぞ」

「そうですが・・心配になって・・」

「あのな!俺は風邪をひいてんだよ。お前、わざわざ移りにきたのかよ」

「はいっ!どうぞ私に移してください。そしたら時雨さん治りますから!」

「はっ、バカか」

「あの・・食事は・・どうされてるんですか・・」

「っんなもん、適当」

「え・・それじゃ、治りませんよ」

「兄貴が帰ってきたら、なんか作ってくれんだよ。んで、和樹も、もうじき帰ってくるし」

「そ・・そうですか・・」

「だからお前は帰れ」

「あの・・私・・邪魔ですか・・」

「はあ?」

「心配になって・・来ただけです。でも邪魔なら帰ります」

「邪魔なんて言ってねぇだろ。移るっつってんだよ」

「私・・移ってもいいです・・。それで時雨さんが治るなら、移ってもいいです・・」

「ったく・・なに言ってんだよ」

「でも・・今日は帰ります・・。あの、これ・・よかったら飲んでください・・」


私はそう言って、袋を差し出した。


「おい、小春」

「は・・はい・・?」

「ちゃんと聞け」

「え・・」

「俺はお前に風邪を移したくない。それだけだ」

「・・・」

「わかったか」

「わ・・わかりません・・」

「はあ?わかんねぇのかよ」

「だって!好きな人が風邪ひいて、熱を出して苦しんでたら、心配になります!で・・移ったっていいと思ってます!」

「じゃあ聞くけどさ。お前が風邪ひいて、俺が会いに行ったら、お前、俺に移して平気なのかよ」

「え・・」

「だから帰れ」


い・・今のは・・どういう意味・・?

えっと・・どう理解したらいいの・・?

ダメだ・・頭が混乱してきた・・意味わかんない・・


「じゃ・・帰ります・・」

「ああ」

「早く治るといいですね・・では・・」


そう言って私は家を出た。

さっきのは・・どういうことなんだろう・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ