後編(完)
「んにゃっと疲れたにゃー!!」
ミケはベッドに倒れ込むと、大の字に手足を広げて大きく伸びをした。一緒に歩いた獣もさすがに疲れたのか、横たわるミケの隣に腰をおろした。
あれからミケと獣は手を繋いだまま歩き続け、気がつけばかなり遠くまで歩いていた。二人とも帰ろうと決めた時には、空は夜の闇にすっかり包まれており、あいにく空には
月は出ておらず、光る木の道を外れた場所は真っ暗な世界が広がっていた。‘偶然’道に置かれていたランプで道を辿り、二人は元の部屋へと戻って来たのだった。
「ジュウ~足をマッサージするのじゃあ~」
「はいはい」
ベッドの上をゴロゴロと転がって呻くように言うミケを見て、獣はほんのりとほほ笑む。
(あ~やっぱり可愛いな~)
顔が自然と綻ぶ。先程の散歩で相当疲れた筈なのだが、不思議と心地よい感覚だった。
獣はミケが向けてきた足の先を持つと、小さな足の指をぷにぷにと押し始める。押す力を段々と強めていき、足の裏全体を指で押していく。
「にゅふ」
ベッドに寝転んでいるミケは気持ちよさそうに目を細めている。足の裏をある程度押した後、足首、ふくらはぎへと獣は手を伸ばしていく。白い肌に力を入れる度、ミケの口からは心地の良いため息が漏れた。
「う~イイ感じにゃあ~」
「ねえミケ?」
ミケの足をマッサージしながら獣が口を開いた。
「にゃんじゃな?」
「なんで僕をこの世界に連れてきたの?」
「んにゃ?それは最初にジュウに言った通りじゃ。ジュウに最近の飼い主としてなんたるかを教え……」
「うそ」
「え、ジュウ……」
ミケが呟くより先に、獣は動いた。横たえた体の横でだらんとしていたミケの手を掴んだかと思うと、グイッと自分の方へと引っ張り、ミケの体を無理やり起こさせた。二人はお互いの顔を見合わせた形で、ベットに座る様な姿勢になった。突然の事に驚きを隠せないミケであったが、獣は掴んでいるミケの手首をさらに引き寄せた。ミケの体が抵抗なく獣に近づく。部屋の外から扉が叩かれる音が鳴った。
「ジュ、ジュウ、なんなのじゃいきにゃり」
「ミケ、この際だからホントの事を言って欲しいな」
ミケの顔を真っすぐに見てくる獣にミケは顔を赤くしつつも言葉を返した。
「ほ、ホントの事ってなんにゃのにゃ」
「ミケが僕を連れてきた理由を最初に離してくれた時から考えてたけど、ミケが言う様に、僕がミケの飼い主として駄目だったことがあったのなら、昔の方がもっと僕は駄目だった気がするんだ」
「そ、それは……」
「ミケのご飯を忘れたり、トイレの後始末をやらなかったり、爪切りの時に切りすぎちゃうのもあったし……」
「あ、あれは痛かったのじゃ」
ミケが頬を膨らませて拗ねるように言うと、その反応に獣が軽くほほ笑む。が、またすぐにミケの目を見ていった。
「それでね、僕は思ったんだ。ミケがこの世界に僕を連れてきたってことは、僕は気付かないうちにミケに酷い事をしてたんじゃないかって」
獣の言葉にミケの眼は丸く開かれた。獣に握られていたミケの手にキュッと力が入った。
「そ、それは違うにゃ!!ジュウは妾に酷いことなどしておらん!!」
「でも!」
「シャーラップ!!思い込みも大概にするのじゃ!」
ミケは大声で叫ぶと、ミケは腕を後ろに勢いよく引いた。ミケの手を掴んでいた獣は、今度はミケの方に近づいく。二人の顔が、さらに接近した。外から扉を叩く音が、さらに大きくなった。
「さ、最初に言った通りにゃ!ジュウはこの頃、飼い主としてなっておらん!!」
ミケはそう言うと渋い顔をしながら唇を噛んだ。言おうかどうか、悩んでいるように見える。やがて、ミケは意を決したのか獣に鋭い目を向けた。
「き、昨日だってそうにゃ!妾の耳掃除をしようとして、お前はどこか行ってしまったじゃにゃいか!!その前だって試験かなにやらで構ってくれにゃんだし……ジュウは気づいておらんのかも知れんがにゃ、わ、妾に構う時間が段々少なくなっておるのじゃ!!」
ミケは顔を真っ赤にして言った。ミケの言葉に獣は素直に驚いていた。いつもミケの事を撫でたり遊んだりと、スキンシップは取っていると獣は思っていた。だがミケの方からすると、歳が上がるにつれ、獣はミケと遊ばなくなっていたらしい。
そういえばと、獣は思い当たる節が出てきた。
昔はいつも学校から帰ると、ミケと遊んでいた。だけど中学、高校と上がるに連れて、試験勉強や学校生活や友達との付き合いで、知らず知らずにミケと一緒にいる時間が少なくなっていた。獣からすれば自分では気づかないほどの変化だったかも知れないが、ミケはそれを感じ取っていたのだ。
納得した表情を浮かべる獣の前で、ミケは顔を赤くしたまま、ゴニョゴニョと口を動かす。
「にゃ、にゃからな、ジュウが妾の事を構ってくれないんであれば、逆にジュウの飼い主になれば、妾の事を構ってくれると思って……」
かろうじて聞こえる程の声でミケは言いながら、ミケはふるふると体を震わせてジュウを見つめた。
「……め、迷惑だったかにゃ?」
恐る恐る聞いてきたミケの表情は、まるで悪さをして謝る子供のように獣は思えた。ミケの気持ちを聞いた獣は、慌ててミケの手から自分の手を離すと、
「そ、そんなことないよ!さ、最初は急にこっちの世界に連れてこられてびっくりはしたけど……」
「したけど?」
「こ、こういうのも偶にはいいかなって……」
獣は頬を指で掻きながら、照れるようにミケに言った。首輪を巻かれるのはどうかとは思うのだが、こうして、ミケの本心を聞けたことが、獣には嬉しかった。
二人共しばらくはベッドと話すかのように顔を下に向けてしまった。互いに恥ずかしさや照れくささが混ざり合って、とても相手の顔を見ることができなかった。
が、獣が再起動するよりも先に、ミケの体がプルプルと震え、手を大きく振り上げた。
「んにゃー!!乙女にこんなこと言わすにゃよ!!」
「ごはっ!」
大声で叫びながらミケの手がジュウの顔に振り下ろされた。まるで今までしてきたことの恥ずかしさを紛らわすかの如く。突然の攻撃をモロに喰らい、獣は声を出してベットへと倒れ込んだ。
(こ、これってペット虐待じゃないかな・・・・・・?)
じんじんとしびれる側頭部を手で押さえつつ、獣は起き上がろうと上体に力を入れた。が、突然、視界が揺れた。頭が急激に重くなり、体を起こそうと頭では思っても、体どころか頭の中まで獣の命令を拒否するかのように動かなくなった。
(え…なに……)
「んにゃ、ジュウ?」
ミケの声がぼやけた感じに聞こえてくる。ぼやっとなった思考の中で、獣は庭に出た時にミケが言った事を思い出した。
―ジュウが寝入ったあとすぐに連れてきたから、1時間も眠ってにゃいんじゃないかにゃ?
(そうだ……そういえば僕、眠らずに動いていたんだ……)
今まで体への衝撃やショックや運動で誤魔化されていたが、決して何処へと消え去っていたワケではなく、獣の体に蓄積していた。それが今一気に出たのだ。
ふわっと柔らかいベッドの感触に体が包まれると、獣の体を瞬く間に気だるさと眠気が纏わりついた。瞼が自然と落ちてくる。必死でそれを上げるのだが、獣の瞼は本人の意思を受け入れずに閉じようとしていた。
ミケも獣の様子に気づき、傍まで近寄るとユサユサと獣の体を揺すり始めた。だが今の獣にはその揺れさえも、眠気を誘うゆりかごの様に感じた。
「ジュ、ジュウ!寝るにゃ!寝たら死ぬぞ!!」
(え、死ぬの!?)
ミケのセリフに言い返したかったが、もう声を出すこともできなかった。獣の視界はみるみるとまどろみに包まれていき、
(み……け……)
やがて闇に落ちた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
獣が目を覚ました時、薄暗い部屋の空気が顔を包んだ。
体に感じるのはいつも自分が眠っているベッドの感触。獣は仰向けになったまま顔を横に動かした。壁には、いつも見慣れていた猫のポスターが貼ってある。天井には豪華なシャンデリアはなく、紐のぶら下がった蛍光灯の照明が付いているだけであった。
(……夢?)
獣は目を開いたまましばらく動かずに、先ほどまで自分が体験した事を頭の中で思い出し始めた。が、寝起きの所為か、頭が酷く重たく、まともに思考が出来ない。
(夢……なのかな~?)
ふと、獣は胸元に圧迫感があることに気づいた。妙にダルさが残る手で、自分に掛けられた布団をペロッとめくってみる。すると獣の胸のあたりに、見覚えのある塊が乗っかっているのが見えた。ペタンと耳を倒し、パジャマに爪を引っ掛けたまま、ミケが胸の上で眠っていた。臍のあたりにミケの尻尾の感触もあった。暗闇の中、ベッドの中にいたミケは、‘猫’であった。
「ミケ……お前いつの間に潜りこんだの?」
赤ちゃんに尋ねるかのように優しい口調でいい、獣は眠っているミケの頭を優しく撫でた。滑らかな毛の感触が手に伝わり、撫でられたミケの口から微かに「うにゃ」と鳴き声が聞こえた。
頭がぼやけ、自分がどれくらい眠ったのか予想もつけられない。時間の感覚が麻痺してるようだ。獣はいつも枕下に置いてあるデジタル目覚まし時計を見ようと首を伸ばし、ミケを撫でた手を時計へと持って行った。2,3度ガチャガチャと時計のボディを叩いたが、スイッチの部分に手が掛ると時計の画面が光り、数字を浮かび上がらせた。
―201○ / MAY / ○○ / SAT
21 : 03
「……あれ?」
獣は自分が見た数字に違和感を感じ、目を擦ってもう一度時計の表示を確認した。仰向けで見ているため数字は上下逆に見えているが、時間は「21:03」と、24時間単位の表示でしっかり表されている。そして曜日の部分であるが、
「……土曜?」
記憶が正しければ、自分は確か、『金曜日』の11時に、ベッドに入った筈だ。なのに目を開けてみれば土曜の午後9時となっている。獣はミケの重さの他に、胸に重い物が圧し掛かってくるような感覚が覚えた。どうやら自分は一日中ずっと眠ってしまっていたらしい。
(うわ~一日中眠ってるって)
ぼやけている頭がさらにクラクラとなる。遊び盛りの高校生の休日が、まさか一日中寝て終わるとは……
だが獣の中には、不思議と奇妙な満足感が残っていた。夢の中で見ていた、人間になったミケと過ごした時間。思い出すと目を覆いたくなる。記憶は微妙に曖昧なのだが、ものすごい恥ずかしい事をしていた気がする。
(というかミケをあんな風に想像するなんて……)
夢の中で触れたミケの耳や手や足の感触がまだ体に残っているようで、獣は恥ずかしさの余り悶えそうになる。だが胸の上にミケが乗っていることに気付き、落ち着くために大きく深呼吸をした。
一回……二回……三回……四……よし、大丈夫。
獣は「とにかく起きよう」と次の行動を決め、ムクリと体を起こした。
「にゃ~」
「イテテ……ミケ、痛いよう。離して」
首元に走った鈍い痛みに獣は顔をしかめた。胸に乗っていたミケの前足が丁度首元にかかるように置かれ、彼女の小さく鋭い爪が首に食い込んでいるのだ。両手すべての爪が獣の首から鎖骨辺りに引っ掛かっていたため、ミケは崖を登るクライマーのような格好になってしまった。獣はミケのお腹付近を掴んで離そうと動かすが、どういうワケか全く離れようとはしなかった。目を下にしてミケの顔を覗き込むと、うっすらと目を開けているのが見えた。慌てて眼を閉じたが、起きているらしい。
ミケを離す事を諦めた獣は、ミケの尻尾の方へと手を回すと、ミケを抱っこしながら扉を開けて部屋を出た。廊下を出ると部屋と同じ薄暗い闇が続いていて、家の中はシンと静まり返っていた。
「お母さん?」
獣は声を上げながら階段を降り、一階のリビングへと入った。ここも獣の部屋と同じく、薄暗く静まり返っていた。リビングの明かりを点けると、テーブルの上に一枚の紙切れが置かれてあった。獣はそれを手に取ってみる。紙には黒のボールペンで「お父さんと飲みに行ってくる。 戸締りよろ」と母の字で書かれてある。文面を見た獣の口から、自然とため息が漏れてきた。我が家の父と母はいい年齢だというのに仲が良い。特に休日になれば、飲みにいくといって午前帰りや昼帰りがしょっちゅうだ。恐らく今日は高確率で帰ってこない。
「お父さんと飲みにいったんだ……というか少しは子供の様子くらい見てよ」
よく見ると、紙きれの置いてあった隣には千円札が数枚、無表情な顔でコチラを見ていた。母達は飲みに行く時は決まって獣に自炊を要求していく。この金額は「自分のご飯は自分で作れ」という意味を持っている。こんな母達の行動にはすっかり慣れた獣であったが、どういうワケか今日は酷く気が重かった。
「全く、行く前に起こし来てくれるとかさ、一声掛けてくれても良かったのに……」
「うにゃあ」
ふと、胸に抱いていたミケが小さく鳴いた。獣はその泣き声に気づくと、顔を下に向けて愛猫の顔をジッと見た。
うるんだ眼で見上げてくる小さな顔は、なぜか獣の心の奥を締め付けるように思えた。そういえば昨日は、結局夕ごはんあげたキリだったかも。
(そっか……ミケも寂しかったのかな?)
「なんか、二人きりだね。ミケ」
「にゃあん♪」
獣がミケの背中を撫でてあげると、ミケは嬉しそうな鳴き声を上げた。心なしか首に回された前足が締まった気がする。
「さて……どうしよう?」
獣がそう呟いた時、腹からゴロゴロと音が響いてくるのが分かった。別に気持ち悪いわけでもトイレに行きたいわけでもなく、体が食べ物を要求する音だ。
「とりあえずご飯にしよっか?」
「にゃ!」
ミケの嬉しそうな反応に満足した獣は、早速、材料の確認をしに冷蔵庫へと足を向けた。
ミケの首に巻いてある首輪の鈴が、チリンと小さく音を奏でた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「起きんか!ジュウッ!!!」
「あれぇ?」
獣は目を覚まして驚いた。
夢だと思っていた人の姿をしたミケが目の前にいるではないか。チョコレート色のドレスに所々に宝石の装飾、点々とパーマの掛った茶色の髪に可愛いらしい顔……は目を吊り上がらせ、明らかに怒りの表情を表している。
当の自分といえば、前の時と同じパジャマ姿にあの豪華なベッドに包まっていた。
その上からミケに馬乗りにされているが。
「え、これ、え、あれって夢じゃなかったの?」
「夢なわけないじゃろう。ジュウ。どれ、確認してにゃろうか?」
そう言うと苛立った様子でミケは獣の頬をむんずと掴み、グニグニと千切るかのように抓ってきた。その痛みが獣を現実に引き戻す。しかし目の前の景色はそのままだった。
「どうじゃ?これでもまだ夢ですにゃんていうんじゃにゃかろうな~?」
ギリギリと力を加えてくるミケの指が、今は獣を食い千切ろうとしていた。
「ひ、ひがいまふミヘさ、まぁ」
そう言うとミケは止めとばかりに、獣の頬を力を入れたままバチンと顔から離した。余りの痛さに獣の右目から涙が出てきた。
思えば前の時、ミケのボディガードだという二人の大男に放り投げられていたのを思い出した。あの痛みを味わってどうして夢だと思えてたのか今更疑問が沸く。
「ジュウ、妾は怒ってるにゃ!」
ミケは獣の肩に手を当て、自分の体重を掛けていく。
「昨日、妾の気持ちをあんなに伝えたというのに、お前は、お前は~」
「昨日?」
自分の上でふるふると怒りに震えるミケに怖がりつつ、獣は昨夜の事を必死で思い出した。昨日は夜中にミケと一緒に起き、そこで両親が飲みに行っていないことを知った。その後、お腹が減っていたのでご飯を作り、ミケと二人で食事をした。
「ミケ、もしかして昨日の食事が不満だったの!?」
「そう、いつも妾は態度で示しておろうが!!鶏肉にゃらば胸肉よりもモモ肉がいいと!!もし胸肉を使うのにゃらばもう少し味付けをじゃな……違うにゃ!同じ様な事を言わせるんじゃないにゃ!」
大声を出したミケは獣にさらに体重を掛けてきた。
「ジュウ、その後じゃ!!食事が済んだ後、お前はどうしたのんじゃ!?」
「え、その後って……」
ミケの迫力に戸惑いつつ、獣は昨晩の事を再度、思い出す。
「ご飯食べ終わった後は、片付けをして、」
「して?」
「それで、お風呂に入り、」
「お風呂に入ったにゃ。で?」
「新しいパジャマに着替えて部屋でゲームを……」
「にょれで?」
「……そのまま寝ちゃった?」
「フン!!」
「ごめんないさいッ!鎖骨グリグリしないで!!折れる!折れるって!!」
自分の両肩に壊れそうな重圧と痛みが走り、獣は思わず泣き声に似た悲鳴を上げた。無表情で見てくるミケがさらに恐怖を駆り立てた。自分の腕が千切られるかと思うくらいの痛みを両肩に残し、獣が垂れてきた目でミケを見上げる。
「ホント、ごめんなさい……」
「傷ついたにゃ。妾はホントに傷ついたにゃ。せっかく勇気を振り絞ったというにょに、昨日今日でこんにゃ仕打ちが待っているとはのぉ」
「ぼ、僕はお母さんたちがいないから、朝までゲームでもしようかと」
「あ゛あ゛ん?」
「ご、ごめんなさい」
ベッドに寝ながら謝る獣の姿はいまいち説得力に乏しいが、ミケの凄みに押されて尚も半泣き状態だ。そんな獣を見ながらミケは、「フフフフ……」と不気味な笑いを出すと、
「やはりジュウは飼い主としての自覚が足りんようじゃ。どうやら一日だけではジュウの態度を直せんようにゃのぉ~コレ!例のモノを!!」
ミケが部屋の扉に向かって叫ぶと、もはやお決まりとでもなった二人の大男、ペディ&チャムがのしのしと入って来た。その手にはあの時と同じ、赤い首輪が握られてある。
「これからは定期的にこちらの世界に連れてきて、妾が飼い主になってやるにゃ!」
「ええ!」
「そうじゃの、ジュウの世界でいう休みの日なら問題ないじゃろ。優しいご主人さまに感謝するにゃよ、ジュウ」
ミケはスッと差し出された首輪を受け取り、驚く獣の首にゆっくりと手を這わせていった。繋いだ時のミケの手の感触が首に伝わり、獣の顔が熱くなってきた。
「?ニュフフ、そんな顔して嬉しいにょか、ジュウ?」
そんな獣の様子に意地悪そうに笑うミケだったが、その顔は凄く、嬉しそうに映った。
獣の首に、懐かしい圧迫感が再び戻ってきた。真ん中についてある鈴が小さく、揺れて音を立てた。
「ニュフフ、これでよしっと」
「うう……また巻かれた……」
「フフフ、覚悟するにゃ、ジュウ。では早速じゃな」
ミケは獣に首輪をつけ終えると、伸しかかっていた体を離し、獣の腕を両手でつかんだ。そしてえいっと引っ張って獣の体を勢いよく起こしたのだった。
「『爪切り』しろじゃ!!」
頬を僅かに赤く染めたミケが命令すると同時、獣の首についてある鈴と、ミケの手首についてある鈴が同時に鳴った。
どうも!ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
猫が好きというところから起こして書かせてもらった作品ですが、
まあ、かなり読みづらい所もあったかとは思いますm(_ _)m
今後の参考のためにも、感想が頂ければありがたい次第です。
ではでは