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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第二章 おっぱいがいっぱい?

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15 シーナの誤算

このエピソードはほのぼののタグを外したくなる残念な内容です。ですが、次回必ずほのぼのに戻ります!

「防御の魔法陣を発動させているから、アルとノンはここから動かないでね」


 シーナの言葉に反応して僕の足元で魔法陣が薄っすらと光った。


「魔獣や死霊系魔獣としか対戦したことがないから、人間を殺さないように戦うのは難しいわ。タイミングを見計らって仕掛けるね。私の魔法が発動したらトニーの精霊達を蹴散らして!」


「了解!」


 僕達は目を凝らしてトニーと老人の戦闘に介入できるチャンスを窺った。

 トニーは火炎魔法と風魔法を駆使し多方向から炎の刃を老人に放つが、老人は腰の曲がった老体を信じられないほどの速さで傾けてかわしていた。


 老人の雷撃を炎の壁で防ぐトニーが炎の刃で反撃すると、二人の立ち位置が入れ変わり、シーナはなかなか介入するタイミングを掴めずにいた。


 それでもシーナは老人の攻撃パターンを掴んだようで、左手がリズムを刻むように揺れた。


 シーナの右手が伸びた時、老人はトニーの炎の刃を避けて上半身を老人とは思えない反り返りをした。老人の足元に氷柱が滑り込み、老人が尻もちをつくタイミングでアップウの呪文を唱えた。


 シーナの介入を深夜の打ち合わせで知っていたのかトニーは突如出現した氷柱に、オオ!と目を見開くと一歩下がった。

 そのタイミングでトニーの股間に集合していた精霊達が僕のアップウの呪文に従った。


 トニーを助けるつもりで迷惑をかけていた精霊達に役に立ってもらおう!と考えた僕は、拡散する精霊達で老人を驚かす事にした。


 白抜き状態で輝いていたトニーの股間から精霊達が離れると、精霊達はそれぞれの色に戻った。股間から飛び出して大暴れするイメージは、鼻をプラプラさせた象だったので、色とりどりの精霊達はサイケデリックな色彩の象の形になった。


 ピカピカに光る精霊達の象はドローンショーのように滑らかに広がった。

 こんなにたくさんの精霊達がトニーの股間に集合していたのか!?


 いや、違うな。

 いつも僕の掌に集まっている精霊達も象に参加しているのか僕の掌に残る光の数が少なかった。


 僕の腕の中のノンは、イケー!と前足を伸ばして精霊達を応援している。


 尻もちをついた老人に象を模った精霊達が覆いかぶさると、物理的重さはないはずなのに老人は苦しそうに顔を歪めた。


 トニーは魔力の流れを確かめたのか肩を左右に揺さぶった。


『見かけに騙さるな!精霊なんかぶっ飛ばせよ!』


 老人に向かって精霊言語で叫ぶ妖精は象の形の精霊達から離れた上空に避難している。


「自分だけ精霊達の圧がないところで檄を飛ばしているよ」


 僕の言葉にシーナとノンは頷いた。


 老人は妖精の言葉に励まされたのか上半身を起こすと、精霊達の圧を押しのけるように両手を振り回した。

 精霊達は老人の手を避けるように後退し、象の形が崩れた。


「ここに魔法攻撃を撃ちこんでも大丈夫か!」


 炎の刃を出せば精霊達を攻撃してしまう事を心配したトニーはシーナに確認を取った。


「大丈夫だ!」


 シーナの言葉が終わる前に、立ち上がろうとする老人に向かって炎の刃が放たれた。精霊達は炎の刃の軌道を邪魔することなくすり抜け、精霊達の密集地帯を通り抜けた炎の刃は加速し火力も増した。


 これはいける!と思った瞬間、老人右掌からバチバチと青い稲光が発生し、大槍の形になって炎の刃に激突した。


 爆音と炎の欠片とプラズマがシーナの守りの結界に当たったのか僕達の周りの空気が揺れた。


 猛烈な光が収まると真っ白い亜空間に精霊達の姿はなく、腰を落として構えるトニーと上半身を起こした老人とその上に浮かぶ妖精しかいなかった。


「……精霊達は無事なのか?」


 僕の言葉に答えるようにシーナの結界に集合していた精霊達が二回点滅した。

 たくさんいすぎて眩しいぞ。


『ちょっと!あんた達!あの、小太りの男をどこにやったの!』


 シーナが老人に向かって精霊言語で叫んだ声が脳内に響いた。

 

 老人が咄嗟に出した稲光を纏った大槍の形に見覚えがあった。僕達が水泥棒だと間違われて男達に攻撃された時に一階層の天井付近でトニーに爆発させられた大槍に似ている。


 僕の胸がゾワっとした。


 結局、男達の誤解が解けて歓迎会で猪の鳴き真似をシーナと一緒にしていたけど……。鏡餅の形おっぱいの男はいたけれど、笹かまぼこの形のおっぱいの男は……いなかった。


 魔術具オタクで狩りに参加しなさそうな老人がトニーと互角に戦えるほどの攻撃魔法を使いこなし、魔法の大槍を訓練する姿なんて想像つかない。

 

 どうして老人はこんなに戦えるんだ!?


『アルフレッドを神々の御使い様だと認めない男を処分しただけだ!』


 満場一致で住民達に、僕が神々の御使いだ、と認められたのではなく、意見の相違がある住民達を老人と妖精が処分していたのか!


 ……処分って、監禁?……この状況でそんなわけないよな。


『禁忌の古代魔法を使用しているな!*****魔石を取り出し、その魔力を取り込んだら魔法技術をそっくり継承できる!』


『何を怒っているんだい?禁忌の古代魔法?笑っちゃうね。世界の(ことわり)から何も反していない!』


 妖精の発言にシーナは眉間の皺を深くした。


 なんだかわかんないけれど、神々の規則に反していないけれど、倫理的にどうかな?という事を妖精と老人はしたのだろう。


『私は飛んだ誤算をしていたようね。こんな糞みたいな手段で魔力を集めているなんて、私の子達ではとても予見できないわ』


 数多ある太陽柱の映像の中から、有り得ない、とシーナを慕う精霊達が除外した行動を妖精と老人はしたようだ。


「……爺さんの魔力の底が見えなかったのは、処分と称して住民達を生きたまま体内に魔石を精製させ抜き取っていたからだというのか!」

「はっきり口にするな!トニー!」


 思いついたことをそのまま口にしたトニーにシーナが叱責した。

 あまりに残酷な方法を僕のためにぼかして説明していたのにトニーが暴露してしまった。


「いや、なんとなく想像できていたよ。あの集落がなんとなく不気味だった理由も想像できたよ。住民達にお年寄りがいなかったのは、働けなくなる前に……処分されていたんだね」


 老人と妖精を囲うように拡散した精霊達が、正解、と二回点滅した。


 全階層の住民達が縄梯子で昇る僕に向かってひれ伏していた時、煙の上がっていた建物があったような……。

 あまりのマッドぶりにこれ以上想像したくない。


 老人はシーナに向かって何やら喚いている。

 きっと言い訳をしているのだろう。


「ああ、通訳はするよ。私は自分の意見だけを押し通すつもりはない」


 シーナが、仕方ないな、と言うと、老人の話す言葉が発音はそのままなのに頭の中で相応しい言葉に変換された。


『為政者という者は誰しも残酷な側面を持つ!綺麗事では済まないのが社会の(ことわり)だ!』


「そんなの詭弁だ!」


 僕が即答するとシーナとノンが頷いた。


『アルフレッドだって、この集落に残らなければ王になる男の子だ。正義という名のもとに大勢の人間を殺すんだよ!ここに残ればそんな汚いことは私が全部する!アルフレッドは綺麗な神々の御使いとしてこの集落で美味しいものをたくさん食べて幸せに暮らせばいいんだ!』


 ちょっと待った!

 僕はどこまで食いしん坊だと思われているんだ!


「美味しい物は好きだけど、素朴な食事でも親しい人と仲良く食べるのが好きなんだ。働けなくなったら残酷に殺される、とわかっていながら、ニコニコ一緒にご飯を食べるなんて絶対に嫌だよ!」


 遠くにいるトニーが頷くのが見えた。

 老人はただ項垂れている。


 そうか。食事の時に老人が工房に引き籠っていたのは住人達と親しくなってしまうと、殺処分の時に情が湧くからなのか。


 それはそれで、胸糞が悪い。


『合理的に行動しなければ、集落を維持することはできない。生まれてくる全員を養うことはできない』


「だから、引っ越せ、と言っているだろう!そもそも、魔術具の建物だって壊れるのだから、引っ越しを早めればいい。病死する者や、外の世界に馴染めない者もいるだろうが、人間らしく暮らしていくというのは、そんなもんよ」

 

『アルフレッドの血脈が入れば、まだ魔術具の建物は維持できる!』


 シーナの言葉に、妖精がかみついた。


「そんなの、ほんの数年延長になるだけだよ。アルが魔力の豊富な子どもなのは、血脈もあるけれど、本人の努力が大きいのよ」


 シーナの言葉に僕は頷いた。毎日、魔力循環の訓練をしているから、日々、魔力が増えている自覚がある。実際、村に立ち寄って魔力奉納をすると、旅を始めた頃よりポイントが一ケタ増えた。


「俺を殺してアルを集落に残すつもりだったんだろうけど、シーナをどうするつもりだったんだ?」


 トニーの疑問に回答に詰まった老人は妖精を仰ぎ見た。


『シーナを処分したら、緑の族長がここに来てしまうから、どっかに放逐する……』


「どっかって、どこよ!」


 妖精のテキトーな答えにシーナが突っ込んだ。


『……亜空間に放置するつもりでした』


「そうしたら、どんな未来があると思う?」


『……何も見えません』


 妖精が太陽柱で未来の映像が見えないという事は……。


「もしかして、妖精が死ぬから、未来が見えないのかな?」


 僕の発言に妖精と老人が僕の方に駆け寄ってきた。

 

 こっち来るなよ!


 ノンが僕の腕から飛び出してシーナの結界の端で仁王立ちをした。


 あんな化け物みたいな動きをする老人にノンが勝てるとは思えないが、たぶんシーナの結界に阻まれて老人と妖精は侵入できないだろう。


「妖精が死んだら、妖精と契約しているお爺さんはどうなっちゃうんだろうね?」


 予想はできたけどシーナに尋ねた。

 僕は戦えないけれど、口撃ならできる。


「不老不死の効能がなくなるから、まあ、上手くいけば老衰でラクに死ねるけれど、たいがいは血管とか筋肉が今までのように動かなくて、激痛の後に死を迎えるね」


 シーナの返答に老人は足を止め、力が抜けたように跪いた。


 そりゃあそうだよ。もともとお爺さんだったのだから玉手箱を空けた浦島太郎より酷いことになりそうだ。


『妖精は死んだりしない!』


 シーナに向かって飛んできた妖精はシーナの守りの結界に阻まれて跳ね返った。


「妖精は死なないけれど、上位の上級精霊様だったら妖精をバラバラにして精霊に戻し、さらにバラバラにして微生物に捕食させるくらいできちゃうわよ」


 シーナの口撃に妖精はフラフラと墜落した。


『やめてくれ!』


 老人の悲鳴が脳内に響き、老人の方を見ると、いつの間にか守りの結界を抜け出していたノンが老人の腰を蹴り飛ばし、腰ひもについていた箱状の魔術具を破壊していた。


 穴の開いた魔術具からパラパラと小さい魔石が零れ落ちた。


 あれは……。


「人間以外の魔石も交ざっている」


 僕の考えをシーナが否定した。


「いろいろなパターンで勝ち筋を予測していたけれど、ノンがあれを破壊するなんて、予想していなかった」


 トニーの言葉にシーナは深く頷いた。

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