9 おっぱいがバインバイン
マーサに続いて僕達が順番に縄梯子に乗ると第五層まで一気に上昇した。
僕の周りに集まった精霊達が光を放っているので、僕が各階層を通過すると塔の側に集まっている住民達が僕を見てひれ伏した。
二階層と三階層が畑と果樹園、四階層が各種工房、五階層に大浴場と商業施設があるらしい。
各階層がどうなっているのか気になっていたが、僕が上昇してくると悲鳴を上げたりすすり泣きをしたりしながらひれ伏す住民達に気をとられてしまい、奥まで見ることができなくて残念だった。
縄梯子が次の階層に上ると、上に乗っているトニーとノンが天井に吸い込まれていくように見えるのも面白くてそっちに気を取られてしまった。
五階層に到着する前に縄梯子の速度が遅くなった。先頭のマーサや老人が降りるために遅くなったのだろう。
トニーが四階層の天井に吸い込まれると二本足で縄梯子に立つノンが、行ってくるね、と右前足を振りジャンプして天井に吸い込まれた。
トニーが降りたのか、一旦、縄梯子が止まり、僕は真下にいるシーナを覗き込んだ。
「この縄梯子は便利なようで、不便だね」
僕が天井に吸い込まれないので四階層の住人達はひれ伏したままだ。
四階層は職人街だからプレハブ小屋のような四角い建物が立ち並び、煙突から煙が出ている建物もあるのにみんながここに集まっていても大丈夫なのだろうか?
「必要なものを後からどんどん付け足していくだけだから、先に作った魔術具は不便でも、改良しようとする発想がなかったんだろうね」
拡張を続ける事を優先し、出来上がったら先に作ったところの修理に追われて、改良する余裕がなかったのだろう。
そんな話をしていたら縄梯子が動き出し僕は天井に吸い込まれた。
五階層で僕を待ち受けていた住人達は光り輝く僕を見て、歓喜の悲鳴を上げてひれ伏した。だけど、他の階層のように全員じゃなかった。
先に五階層に降り立っていたマーサや老人と妖精、両側を巨乳美女に挟まれたトニーは立っていた。
トニーの両脇の巨乳美女はトニーに身を寄せるように寄りかかっていたので、ビキニのお胸はトニーの肘の上に載っているように見える。
わぁお!
上級精霊様の亜空間の太陽柱の映像にあった未来の映像にそっくりだ!
違っている点は、トニーの腕の中にノンがちょこんと収まっている事だ。
僕の選択で未来が変わったんだ!
何とも羨ましい状況になっているトニーは巨乳美女のおっぱいが肘の上に載っている事に喜ぶより、停止した縄梯子の位置が微妙で、シーナの顔が半分だけ床から飛び出している状況に笑いを堪えている。
「妖精!僕が降りれるように住民たちに場所を空けて、とお願いして!」
ひれ伏している住人達の手が邪魔で僕が降りる場所がない。
僕が降りないと縄梯子が動かないから、シーナは鼻から下が床に埋まったまま、ひれ伏す人々の手しか見えない状態だ。
『神々の御使い様がお通りになる道を空けよ!』
脳内に直接響く妖精の一声で人々はひれ伏したまま後退った。
縄梯子から降りるスペースはできたが、まだトニーの側に行くスペースがない。
とりあえず縄梯子から飛び降りると、シーナが五階層に到着した。
シーナはトニーの状況を目にして、プププと笑った。
巨乳美女のおっぱいの存在に気付いたトニーは腕を寄せておっぱいから逃れようとノンをギュっと抱きしめて困惑した表情になっていた。
それでも、ビキニから溢れているおっぱいはトニーの腕に触れていた。
『神々の御使い様とその従者をご歓待せよ!』
妖精の呼びかけに二人の巨乳美女と美幼女二人が面を上げて立ち上がった。
あの四人は僕とシーナのエスコート役なのか!
シーナのエスコート役まで巨乳美女だなんて、いったいどうなっているんだ?
シーナが女性に見えていなかったのか!!
立ち上がった四人がひれ伏している住民たちに声をかけると、住人達は少しだけ頭を上げてキョロキョロと辺りを見回し、自分達が僕とシーナの行く先をふさいでいることに気付いてお尻を振りながら場所を空けた。
僕を迎えに来た美幼女二人は精霊達の光が届かないところに留まったので、僕はトニーのように両脇にぴったりと挟まれることはなかった。
シーナは両側から腕の上に大きなおっぱいを押し付けられると、腕の上に載るおっぱいの重みを楽しんでいるかのように肩を揺らしてバインバインとおっぱいを弾ませた。
エロ親爺のセクハラ行為を目の当たりにしている気分がするが、シーナはスレンダーな美女だ。
この状態は百合なのか!
両手を床につけたままちょこっとだけ顔を上げて様子を窺っている住人達にシーナが似非占い師に見えているのなら、完全にただのセクハラ親爺に見えているだろう。
……脳が混乱してしまう。
脳裏に住民達から見た僕達の姿の映像が浮かんだ。
光り輝く僕の威光に圧倒されて少し離れたところに立つ顔面蒼白な美幼女二人。
僕の右後ろには、肘に両側から巨乳に押しつけられて困惑した表情のトニーを見上げるつぶらな瞳のノン。
僕の左後ろには、肘の上に載る巨乳の重さを楽しむような満面の笑みを浮かべいてもイケメンなシーナ。
住民たちは、堅物な護衛と世慣れた魔術師に守られている神々の御使い、という解釈をしていそうだな。
『神々の御使い様を大浴場にご案内しなさい!』
妖精の指示にマーサは頷くと、僕達を五階層の中央の噴水の方角に案内した。
噴水の奥にあった建物は体育館のような建物が二つくっついており、エントランスは共通だった。
男湯と女湯かな?
マーサが何か言っているが、僕達にはさっぱりわからなかった。
一人理解できているはずのシーナも、わからない、と肩を竦めた。
シーナが住民たちの言葉を理解できると知られるとシーナに頼みごとが集中するから、それを嫌ったのだろう。
シーナはトニーの横の巨乳美女二人の手を取ると自分の方に引っ張った。
巨乳美女二人は空いている手でトニーを指さし、接待する相手が違う、と言うかのように首を横に振った。
シーナがニヤリと笑うと、変装の魔法が解けたのか、女性達は大きなおっぱいを揺らして笑った。
顔面蒼白だった美幼女二人もバラ色の頬を上げて、アハハ、と笑った。
トニーは巨乳美女二人の背中を押してシーナの方に寄せると、マーサは頷いた。
僕は美幼女二人に微笑みかけると、左手をシーナの方に流し、シーナの元に行くように勧めた。
美幼女二人はマーサが頷くのを確認してからシーナの方に行った。
マーサは身振り手振りで男湯と女湯を指さして伝えると、受付の方に行き、パレオと下着を持ってきた。
一生懸命説明するマーサにシーナは身振り手振りでコミュニケーションを取ると、僕達に説明した。
「脱衣所の横に体を清める場所があるからそこで体を洗ってから大浴場に入り、五色の湯を楽しめ、って言っているわ。大浴場の奥に扉があるから水着とパレオを身に着けて奥の大浴場を楽しめ、って言っているわ。どうやら、一番奥のお風呂は男女混浴みたいね」
シーナの説明に、僕達が頷くと、マーサはホッとした表情になった。
こうして、シーナは巨乳美女四人と幼女二人を引き連れて女湯に行き、僕とトニーとノンは男湯に向かった。
人生初の混浴に心が弾む!
脱衣所は日本の大型浴場のように真ん中の棚に籠が置いてあり、脱いだ服を入れておくのだと見てわかった。
「騎士団の大浴場もこんな感じだったので籠の使い方はわかるぞ」
トニーは自分が理解できる状況に喜んだ。
「脱衣所の横の体を清める場所って、これかな?」
二つある扉の一つを空けると湯が湧き出ている樽の横に手桶と石鹼が置いてあった。
「衛生的な設計だな」
トニーの言葉に僕は頷いた。
前世で病弱だった僕は、公衆浴場を避けていた。
公衆浴場が不衛生、と考えていたのではなく、不特定多数の人が長くとどまる場所は感染症をもらう危険性が高いから、お大浴場でゆっくりできない寂しさを味わいたくなかったのだ。
僕が元気な時に両親は部屋付き露天風呂がある宿を選んで宿泊し、真夜中の誰もいない時間帯に大浴場を堪能したんだったなぁ。
転生した僕はすっかり健康体だから、他の人がいてもかまわない。でも、水が湧き出て大浴場が再開したばかりだから誰もいない。
僕とトニーとノンしかいない一番風呂の大浴場は贅沢だ。
「ノンも大浴場に入ってもいいのかな?」
僕の疑問にノンは首を傾げた。
「マーサが止めなかったんだから、体を洗えば大丈夫だろう」
「ノン。石鹸とお湯で体を洗っても大丈夫?」
ノンは即座に頷いた。
お湯で薄めた石鹸水で洗ってあげよう!
服を脱いだ僕はトニーの背中を見て、おお!と驚いた。
トニーの背中には炎を吐く細長い竜の入れ墨があったのだ。
「あれ?見たことがなかったか?腹には空飛ぶ飛竜を描いてあるぞ」
トニーが手に持っていた服を除けると、へその下辺りから飛び立とうと羽ばたく太っちょの竜が描かれていた。
「竜の鱗に魔法陣を組み込んであるから、そこに意識して魔力を流し込むことで魔法の発動速度を上げている。欠点は大きく体形が変わると魔法が発動しなくなることかな」
太れない、とトニーは笑った。
多少の皮膚の伸び縮みには対応できるけれど太りすぎたら無理なのか。
僕達は素っ裸になって洗い場で体を洗うとノンも抵抗なく体を洗わせてくれた。
モフモフがぺったんこになるとかなり小さく見える。
大浴場の扉を開けると、そこは昭和感満載の古い公衆浴場の雰囲気の全面タイル張りの大浴場だった。
富士山の壁画があれば完璧だったのに。
五つの大きな浴槽は黄緑、茶色、オレンジ色、水色、乳白色、と五色の湯だった。
前世で地元の古いスーパー銭湯が、お風呂のデパート五色風呂!との謳い文句でテレビコマーシャルがあった。
いつも複数の車が止まっていて、車が少ない時間帯は休業時間帯しかなかったから、僕は行ったことがなかったんだよなぁ。
異世界に転生して、五色風呂を楽しめるなんて、サイコーだ!
「どうかしたのか?」
大浴場を見て涙ぐむ僕を心配したトニーが声をかけた。
「こんなお風呂に入ってみるのが夢だったんだよねぇ」
僕がお風呂に感動しているのだとわかったトニーとノンは安堵した表情で頷いた。
「天国みたいな風呂だな!」
湯加減を確かめるためにオレンジ色の湯手を入れたトニーはうんうん、と頷いた。
僕達は湯に浸かると、いい湯だなぁ、と一息ついた。
……混浴まで辿り着きませんでした。




