↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第二章 復讐の連鎖編
55/224

55話 リリィとソフィア


鍔迫り合いをしてリリィは実感していた。



流石はMV-10ソフィア。


自身が装着しているMV-01ヴァルキリーとは、三年前に対峙したラクシャシーやアスラ以上の出力差がある。



本来であれば剣で受けるのは愚策、無人機相手なら絶対にしない行為だった。



でも、リリィは受けたかった。



ソフィアの剣の重みを、思いの強さを。



刃と刃が擦れ、火花が散り、二人の視界が明滅する。



ソフィアの剣の一撃一撃がどれも自身を即死出来るものだと言う事実に……リリィは内心喜びにも似た感情を抱いていた。



決して、許されるとは思っていない……



けれど……今こうして、自身の罪(ソフィア)と向き合えている実感が得られていた。




───




ソフィアはその全てを渾身の一撃として刃を繰り出すが、リリィがそれを往なしていく。



もはや、リリィを斬り伏せる事に意味は無い。



それどころか刃を放つ度、ソフィアは自身を切り裂く様な感情を抱く。



今、目の前で自身の剣を、必死に受け止めてくれているリリィの思いが、刃から伝わってくる。



───貴女の全てを受け止めたい。



ソフィアはアリアの言葉を思い出していた

『アイツ…リリィは優しすぎる』



……ソフィアは徐々に涙を溢れさせる。




もうこんな無意味な事は止めたい。




けど、全てを彼女にぶつけたい。




私の苦しみをこの世界で唯一理解出来る彼女に、私の苦しみも、思いの全てを……




「リリィィィイ!!!!」


「ソフィアァァァ!!!」




お互いの"名"を同時に呼び合う。



まるで鏡合わせの戦いは、激しさを増していく。



リリィも自身の切り札"コンバットメイデン"を装備し、思いの全てを剣に込めてソフィアに振るう。



リリィの中の最強の一撃で、ソフィアの剣は簡単に砕けてしまう。



すかさずソフィアは武器スロットから新たな剣、ビームソードを転送すると、再び剣を交える。



ただの武器の破壊と言う物理現象で、

この"対話"を終わらせたくない。



───ソフィアは一呼吸置くと、リリィからトレースした戦い方を捨て、本来自分が得意な二刀流で構え直す。




「……それが……ソフィアの"剣"なんだね……」



リリィは肩で息をしながらも笑みを浮かべる。



「そうやって笑っていれば良い……必ず上回って……打ち負かす。」



ソフィアは無自覚に口角を上げていた。



「ふふっ、そっちも笑ってるよ。」



「えっ………あっ……本当だ。」



ソフィアはメカニカルワルキューレに潜入して初めて自身を咎める事なく笑顔を零す。




──二人の表情が晴れやかな物になっていた。




リリィはこれまでの鬱屈とした雰囲気を吹き飛ばし


まるで三年前よりも以前の様な、満面の笑顔を浮かべる



「……よーしっ!!ここからは、本気で行くよ!ソフィア!!」



リリィは一度飛翔しソフィアから少し距離を取ると、コンバットメイデンをまるで演武の様に振り回し、構え直す。



「ふっ!!私だって……ここからが…本当の…本番だ!!」



ソフィアはスーツのエネルギーを最大解放するとアクアマリンの輝きがソフィアを包んでいく。


MV-10にのみ搭載された出力上昇技術……



リミット・ゼロ。ソフィアの切り札。



同時に二人は飛翔し、刃が激しくぶつかる。



今度はリリィのコンバットメイデンが衝撃に耐えきれず手から吹き飛ぶ。



リリィは空で身体を逸らすと、ソフィアの二本の剣裁きを身じろぎ一つのギリギリで回避する。



そして吹き飛んだコンバットメイデンの近くに、新たに武器スロットから呼び出したビームガンを放ち、そのビームの衝撃で浮き上がったコンバットメイデンをキャッチする。



その動きにソフィアは歯を見せて笑う



───魅せてくれる……!



リリィの技量はやはり凄まじい。



戦闘技術では彼女に勝てないのはソフィアが一番理解していた。




だから……リリィが私達、後輩の為に託したこの第ニ世代のメカニカルワルキューレの性能で上回って、打ち負かす!



スラスターを最大稼働させたソフィアの軌道が

まるで空に星座を描く様に鋭角な軌跡を描く。



リリィは一瞬、ソフィアのあまりの速度に対応出来なかったが、ソフィアの飛行する先を予測、移動するであろう先にビームを放つ事でソフィアの動きを抑制し速度の差を埋めていく。




正面から突っ込んできたソフィアの剣が

リリィに迫るが、リリィはあえて反転しスラスターを最大出力で吹かし、その圧力でソフィアの剣を弾くと、そのまま出力を維持して加速、

ソフィアに肉薄する。




互いの顔が近くに迫る。




全く…お互い……良い顔をしている。




互いに汗を流しながらも、思わず歯を見せて笑い合う。




もはや、どちらが勝っても負けても良かった。




───




当初、二人の戦いを苦痛の表情でモニターしていたラボの皆も、もはや皆が白熱し

手に汗握り二人の舞を見届けていた。


「ブチかませリリィ!第一世代の意地見せろ!」


アリアは満面の笑顔で拳を突き上げ叫ぶ。



「ソフィー…!頑張れっ!そこです!」



メガイラも胸の前で手を握り祈る。






「見て…サイサ……なんて、美しいのかしら…」



ハカセすら涙を流し二人を映し出したホログラムを右手で撫でていた。




───




「ソフィア……これだけは、伝えさせて。」




リリィは突如スラスターを弱めその場で浮遊する。



「?」



ソフィアは突然のリリィの動きに同じく動きを止める。



「貴女のお父さん……。



ダルクはね……ちゃんと貴女を、かけがえの無い……世界でたった1人の娘として……愛してたよ」



その言葉を紡ぐリリィは笑顔だが、同時に苦しそうな表情を浮かべる。



ソフィアは目を瞑り言葉を零していく。



「……大丈夫……だって私は、お父さんの娘だもん。ちゃんと……分かってたから」




「……それに、リリィ…貴女がお父さんを、心を痛めながらも止めてくれていなかったら……きっとお父さんは、私達みたいな苦しみを沢山作ってた……だから……」






「本当に、本当に……ありがとうございました……リリィ」



ソフィアは笑顔で、でも涙を溢れさせながらリリィに感謝を伝えた。




それを聞いたリリィは沢山の涙を零しながら武器を捨て……




───空中でソフィアを抱き締めた。




ソフィアもそれに応えるように武器を手放す。



二人は空中でバランスを崩しながらも、互いのスーツが装着者を守るため、スラスターを自動制御し星々が煌めく空を、ゆっくりと落ちていく。




温かな涙が混ざり合い、それをスラスターの熱が蒸発させ、夜空に綺羅びやかに舞っていく。





──もはや……この二人の間に勝敗、そんな物は、要らない。

だってなんかいい雰囲気だし……勝敗が決まって決着は無粋かなって…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。