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ギャルで、オタクな女先輩は意外と純情(納得)3

 少しでも遠く、少しでも水原先輩の気を紛らわせる場所へ。

 水原先輩を守りたい一心で店から離れる。

 人にぶつかりそうになりながらも歩く速さは変えずにひたすら歩く。

 時間にして十分ほど経った頃だろうか。水原先輩が立ち止まったのは。


「もういい。ありがとう守谷」


 手を振りほどき、ハリボテの笑顔を俺に向ける。


「もしかしてですけど、さっきの男の人って水原先輩の──」

「やめて!!」


 水原先輩の悲鳴に似た怒号に近くを歩いていた人が振りかえる。

 だが俺と水原先輩を見て、ただの痴話喧嘩かと思ったのかすぐに気にせず横を素通りしていく。


「ごめん」


 何も悪くないのに謝られてしまった。

 むしろ謝るべきなのは俺の方だ。

 仮にあの人がかつて水原先輩の好きな人だったとして、なぜ俺に知る権利がある。

 いたずらに過去を知り、解決出来ないくせに根拠のない言葉で善人ぶり、最後には手のひらを返して見捨てる。

 そんな奴らを俺は見てきたはずだ。

 なのに今の俺の行動はどうだ。

 綾先輩や松本先輩であれば解決策を見いだせるのだろうが、俺にはそんなこと出来ない。

 なのにどうして聞いてしまったのだろうか。


「帰るね。あたしがいなくてももう大丈夫だよね」


 踵を返し、俺から離れていく水原先輩の後ろ姿。

 俺が出来ることはない。あるとすれば、これ以上詮索しない。水原先輩の過去には触れない。

 そうすればお互い変わらず仲の良い先輩後輩という関係でいられる。

 わざわざ溝を作る必要なんてないんだ。

 頭ではちゃんと理解しているはずなのに、体はそれを無視して水原先輩の手を再び握った。


「え……」


 困惑した様子の水原先輩。

 一方の俺も自分のやっていることに意味がわからないでいた。

 でも俺の口は心情と反して力強く発言する。


「水原先輩。ちょっと遊んでいきませんか?」

「そんな気分じゃ」

「それじゃあ行きますよ!」

「いや、話聞いて━━ちょっと!」


 問答無用で水原先輩を連れていくけど、本当に俺は何がしたいんだろう。

 もうどうでもよくなり、勝手に動く体に身を任せて歩く。

 着いた先はゲームセンター。


「遊びに行くとか言ってゲームセンターなの? なんかあんたと外で出かけると、毎回ゲームセンターよね」

「いいじゃないですか。水原先輩も嫌いじゃないでしょ?」


 変に気取った場所でも、意表を突いた場所でもない。

 俺達らしい場所ということもあり、水原先輩の調子も少し戻ってくれたようで安心した。


「手始めに何しましょうか」

「プリクラでも撮る?」


 頭にユオンの記憶が蘇る。


「やめておきましょうよ」

「さすがに前みたいなことにならないわよ。ほら、あたし達ならではの楽しみ方あるんだし」


 俺達ならでは?

 ピンとこないままプリクラに入れられるとすぐに撮影が始まる。

 アナウンスがポーズを要求すると同時に水原先輩がバッチリとポーズを決めた。

 でもこれは……この紳士的で奇妙な立ち姿はまさか!?


「さっさとポーズを取りなさいよ。()()()()()ならね」


 その瞬間、体に不思議なことが起こった。

 両腕を頭の後ろで重ね、片足は伸ばしながらももう片っぽは余裕を持たせるように膝を曲げたのだ。


「次! 三部と四部!」


 今度は奇妙な血縁関係である二人の立ち姿を真似た。

 次々と出される水原先輩の命令に的確に答えていく。

 プリクラって、こんなに楽しかったっけ!?

 あっという間にラスト一回になり、少し残念ながらも次のポーズをどうするのかでワクワクしていた。


「水原先輩! 次何にしますか!?」

「そうね……」


 ポーズを悩んでいるようだが、早くしないと撮られてしまう。

 カウントダウンも始まってるし、急がないと。


「水原先輩、もう時間がないですよ」

「うん! 決まった」

「おっ! 何ですか!? 早く言ってください!」


 期待に胸ふくらませていると、ニッと笑った水原先輩は俺と腕を組み、ぐいっと顔を寄せてピースをとった。

 予想外のことで反応出来ずにそのままプリクラは終了した。


「ぷっ……あははっ! すごいアホヅラ!」


 完成したプリクラを見て腹を抱えて笑っている。

 確認したけど、自分ながら本当にひどい顔だ。


「そんなに笑わないでくださいよ」

「ご、ごめん、ごめ━━ぶあっはっはっ!」


 全然謝罪の心が伝わってこないなー。


「ち、ちょっとお手洗い、い、ぷふっ、行って、くる」

「笑うのやめてから行ってくださいね。おかしな人と絡んでるって思われたくないんで」


 俺の声が聞こえたかはわからないけど、水原先輩はトイレに向かって人混みに紛れる。

 改めてプリクラの写真を確認する。

 最後の一枚は目を背けたくなるが、他のはバッチリ。

 あ、でももう少し膝を高くした方が良かったかな。

 それにこっちは本家と立ち姿が少し違うような……おっ! これは完璧だ!

 プリクラの出来に一喜一憂しながら俺は水原先輩を待つ。



「はぁ……」


 幸い空いていたトイレに駆け込み、鍵をつけて一息する。


「まだ少し手が震えてる」


 まさかあんなところで達哉君に会うとは思ってもみなかった。

 彼の顔を見た途端に、過去の記憶がフラッシュバックしてしまい、頭が真っ白になった。

 すぐに守谷が連れ出してくれたからよかったけど、遊びに連れてかれた時は正直鬱陶しいと思った。

 でも今は守谷と遊んで良かったと思える。

 守谷となら気兼ねなく遊べるし、辛いことも忘れることが出来そう。


「でも、さすがにあれはやりすぎだったかな」


 こっそり一枚だけ取ったプリクラを眺める。

 それは最後に撮ったあのプリクラだ。

 好きな作品のキャラの真似をするのは楽しかった。でも、最後のこのプリクラは撮った中で一番のお気に入り。

 自分でも何であんなことしたのかわからないけど、やって良かったと思ってる。

 でもこのプリクラどうしよう。

 さすがにスマホは恥ずかしいし。


「あ、そうだ」


 鞄から手鏡を取り出し、それに貼り付けて大事にしまう。


「これでよし」


 色々と落ち着いたし、もう戻らないとね。

 トイレを出たあたしは軽い足取りで守谷の元へと駆けた。



「おまたせー……って、プリクラの写真と睨めっこして何やってるの?」

「あ、水原先輩。いや、もう少しクオリティを上げれたはずなのになーと思って。くっ、やっぱり俺はワインをたしなみながら敵を倒せるほどの紳士にはなれないのか!」

「いや、別にワインたしなんで敵と戦ってたわけじゃないから」


 と的確にツッコミを入れてくれる水原先輩。

 いやー、やっぱりネタを理解してくれるっていいなー。

 漫画ネタは全然知らない人にやると、本当にスベるからな!

 その時の耐え難い虚しさは経験者だからよく知ってる。


「ところで次は何をしますか?」

「あれ!」


 水原先輩が指差す先のゲームに目を向ける。

 同じ機種のゲームが横一列に並び、ところどころプレイしている人がいる。

 そのプレイしている人は総じて手を忙しなく動かして画面をタッチしていた。

 よくSNSで見かける最新のリズムゲームのようだ。


「あれですか、ちょっと興味があったんですよね」

「それなら行くわよ!」


 今度は水原先輩に手を引かれ、そのゲームを遊ぶことに。


「はい、最初は守谷から」


 背中を押され台の前に。

 早速コインを投下して選曲画面へ。

 俺の大好きなアニソンが目に入るとすぐにそれをタッチした。

 この機種のプレイ動画見ててやってみたいとは思ってた。

 カッコイイ曲を見事にフルコンし、決める自分の姿を何度想像したことか。

 だけどもう想像の話じゃない。

 現実になるんだ!

 ……と、意気がってたのが本の数十秒前。

 そして現在フルボッコだドン。

 どういうことなんだイメトレは完璧なはず。

 今も脳内の俺はフルコンなのに、現実は手が間に合わなかったり、フリックミスやタッチミス、そもそも指示された行動と違うアクションをしていたりしていた。

 終わってみれば、結果まともに反応したのは半分以下。

 その内タイミングが最高評価だったのは片手で数えられる程度だった。


「ば、バカな」

「うん、あんたバカよ」


 慈悲のない言葉が心に突き刺さる。


「もう少し励ましの言葉とかないんですか?」

「じゃあ聞くけど、あんたこのゲーム何度目?」

「初めですよ?」

「難易度は?」

「もちろん最高ランクです」

「バカじゃん」


 はいそうです。俺はバカです。

 お金払って疲労感と無力感を味わっただけのドMです。

 あ、やっぱりドMは本家(真島先輩)に失礼だから取り消す。


「これだから素人は」

「素人って、水原先輩はやったことあるんですか?」


 と、反論すると水原先輩は澄まし顔で台の前に。

 同じように硬貨を投入して俺と同じ曲を選曲したけど……おいおい、最高難易度を選んだよこの人。


「水原先輩、ムキにならなくてもいいですよ」


 しかし俺の言葉などどこ吹く風。

 俺を一瞥するとニヤリと笑って、すぐに前を向く。

 最初のタッチは見事に最高評価、続く連続フリックや縦横無尽に動く光の軌跡を遅れることなくなぞる。

 ミスもなく続き、コンボ数が三桁を超えた。タッチもほとんど最高評価。

 すごい……だけどそれよりも水原先輩の楽しそうにプレイする姿に目が離せなかった。

 指先のフリックや体全体を使ったラインをなぞる姿、リズミカルなタッチ。

 一種の舞を見ているかのようにさえ思えるほど、水原先輩の一つ一つの動作が綺麗だった。

 そして訪れる最後のフリックを決め、見事フルコンを達成した水原先輩はドヤ顔で振り返る。


「どうよ!」

「いや、その、なんというか……綺麗でした」

「はぁ!? き、きき綺麗って、あんた━━」


 水原先輩が何かを言う前に周りから拍手が。

 いつのまにか水原先輩のプレイに魅了されたギャラリー達に囲まれていた。


「え、えーっと……行くわよ守谷!」


 こんなにも大勢からの拍手を受けたことに戸惑った水原先輩は恥ずかしさを紛らわさせるように大声で俺を呼ぶと、ゲームセンターから離れようとする。

 水原先輩に従い俺もその場を後にした。

読んでくださりありがとうございます!

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