第29話社員旅行二日目。エンジェルランドへ
露天風呂にて突然の戦闘だったが、ルイーゼとミランの助けにより切り抜けた。
そして、浴衣に着替えたルイーゼとミランはアザゼルの部屋にてお説教されていた。
「ます、助けてくれたのはありがとう。けど温泉の塀を超えるのはやりすぎだぞ。いろいろ見えそうだったし、もっと自分の体を大切にしろ」
「も、申し訳ございません。アザゼル様に危機が迫っているのを感じ、いても立ってもいられず…つい」
「私も軽率でしたわ。ですがアザゼル様が対峙していたあのおと…ぐふっ」
ミランが顔を抑えると同時に滴り落ちる血。
「!……どうしたミラン?まさかさっきカイザーの攻撃を……」
「ミランさんが言いたいことは分かります。奴と戦っていたアザゼル様の……ッ」
つぅ〜っとルイーゼの鼻から鼻血が。頬を蒸気させ恍惚な表情だ。
「る、ルイーゼまで?!なんだ?!何をされた?!」
「アザゼル様の、肉体美!」
ルイーゼが両手を頬に当ててはしゃぐ。
「は?」
「均衡の取れた腹筋と胸筋……しなやかな背中。怒りと共に盛り上がる美しい……筋肉。はぁあ……包み込まれたなら、もう、私、私はぁっ」
自分の体を抱きしめ、クネクネと色っぽく腰を揺らすミラン。アザゼルは一気に真顔と化した。
「ミランさんっわかりますよ!類い稀なる美の化身!それなのに逞しく包容力溢れるカラダ。包み込まれたなら……あぁっどうにかなってしまいますッ!」
「そうねそうねっ後で私の魔法、念写でブロマイドとポスターを作ってさしあげますわ」
「ミランさんは天才ですか?!い、いくらですか?!」
手を取り合い、キャーッと盛り上がる美女二人。仲が良いのか悪いのか。アザゼルは大きなため息を零した。
「大物だよ……君たちは」
(二人は、うん……ほっといても大丈夫そうだ。けど心配なのはシンだな)
「とにかく今日は助けてくれてありがとう。男部屋女部屋、各々に結界を張っておくから体を休めるといい。あんまり夜更かしするなよ?」
「「はいっ」」
この後、二人の間ではアザゼルのブロマイドを見ながら談義が盛り上がるのだが、当の本人は想像したく無いところだ。
二人が部屋を後にし、アザゼルも立ち上がる。シンは、一人になりたいと行ったっきり戻ってきていないのだ。
「何時また奴が襲ってくるか分からない……あんまり一人にはしたくなかったんだけど……」
そっと従業員管理スキルを発動させる。名簿からシンの名前を選んだ。
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シン
連勤 0日
ストレス値 48→300
性格 一人でコツコツタイプ
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「うわ……ストレス値が。そりゃぁそうか……トラウマ野郎とばったりしちゃったもんな。俺だって生前の上司に会ったら心臓バクバクしてたしな……さて、どうしたもんか」
従業員達の仲を深め、チームワークアップとストレス緩和を狙いとした社員旅行。まさか大ボスと鉢合わせてしまい、シンにとっては追ストレスになるとは。
一人にして欲しいと言われたが、放っておけないものだ。
「……会社って難しい……」
アザゼルは頭を掻きながら、旅館の布団へと大の字になった。
◇◇◇
朝。魔王御一行は長机にて朝食をいただいていた。
(シンは……いつも通りに見えるな。後でストレス値をチェックしておくか)
「皆。今日はテーマパークだからな。しっかり食って、しっかり遊ぶぞ!」
ワッと盛り上がる十数人。魔王城の社員旅行は二日目に突入した。
◇◇◇
回転しながら空を舞う円盤。ほぼ直角に滑り降りた後、空へ飛び出しうねりを上げるコースター。魔法の絨毯に、煌びやかな満点の星空の中で駆け抜ける回転木馬。
「そして、焼きたてのポップコーンの匂い!ここがエンゼル王国自慢の観光地、エンジェルランド!」
ルイーゼは目を輝かせながらゲートをくぐり抜けた。初めて体験するテーマパークに目をキラキラさせている。
「小さい頃は両親とよく来ていましたが……やはり素晴らしいですわね。新しい乗り物はあるかしら」
ミランも抑えているように見えて、マップを見ながらぷりぷり張り切っている。
「あっ、アザゼル様!マスコットキャラクターのエンジェルベアですよ!写真撮りましょう!」
「はいはい」
「ねぇシンくん。もしかして具合悪い?」
口数の少ないシンを気遣ったのはニーアだ。
「えっい、いや、別に……」
「ほんと?あ、もしかして絶叫苦手?大丈夫だよ〜絶叫好き組と、無理組に分かれるしさ」
「絶叫は平気かな。ありがとう。なんかこーゆーの久しぶりすぎてよ、舞い上がっちまって」
はは、と笑うシンは明るく振舞っているように見える。アザゼルは一息置くと、エンジェルランドのクマ耳カチューシャをシンの頭へ装着した。
「シン。思い出してもいい。けど今はめいっぱい楽しむぞ!」
シンは瞳を丸くしたあと口角を上げた。
「はいっ!なにから乗りましょうか、アザゼルさん!」
魔王一行はエンジェルランドへ。
その様子を柱の影から一人の男が見つめていた。
新手の刺客か――




