第38話 ラクちゃん先生とアッちゃん先生
2章ではありません。一応外伝になります。
プロメテウス壊滅からしばらくしたある日
ラクシャシーは嘆いていた。
「予算が……予算が足りないわよ!」
モニター越しにハカセが、眉間を押さえる。 『またなの?……今月2回目よ。必要経費は“必要なだけ”渡しているでしょう?』
「子供共なめんな!毎日壁に穴開けるわ、服は1日でボロボロにするわ、ご飯は3食毎回おかわりの嵐なんだよ!それになぁ!見ろハカセ!」
そう言うと画面を掴みハカセに見えるようにする。
「私らの事ラクちゃん先生、アッちゃん先生ってベタベタベタベタ触ってきやがるのよ!!」
今まさに子供達にめちゃくちゃにされている自身の姿を見せた。髪を引っ張られ服を引っ張られ、4方から抱っこを要求され、
しかし言葉は荒いのに満更でもなさそうなラクシャシーにハカセは苦笑いする。
『はぁ…分かったわ。ひとまずもう一回だけ予算を追加します。……だから、壁は程々にしてちょうだい。それで良いわね?』
「よっし!恩に着るよハカセ!おら、アンタ達もお礼言うんだよ!」
ラクシャシーが周りの子供達に言うと大音量の『ハカセありがとー!』
が聞こえ、思わずハカセの口角が上がる。
通信を終えハカセはため息をつきつつ、
「子供、かぁ…」
と呟いた。ハカセ35歳。ここに来て母性に目覚め始めていた。
アスラはと言うと六本の腕を遺憾無く使い思いのほか家事に全力だった。
ラクシャシーに
「いや、子供に悪影響だからその腕隠せ」
と言われているがアスラは何がどう悪影響なのか理由が分からないためお構いなしに六本の腕を子供達に見せていた。
そんなアスラは子供達からすると"なんか腕が沢山ある面白い先生"と言う評価になっていた。
そして六本腕から繰り出される謎の料理達。
アスラは度重なる改造の結果味覚が壊滅している為、"ユニーク"な料理しか作れなかった。
子供達も、あ、今日の料理はアッちゃん先生かと分かる程だった。
そして遊びとなるとアスラは子供達を自身の腕に掴ませると回転を始める。遠心力で子供達の身体がブンブンと宙を舞う。ワーキャーと楽しそうな声が響く。
「おーい!やめんかバカアスラ!!」
ラクシャシーは髪をボサボサにしながらスライディングしてアスラに叫んだ
「……? みんな、空を飛べて、嬉しそうだった」
「ラクちゃん先生、アッちゃん先生を怒らないで! アッちゃん先生もっと回してー!」
と子供たちが再びせがみ、アスラによる人間メリーゴーランド(速)が再開される。
髪をワシャワシャと掻くラクシャシーの絶叫が孤児院に響き渡る……。
ラクシャシーはヘトヘトになりながら自分に与えられた部屋に戻ると愚痴を零す。
「はぁ……ガキどもめ……プロメテウスの無人機の相手の方がまだ楽だったわ」
椅子に座って頬杖を付きながらガラス窓越しに子供達を眺める
「……ふふっ」
最初はとんでもない貧乏くじを掴まされたものだとハカセを割とガチ目に恨んでいた。
けど今は……
ふと気が付くと自身が寝ていた事に気付く。
「いけない…私とした事が机でうたたねしちゃうなんて……ん?」
ラクシャシーは自身の身体に何かがかかっているのに気付いた。それは子供達用の毛布だった。
思わず目頭が熱くなる。
くそっ…ちくしょう……温かいわね……
この身体は痛覚こそあるが、温度はあまり感じられない。だと言うのにラクシャシーは温かくて温かくてたまらなかった。
ふと横を見ると、アスラもまた床で子供たちに囲まれて眠っていた。
その六本の腕の隙間に子供達と共に大量の毛布やぬいぐるみが詰め込まれていた
「あははっ、なんだそりゃ」
ラクシャシーは今までで1番温かな笑みを浮かべた。
2章はダルクの娘関係でどうせまた重いのでしばらくは温かな話を書こうかと。




