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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第一章 プロメテウス編
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第29話 出撃


私がプロメテウスの本拠地に戻るとまたあのアームが伸びてきて私のパーツが外されていく。

「待ちな……さいよ…っ」


それをダルクがガラス越しに見ていた。

『先ほどの出力低下の原因は不明だが……

今はまた出力が安定してきたね。パーツ毎に再調整を行おう。


メカニカルワルキューレは既に敵じゃない。


次回の戦闘では改めてよろしく頼むよ。人類の進化の為に……』

そう言うと奴はそのまま部屋を後にした。


私の抵抗も虚しく、というかアームに接続された時点で身体の制御権を剥奪されてしまう。


私がいつもの壁に固定されるとアスラと隣り合わせになった。



───良かった。アスラ……お姉ちゃんは無事だ。



アスラ……ちゃんとした名前は脳の一部をイジられてしまい、既に覚えていないけれど、この子は私のお姉ちゃんだ。


それだけは何があっても、けして忘れない。



恐怖から従順に従った私は、記憶の書き換えで済んだけど


アスラは改造後も最後まで抵抗し、更には私を救う為、プログラムの命令を超えて基地の一部を破壊してしまった事で


脳の一部分を切除し、機械に置換され、目が覚めた彼女は感情と記憶を失ってしまっていた。



更に私達がプロメテウスの害にならないよう、爆弾なんかも組み込まれた。



……本当、私達って何なんだろうね……お姉……



もう存在しない手をアスラに伸ばした時

私の思考はここでシャットダウンされた。




───



ラボでは各々がラクシャシーとアスラ救出に向けての準備を行っていた。



ハカセとメガイラちゃんは新装備の基礎設計をものの数十分で形にしていた。


「なるほど……その切り口が合ったわね。


それなら装甲強度を飛躍的に引き上げられる。これを……」


「……ハカセの基礎理論の応用です。これは貴女が齎した結果に過ぎません。更に……」

2人は駄弁りながらもわけの分からないタイピング速度でコードを入力していたので私はそっと二人の元を後にした。




アリアとナギサさんは訓練場で接近戦の模擬戦を行っていた。


アリアの両手のクローとナギサさんの二振りのサムライソードが目にも止まらぬ速さでぶつかり合う。


「まさかお前がここまで速いとはっ!!速度はリリィ以上かっ!!」


ナギサさんが感嘆の声を零す。


アリアの実力を目の当たりにするのはこれが始めてだった。


「ナギサこそ!スペック頼りの荒い戦いすんのかと思ったら、良い太刀筋じゃんか!!」


「アリア、お前のその迅速のクローなら、あの姉妹の装甲にも届くな」


「へっありがとよ!でもさ、届くじゃあ終わらせないさ!」

2人の模擬戦はどんどん加速していく。



───




私はディアナさんとの戦闘時の連携について管制室のコトネさんと話し合っていた。



この戦いにおいて、コトネさんのオペレーションも鍵だから。

「あの二人、ラクシャシーとアスラの攻撃はどれも必殺の一撃、当たれば即死と考えた方が良いわね……」

ディアナさんは先の戦闘のデータを見ながら話す。



「更に戦場の無人機の動きの把握も……つまり量子通信によるタイムラグゼロの私のオペレーションが重要、なんだね……」

コトネさんは自身の手をぎゅっと握る。



「はい。戦場とは異なる視点の指示が明暗を分ける……かと」


私はコトネさんの手を握る。



「大丈夫ですよ。皆で、今も苦しんでいる仲間を助けましょうね。コトネさん!」



「そうだね…!終わったらラクシャシーとアスラも交えてご飯にしよっか」

コトネさんも笑顔になってくれた。



───そうだ。あんな苦しい顔じゃない。



笑顔にするんだ。



約二週間の時、各々が作戦成功の為に研鑽を積んだ。



───そして遂に、私達の新装備が完成した。



「皆、待たせたわね。


貴女達の新たなメカニカルワルキューレよ。


デザインこそ元のままだけど全員の装備をナギサのティシポネ開発で得られた技術を使って再設計し直したわ。


これによって性能は皆同等になったと言っていい。装着感は今まで通りの筈よ。」


私達はハカセが表示してくれたデータを確認した。出力の向上もだけど、パラメーター上の防御力の飛躍的な向上に目がいく。


「メガイラの着想を元に装甲は一新したわ。


今までの、メガミドライヴの防御力向上効果に頼る設計では無く、装甲そのものにエネルギーフィールドを何層にも重ねて、外部の物理的攻撃を無効化する構造。


更に周囲に空間湾曲を起こさせる事で実弾とビームに対しての耐性を従来のスーツに比べ大幅に引き上げられたの。」



「リリィ……貴女がくれたオムライスから着想を得ました。」

私が頭を撫でるとメガイラちゃんが何時もに無く誇らしげだ。



私達の小さな思い出が新しい力になる。


なんだかそれがとても嬉しかった。


「メガイラはオムライスが好きね。


なら、今度オムライスが美味しいお店を紹介するわね」

ディアナさんがそう言うとメガイラちゃんは高速で首を縦に振っていた。



「それじゃあ、作戦を伝えるわ。


プロメテウスの無人機が首都に侵攻しているのが、偵察中のキュベレの通信で分かったわ。


貴女達はこれを全ワルキューレで殲滅なさい。」


ハカセは今まさに首都に向かっているプロメテウスの無人機部隊をホログラムに投影した。


「こちらが全てを投入したとなれば奴は必ずあの二人を投入してくる。



そこに私とメガイラがハッキングを仕掛けて彼女達の爆弾の解除を行います。


ただラクシャシーとアスラはあくまで現段階では敵機、可能な限り無力化なさい。


でなければハッキングは難しいわ。


……良いわね?」



「「「「「了解!!」」」」」



私たちは力強く頷いた。



魔力結晶の放つ翡翠の光を、呪いではなく、仲間の笑顔を取り戻すための光に変えて。




───メカニカルワルキューレ、全機出撃

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