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悪役令嬢が断罪されそうだったので観察していたら、国家レベルの陰謀だった ― 二つの婚約破棄  作者: 智信
プロローグ

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第01話 断罪

 その夜、エーヴェンガルド王立学園の大広間は光に満ちていた。


 天井から吊るされた無数の灯りが、磨き抜かれた大理石の床に反射する。

 壁際には花が飾られ、甘い香りが漂い、どこかで弦楽器の音色が響いている。

 卒業記念パーティ。


 その壇上で、アルベルト・クラウゼン・エーヴェンガルド王太子殿下が立ち上がった。


 堂々とした佇まい。

 王太子として、この場にふさわしい威厳を纏っていた。


「本日は卒業記念の席にお集まりいただき、感謝する」


 広間が静まる。

 王太子の声が、大理石の壁に反響した。


「この場を借りて、一つ発表がある」


 間を置く。

 視線が壇上に集中した。


「教会の認定により、リンデン子爵家のエミリア・リンデンが聖女の転生者であると確認されたことは、皆存じているであろう。そこで——余は、エミリアを新たな婚約者に迎えることとした」


 広間がざわめいた。


 侯爵家の令嬢——これまでの王太子の婚約者——は、壇上の端で微動だにしなかった。

 表情は崩れない。

 侯爵家の娘として、完璧な所作を最後まで保っていた。


---


 ざわめきが収まらないうちに、一人の青年が壇上に進み出た。


 レオン・フェルス・シュタイナー。

 伯爵家の次期当主にして、王太子の側近。


「アルベルト殿下。恐れながら、進言がございます」


 王太子が頷く。


「申せ」


「このめでたい席にふさわしくない人物が、おります」


 広間が、しん、と静まった。

 ひそひそ声すら消えた。


 レオンの視線が、広間の隅に向けられた。


「クレア・ブレンハルト」


 名前が呼ばれた。


 誰もが視線をそちらに向けた。

 広間の隅で、一人だけ立っていた令嬢に。


---


 令嬢が前に出た。

 クレア・ブレンハルト。

 北方辺境伯の長女——そして、レオン・フェルス・シュタイナーの婚約者。


 背筋は伸びたままだった。

 表情は変わらない。

 侍女が、壁沿いの控えの位置から一歩遅れてついてくる。


 レオンが口を開いた。


「クレア・ブレンハルト。貴女はこの学園において、ふさわしくない行いをしたと報告を受けている」


 ——ああ、やはり。


 その二語が、誰の口からともなく広がった。

 声には出ない。

 だが表情が、視線が、わずかな身じろぎが、全員の共通認識を物語っていた。


 やはり、あの令嬢は——


 クレアが口を開いた。


「私は……何のことか、分かりません」


 しかし、レオンにとってクレアの言葉は意味を持たなかった。


「——よって」


 レオンは続けた。


「クレア・ブレンハルトとの婚約を、破棄する」

「冒険者はあきらめない」シリーズの第4弾作品になります。

今作は悪役令嬢という設定を使い、上質なミステリー作品にチャレンジしてみました。

初日のみ5話連続、2日目に4話連続掲載と、怒涛の掲載となり、2話目は14時に公開予定となっています。

読み応えのある作品になったと自負しておりますので、本作品もどうぞよろしくお願いします。


また、もしも「本作の物語の展開が気になる」…という方は、

「冒険者はあきらめない」シリーズの第1〜3弾の作品をチェックしてみてはいかがでしょうか?


最後に、今後の参考になりますので、面白い・続きが気になると思っていただけたら、

評価・ブックマークで応援いただけると嬉しいです。

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