第64話 ミレイナ
……最近はいつもこうなってしまう。
私がワルキューレになる事をナギサさんはよく思ってくれない……そんなに私は頼りないのかな……
ミレイナは部屋を出て壁に寄りかかる。
ナギサさんが私を大切に思ってくれているのは分かってる。
ワルキューレとして稼いだお金の全てを私を育てるためにと回した。
任務でどんなに疲れていても私の前では普段の感じを崩さず凛として、
どんな時も私との時間を大切にしてくれた…
だから、そんなナギサさんを支えるために、私は、ナギサさんを守れる様な、そんな
ワルキューレにならなきゃいけないんだ。
自身の豆だらけの手を、ミレイナは強く握り締めた。
それは、まだ何者でもない証であり、
それでも前に進こうとした痕だった。
ミレイナはここ最近ラボに頻繁に出入りしていた。
ここなら訓練場もあるしトレーニング機材も充実している。
そして何より……
ミレイナがここへ来る理由は、それだけではなかった。
「おう!ミレイナ!待ってたぜ!」
───アリアさん達、メカニカルワルキューレが居るから。
「今日もよろしくお願いします!師匠!」
私は、ナギサさんに教わった通り、
手を合わせて敬意を表した。
「だからー師匠はよせよー、こそばゆいって!」
そう言いながらもアリアさんは手をブンブンと振りながらニマニマしている。
我が師匠ながら可愛らしい。
「まぁ…いいや、じゃあ──行くぞミレイナ」
アリアさんの目が瞬きと同時に少女から
"戦士"に変わる。
私も先ほどまでの笑顔を消し、真剣な眼差しを"師匠"に向ける。
「よろしくお願いします。師匠。」
「……やっぱこそばゆいって!」
アリアさんはやっぱり手をブンブンさせた。
……やっぱり、締まらないなぁ
───
私はここ数ヶ月アリアさんが暇なタイミングで稽古を付けてもらっている。
私が一人でがむしゃらにトレーニングをしていたら、
「一人でやるより効率良いだろ」
と。
なんだか私の努力が認められた気がして、
私の意志を肯定してくれる存在が居る事が嬉しかった。
私は訓練用の汎用スーツを装着すると剣を構える。
ナギサさんの様な二刀流だ。
私はアリアさんの好意に感謝し、全力でぶつかった。
───
──何ていうか、見てられなかったんだよな。
アリアはミレイナと刃を交えながら考えていた。
──来る日も来る日もひたすら鍛えてんだもん。なんかワルキューレ以上にトレーニングしてる奴が居るなと思ったら、
ナギサん家のミレイナだし、話聞いたら、
「ナギサさんの支えになりたい」なんて言うんだもん。
───本当は止めるべきだって分かってる。
私のやってる事はある意味自殺の手伝いみたいなもんだって、ちゃんと分かってる。
でも、もし本当に力が必要な時、何かを守りたいってなった時、力が無いんじゃスタートラインにすら立てない。
プロメテウスを倒して終わると思ってた戦いは、ティターニアなんかが出来ちまったせいで終わりが見えなくなっちまった。
だから──せめて自分の足で立って、選べる様にしてやりたかったんだ。
まぁ……ナギサにバレたら殺れちまうけどな!
アリアはニヒルに笑うとクロー捌きを加速させていった。




