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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
85/100

第85話 恩返し


最終試合、第一世代のリリィと第二世代のミレイナという組み合わせは偶然か必然か。


リリィがウォーミングアップをする後ろ姿をアリアやディアナ、そしてメガイラは神妙な面持ちで見つめていた。


リリィの強さは自分達より上だという事は皆が思っていた。


しかしミレイナが見せた異次元の強さは、

リリィの勝ち筋を皆が見出せなくなるのに十分な情報だった。


「……リリィ」

メガイラは苦しげな表情でリリィを見る。

リリィに勝ってほしい。しかしあの驚異的な力を持つミレイナに勝つビジョンをメガイラは見出だせないでいた。


そんなメガイラの肩をソフィアが抱く。

「大丈夫。あの人……リリィさんは負けないよ」


「えっ……?」


「私がMV-10の限界性能で、本気で潰しにいっても

初期型のワルキューレで対抗してくる、ミレイナと同じくらいの怪物だもの」

ソフィアは背中を見せるリリィを見つめながら言う。


「……貴女が言うと、説得力ありますね……」


「うっさい」



───


フィレアは試合が始まるのを今か今かと待ちわびていた。


早くリリィが負けるところが見たい。あの澄まし顔が敗北に歪む様を見て笑ってやりたい。そんな感情が透けていた。


そんな三女の様をルキアとノアはため息混じりに見つめていた。


「まったく、まさかフィレアがリリィさんにケンカを吹っ掛けるなんて思いもしなかったわ」ルキアは頭を抱えルンルン気分で試合を待ちわびる妹の愚痴を漏らす。


「本当にね。そもそもリリィさんが弱いって、なんでそんな発想になるんだろうね。フィレア、過去の戦闘データ見てないのかな。」ノアは顎を義手で擦りながら考えていた。


「どうやら、あの子、本当に見てないみたいなの。」

やれやれという表情で、ルキアは続ける。


「……でも、きっと最終試合はフィレアにとって良い薬になるでしょうね。リリィさんの普段の柔らかさからは、強さが見出だせないのは事実。

……"人は見かけによらない"とは、よく言ったものだわ」




───


精神統一をしているミレイナの背中を、親代わりのナギサだけが見つめていた。


自身を差し置いて高みに登らんとしている愛娘を、誇らしいと思う半面、危うくも思っていた。


ミレイナは強くなりすぎている。


強すぎる力は目を曇らせ、やがて周りが見えなくなる。


最強の自分だけが戦えば良いという、ナギサ自身が陥った極端な感情に支配されないか、ナギサはそれを危惧していた。



故に、リリィに託してしまう。


ナギサすら打ち負かし、異なる強さを示してみせた、あのリリィに……。


「ミレイナを頼む……リリィ」


ナギサは届くはずのない、誰にも聞こえないほど小さな声でポツリと呟いた。



───



試合場でリリィとミレイナが見つめ合う。


「ミレイナちゃん、凄い強くなったね。手……見せてくれる?」

リリィに言われ、ミレイナを両手を差し出す。

手のひらは豆が大量にでき、これまでミレイナが積み上げた努力の成果なのだと実感する。

「凄いね……。

こんなに頑張って……本当に凄いよ」

リリィが目を瞑りながら優しく囁く。


「……こんなに頑張ってる後輩の努力に応える為にも、私も出せる限界の力で応えなきゃだね。」


「私は……他の娘達みたいに派手な戦いは出来ないかもだけど、私なりに全力で頑張るから」


ミレイナはリリィから送られる言葉に言葉を失っていた。


誰かに褒められたくて鍛えた訳では無い。

あくまで親代わりのナギサを支え共に戦う為……。


しかし送られてきた言葉の全てが自身のこれまでの努力を上辺だけでなく、真に肯定してくれているのが分かり、視界が滲み、喉が詰まる。


リリィさんは以前からずっと変わらない。


優しくて大きなもう一人の姉だ。


身長こそミレイナが抜いたが、この精神だけは越えることは出来なかった。


でもだからこそ、自身の努力に応えると言ってくれたリリィの為にも、自身が持てる全てで応じてみせる。



───これがミレイナなりの恩返しだった。



異なる強さを持った二人のワルキューレの戦いが、始まる。

ちょっと!試合始まらないじゃない!まだなの!?

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