第28話 仲間を助けに行こう
私の言葉を聞いてからのラクシャシーの様子はおかしかった。
出力が低下し始めたのだ。突如ラクシャシーの魔力結晶は明滅を始めた。
その隙に、私達3人による連携で形勢は徐々に逆転し始めた。
理由は分からない……もしかしたら、怒りが収まって来ているのかもしれない、とにかく、ラクシャシーの溢れんばかり合った強大な力が、明らかに落ちている。
そんな時、ラクシャシーにのみ聞こえる無線が入る。
『ラクシャシー。どうやら魔力結晶の出力が大幅に低下しているようだね。』
──ダルクからだ。
『このままでは君は破壊されるだろう。君とアスラは唯一の成功体、今ここで失うのは実に惜しい。一度撤退しなさい。』
「待ってよ!アタシはまだ負けてない!こんな奴ら今の私でも……!」
突如ラクシャシーが動揺を見せる。
「ハカセ……ラクシャシーに対して何者かが通信を行なっています。通信はプロメテウスからと断定……」
メガイラちゃんがラクシャシーの動揺から周囲数キロの範囲の電磁波を解析し始める。
『命令を無視する……と?』
『忘れたのかい? 君たちの命を握っているのは私だ。……君達姉妹の相互作用の爆弾……アスラの爆弾を強制起動してもいいんだよ』
その言葉に、ラクシャシーが目を見開いて硬直する。
「……っ、あ、アスラを……アスラだけは、やめて……!やめてっ!」
突然怯えだしたラクシャシーに私は何かを感じる。
「……ラクシャシー、何か言われてるの!? ダルク!!?」
私は必死にラクシャシーに呼びかける。
表情の変化から彼女にちゃんと意思があるのは明白だった。
通信の内容は聞こえなくても、ラクシャシーの怯えようから事の異常さを私達は察する。
「相互……作用の爆弾……?」
メガイラちゃんは唐突に言葉を零す。
通信をハッキングしたメガイラちゃんはラクシャシーに送られている悪意ある指示を聞いていた。
「……リリィ、聞いてください。ダルクは、ラクシャシーが撤退しなければ、本拠地にいる姉妹……アスラの爆弾を起動すると脅しています。……彼女たちは、死ぬ時まで繋がれている……」
メガイラちゃんは苦しそうに零す。
「……あいつ……っ!! どこまで、どこまで人の心を馬鹿にすれば気が済むの!!」
私は怒りを露わにしてコンバットメイデンを握りしめる。
『メガイラ、通信を繋ぎっぱなしにしなさい! その回線を逆に辿って、爆弾の起動信号をジャミング(妨害)して ……!』
ハカセが言い終える間もなくラクシャシーは
、取り乱したままその場から強制離脱してしまった。
「……目標、ラクシャシーをロスト……すみませんハカセ……通信、途絶しました……」
メガイラちゃんは目の前に出来た飛行機雲をただ呆然と見上げていた。
ラクシャシーの襲撃は幕を閉じた。
戦いの後、私達はラクシャシーとアスラを倒すのでは無く、救いたいという思いがより明確に強くなった。
相互作用の爆弾、それに奪われた彼女達の自由……絶対に取り戻す。彼女達の尊厳を。生体部品にされた彼女達の為にもせめてあの二人だけは絶対に助け出す。
私は決意を胸にラボに戻った。
戻った私たちを迎えるナギサさん。彼女は、ラクシャシーの正体、かつての仲間、あるいはその成れの果てである事知り、静かに拳を握りしめる。
「ダルク・グリード……奴だけは……!」
「……メガイラがハッキングしたデータのおかげで、爆弾の周波数は特定できたわ。……リリィ、ディアナ、メガイラ。次は逃がさないわよ。あの子たちの『鎖』を解くための鍵を完成させるわ。」
ハカセも先の戦闘で彼女の鎖を解く方法を掴んだ様だった。次は絶対に……助ける。絶対に。
「アタシも……忘れんなよ、ハカセ」
そこに包帯を外しながらアリアが立っていた。まだ痛いのだろう。壁に寄りかかりながら、けど強い意志を宿した瞳で立っている。
ディアナさんがアリアに肩を貸す。
「アリア……無理しないで……と言っても貴女は聞かないわよね。」
ディアナさんはため息混じりに笑顔を浮かべる。
「……ラクシャシーとの戦いの話、全部聞いた。助けようぜリリィ。敵じゃない。あいつらも私達の仲間だ……だろ?」
アリアは優しく微笑みを浮かべる。
自身をここまで傷付けたアスラ達を仲間と呼ぶアリアの強さに、思わずナギサさんは感服する。
「……アリア……お前は……確かに強いな」
ナギサさんがきょとんとしているのを見てアリアはニカッと笑う。
「へっ今更気づいたのか!おせーよナギサ!」そう言うとアリアは拳を突き出す。
それを見てナギサさんは小さくため息をつきつつも、ほんの少しだけ微笑んでから拳を合わせた。
その光景をディアナさんは温かく見つめる。
「ハカセ……私から提案をしてもよろしいでしょうか?」
メガイラちゃんが唐突にハカセに提案を投げる。
「どうしたの、メガイラ」
「私も皆の役に立ちたいのです。私にも、新装備開発の手助けをさせてください。私はハカセのクローン。頭脳も優秀な貴女から受け継いでいます。」
「えっ!?メガイラちゃんハカセのクローンだったの!?」
私は思わず驚く。
「えぇ。……と言っても、ハカセの遺伝子を元に魔力結晶に最適化する様に調整された存在………ですが……」
メガイラちゃんは少し視線を落す。
きっと彼女自身が出自に思う所があったんだろう。
「……そっか、だからラクシャシーはあんな事を……でも、メガイラちゃんは、優しくて強い、メガイラちゃんだもんね」
私が頭を撫でるとメガイラちゃんは今までで1番の笑顔を浮かべる。
「メガイラ……強力、感謝するわ。私1人では……正直、手詰まりだったの」
ハカセが震える右手を差し出し、それをメガイラちゃんがしっかりと握りしめた。
──さぁ、皆で新たな仲間を助けよう、ヴァルキリー。
私の魔力結晶は翡翠の光を強くし始めた。
「ダルク、あなたの独りよがりな理論はここで終わり。私たちが、あの子たちの涙も絶望も、全部終わらせるから。」




