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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第二章 おっぱいがいっぱい?

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4 つぶらな瞳とおっぱい

「移動手段が増えただけで、現状は変わっちゃいないよ」


 シーナは驚愕の事実に狼狽えたる僕とトニーに、呑気な口調で言った。


「ラウンドール王国の内情はラウンドール王国王太子が凱旋するまで、アルのヘンタイの伯父が仕切っている」


 ショタのヘンタイサディストの伯父に捕まるのは嫌だ。


「最短でラウンドール王国の問題を解決する方法は、アルがトニーを従えて停戦協定ラインで小競り合いが起こる現場に転移すれば、敵国をほぼほぼ無条件降伏させることができる。だが、そうすると、アルをラウンドール王国次期国王へと推す勢力が爆誕するよ」


 トニーがシャオ王国から王子(僕)を護衛したまま転移魔法で最前線に立てば、影武者ではなく活火山のトニー本人だと誇示できる。

 その場合は僕がトニーを率いて最前線に赴いたことになり、終戦を確実にした事が僕の功績になってしまうのか!


 そんなの嫌だ、と僕は首を左右に振った。


「ああ。アルがラウンドール王国で確実に生きのこるためには性格がいい方の伯父ラウンドール王太子殿下を味方につけることが必須だ。助力しに行って美味しいところを掻っ攫うような事態に陥るのは避けた方がいい」


 僕とトニーは頷いた。


「シャオ王国側は現在進行形でアルの父の王太子が策を講じている。アルがラウンドール王国に一足飛びで入国してしまうと、ラウンドール王国との親権の交渉に東の魔女がしゃしゃり出てきて面倒なことになる」


「……本物の精霊使いか。厄介だな」


「つまり、当分現状維持でこのまま旅を続ける方がいいんだね」


「そうなんだ。のんびり旅を続けながらアルの呪文の精度を上げる練習をする方がいいと思うよ」


 転移魔法で移動できる場所が増えても、現状が変わっていないなら、生きのこる確率が高い行動をとるしかない。


「なるほどなぁ。いざとなったらどこにでも帰れる選択肢ができただけなんだな」


「納得したなら、野営の準備に取り掛かりましょう」


 テントを設営してテーブルや椅子を出し、夕食の準備をした。


 夕食のメニューは鍋に入れて持ち帰った屋台のテールスープとフワフワパンと野草のお浸し。


 昼食に食べ過ぎていた僕とシーナは、少なめにテールスープをよそった。


「初めて食べた時はとても美味しいと思ったのに……。うーん。なんて言ったらいいのかな。当時の味のままなのに、こんなものか、というか、まあ、マズくないな、という感想になってしまう」


「お肉はホロホロで牛骨の出汁も効いている。トニーの好物の玉葱も入っているけれど、牛骨の臭みを消すほど大量に入っていない。何より、スパイスが少ない。臭み消しに生姜と、旨味の補完に茸の出汁があれば、だいぶ味がよくなりそうだよ」


 トニーは玉葱が大好きで、たっぷり入れると食が進む。

 僕は食材保存庫から玉葱と生姜と茸を取り出すと、トニーは食卓に簡易コンロを出した。


「美食家のアルに付き合っているからトニーの舌が贅沢になっただけだ」


 シーナはそう呟きながらも自分のスープを鍋に戻した。

 どうせなら美味しくした方がいいじゃないか。


 みじん切りにした玉葱、生姜、茸を加えてひと煮たちさせるとスープの香りがずっと良くなった。

 胡椒は高級品なのでほんの少し加えるだけにしておく。


「「「格段に美味しくなった!」」」


 僕達は出来栄えに満足すると精霊達は嬉しそうに淡い光を点滅させた。


「このまま、人里には最低限に立ち寄るだけにして、森の聖地を移動しながら旅を続ける方が快適な気がするよ」


 トニーのぼやきに精霊達が、そうしなよ、と言うかのように二回点滅した。


 僕も正直な気持ち、その土地土地の食材が手に入れば、自炊した方が美味しいものにありつけると思う。

 この世界では食事は生命を維持するために食べるという意味合いが大きく、美味しくなるための工夫が今一つたりない。


「森が荒れている場所を避ける時だけ人里に下りるようにすれば、安全に旅ができると思うよ。それに魔獣に遭遇しても、アルの呪文を練習する機会になる」


 シーナの言葉にトニーは頷いた。


 トニーとシーナは地図を広げて旅の経路を確認し、大型魔獣に遭遇しそうな時は最初からトニーが対応し、野兎や鼬程度の魔獣ならシーナが範囲を指定した上で僕が呪文の練習をする事に決めた。


 夕食の片付けを終えるとすっかり日が暮れていたが、精霊達が集まるご神木の側はほんのりと明るく、深い森の奥だという恐怖心が湧くことはなかった。


 未婚の男女が同じテントで寝る事になるのに、気にならなかった。

 狭いテントの中で、トニーとシーナの間に挟まり川の字になって目を瞑ると守られている安堵感に包まれた僕は深い眠りに落ちた。




 それから僕達は街道や村に時折立ち寄るだけで野山を分け入って移動した。


 僕はアップウの呪文で下草を払う範囲もコントロールできるようになり、風魔法の精度が上がると、風魔法の攻撃魔法を学ぶことになった。


 丁度いいタイミングで見つけた真っ白な野兎に狙いを定めた。


 風魔法で鎌のような刃を作り野兎を仕留めるつもりだ。野兎は夕食のシチューになる予定だ。

 残酷なようだが、僕は生きのこるために魔法を上達させなくてはならないし、殺傷した命は美味しくいただく。生きていくための殺生だ。


 狙いを定めていた野兎が僕の殺気に気付いて振り返った。

 いまだ!と木陰に隠れているトニーとシーナが僕に目で訴えた。


 野兎は僕を警戒しながら伸し餅みたいに薄っぺらく身を伏せた。野兎の上に野兎を狙う猛禽類の影が見えた。


「アップウ!」


 僕が呪文を唱えると、スパンっと一陣の風が吹き、野兎を狙って急降下した鷲の首をはねていた。


「狙いと違ったが、よくやった!」


 トニーは僕が仕留めた鷲を逆さにして血抜きの作業を始めた。

 肉が堅い方を仕留めたか、とシーナは残念そうに小声で言った。


 うーん。舞茸みたいにお肉を柔らかくする茸があったらいいのにな。

 あるよ!と言うかのように一部の精霊たちが二回点滅をした。


「トニー。肉の始末を任せるよ。精霊達がお肉を柔らかくする茸が生えているところに案内してくれるそうだ」


「それはありがたい!アルはシーナについていくのか?それとも、解体を手伝うかい?」


 舞茸もどきの採取も気になるけれど、初めて自分が仕留めた獲物の解体を手伝いたい。


「茸はシーナに任せるよ!解体の手順を覚えて呪文でできるようになりたいんだ」


 精霊達を従わせるためには、精霊達にどうしてほしいかを正確にイメージできると失敗が少ない。

 さっきは野兎の首をはねるより、襲われた野兎を助ける事を咄嗟にイメージしてしまったのだ。


「了解!」


 シーナが精霊達に導かれて茸を取りに行く間に僕は鳥の解体手順を覚えた。


 シーナが満面の笑みで戻ると、僕は解体したお肉に刻んだ舞茸もどきと大蒜と生姜と醤油と水飴とお酒で造ったタレに浸した。


「これを焼肉にするのかい?」


 トニーは夕食を焼肉にしたいのか僕を誘導した。


「うーん。焼き鳥にするか、唐揚げにしようかと思っていたんだけど、焼肉もいいね。出発前に焼き肉のタレを作っておこう」


 玉ねぎをたっぷりすりおろした醤油ダレと大蒜を効かせた塩ダレと二種類作った。


 今夜の宿泊地はもう少し先を予定していたので、僕達は先を急いだ。


 シーナ曰く、この近辺は土地の魔力に偏りがあるから、原因になっている場所を避けるために早々に退避した方がいいらしい。


 僕とトニーも心当たりがあった。


 沢沿いを移動していた僕達は沢が小川に合流する地点で不審な魔術具を発見していた。

 水量が減少していなければ川底に沈んでいた魔術具を調べたトニーは取水の魔術具だと判断した。

 シーナが嫌そうに眉を顰めたので、僕達は事情を聞かずに小川から離れる判断をして山に入って狩りをしたのだ。


 この後は、街道に戻って小さな農村の片隅でテントを張らせてもらうことにしたのだ。


 猪の肉はまだたっぷりあるから焼肉にして村人たちにも振舞えば、余所者の僕達がテントを張っても村人たちは気分を害さないだろう。


 身体強化で跳びはねるように山を下る僕達に白い野兎が必死になってついてきた。


「なんだか、懐かれたみたいだな」

「餌付けしたからだろ」


 タレを作る時に食材箱から人参を一本あえて遠くに落としたのを、シーナは見逃していなかったのか。

 だって、真っ白な野兎って可愛いんだよ。


 僕が足を止めると野兎は僕達から三メートルぐらい離れたところで立ち止まった。


「ついてきたら、シチューにしちゃうから、森にお帰り」


 僕がシッシっと追い払おうとしたのに野兎はじっとぼくを見つめていた。


 イノチノオンジンカンシャエイエン、と繰り返す三つ目の宇宙人の玩具のセリフを思い出してしまうほど野兎はつぶらな瞳で僕を見ていた。


 連れて行きたいけれど、農村では野兎は害獣だ。


 このままついてきたら野兎はシチューにするしかない、と考えているとシーナが眉を顰めトニーは収納ポーチに手をかけて長剣を取り出した。


 野兎にトニーの魔法剣はオーバーキルだろう!と考えているとトニーは僕の真後ろに向かって抜刀した剣先を向けた。


 振り返ると、僕の背後に見知らぬ老人がいた。


「子どもを人質に取るつもりか!」


 シーナの言葉に呼応するかのようにトニーの剣先から炎が上がった。

 トニーの魔法剣は敵だけを燃やすから僕は動かなくても大丈夫だ。


「*******!*********!***********!!」


 僕の背後で老人は唾を飛ばしながら一言も単語が聞き取れない聞き慣れない発音で何か喚いた。

 僕の脳裏に映像が慣れ込んだ。


 空中に数珠つなぎのようになって浮かぶ建物。所々に塔のような建物があるが、とても浮かんでいる建物を支えられるとは思えない。


 人々は腰布一枚で空中にある畑で働いている。

 暮らしに余裕があるのかみんな小太りで、おっぱいが揺れている。


 ()っぱいがいっぱいだ!


 僕の掌に精霊達が集まり光り輝くと、脳内の映像が消えた。


「トニー!そこの爺さんをちょっと焦がしなさい!アルに精霊言語を送り付けた!」


 シーナの言葉が終わる前に僕の目の前で老人は炎に包まれた。



 



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