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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第96話 歪なりに、前へ


ヴァルハラの休憩スペース。


そこでは第二世代のワルキューレ達が、第一世代の背中を追うことすら出来なかった現実に沈んでいた。


武を極めんと己を叩き上げてきたミレイナも、

あそこまで何も出来ずラボが破壊された事実に打ちのめされていた。


ルキアはテロにより両親を失った時の記憶がフラッシュバックし、部屋の隅で自身の頭を抑えている。


そんな姉の肩を抱くノアもまた、大切な仲間を守れなかった悔しさに沈んでいた。



皆が、現実に打ちのめされていた。



その中でソフィアとフィレアが机を同時に叩く。



あまりにも同時に叩いたものだから、お互いが顔を見合わせてしまう。



「……貴女、フィレアって言ったわね。先にどうぞ。」



「……いや、なんか言いたいならそっちが先に言いなさいよ……ソフィア」


ソフィアは頷き、一呼吸置くと今なお俯くミレイナを見据えた。


「……ミレイナ、貴女トーナメントの時の力はどうしたの?


貴女のあの速度なら、あんな奴ら一瞬で片付けられたはずでしょう?」



ミレイナは顔を伏せ小さく呟く。



「……だって……くせに」


「……え?よく聞こえないんだけど?


もっと大きな声が出せるように貴女の大好きなナギサさんに教えて貰うべきなんじゃないかしら?」


ミレイナはその言葉を受け、机を思い切り叩き立ち上がる。


「ソフィアさんだって!!MV-10の性能をあの場でちゃんと引き出せていたなら!あんな奴ら!簡単に倒せたくせに!!」



目に涙をためプルプルと震えるミレイナを見て、ソフィアは言葉のトーンを落とす。


「……そう。


私も、貴女も……あの時力を出せていたら、もしかしたら戦況を打開出来たかも知れない。」



そこにフィレアが横槍を入れる。



「あの数だし、どうせ打開は無理じゃなかった?」



「……確かにあの物量、倒しきる事は無理でも、少なくともあんな無様な戦いはしなくて済んだはず」



ソフィアはフィレアの言葉に瞬時に返す。



「………あの時の私達に足りなかったもの、皆は分かっているの?」


ソフィアの問いに、うなだれたままのルキアが小さく零す。



「……的確で……迅速な、連携……」


フィレアはまた落ち込み自身の殻に籠ってしまったと思っていた長女の発言に目を丸くし、ほんの少しだけ口角が柔らかく上がる。



「……あの時の私達は、あまりにも違う方向を向いていた……だから、何も……守れなかった……」


ルキアは肩を震わせながら必死に言葉を紡ぐ。



ルキアの言葉にフィレアはため息を零す。


「……何も守れなかったんなら、今こうして話してる私らは、皆ゴーストって事ね。おー怖っ」


三女の発言にルキアはようやく顔を上げる。



「……ていうか、ソフィア……アンタの言い方回りくどすぎ。


要は、私達は一人一人じゃティターニアには勝てない。


……皆が皆の輝けるステージを整えないといけないって事でしょ?」


フィレアは目を閉じ鼻を鳴らす。



「……まぁ、言いたいことはわかるけど……貴女の例えも大概ね。」


ソフィアは肩を竦める。


「……でも確かに、フィレアが言ったように、私達は、決して何も守れなかった訳じゃない。


今こうしてヴァルハラは空を飛んで、リリィさん達は再び立ち上がってみせた。


私達第二世代のワルキューレだけがいつまでも下を向いていて良いことなんて無い……でしょう?」


ソフィアの発言をそこまで聞いて、ミレイナは思い切り深呼吸をすると自身の両頬を思い切り叩いた。



乾いた音が休憩スペースに木霊する。



「……っしゃぁ!!


ありがとうございますソフィアさん!!


確かに下ばかり向いていても前には進めませんよね……!


何より、命をかけて私達に未来を託してくれたキュベレさんの顔に泥を塗るところでした!」


あまりにも激しいミレイナの自分自身への喝にフィレアはドン引く。


「皆さんも気合入魂しましょう!ね!」


ミレイナの提案にフィレアとソフィアは苦笑いを浮かべる。


「……こう、ですか?」


唯一ノアだけは先ほどまで支えていたルキアの背中をバシバシと叩く。


「ちょっ……痛い、貴女の義手は痛いからノアぁ!」


ルキアは突然の妹の攻撃に別の涙を零す。


次女の奇行にフィレアは思わず吹き出し、それらを見ていたミレイナは満足気にウンウンと頷く。


「……纏まるのは時間がかかりそうね……」


ソフィアは呆れつつも笑顔を浮かべながら、やれやれとため息をつく。



───それでも。



その歪で不揃いな歩幅は、確かに同じ方向へと向き始めていた。

頭の中では前回の話と同時進行です。

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