第20話 力とは何なのか
この日私はハカセから呼び出され指令室に来ていた。新たなプロメテウスの製造拠点を発見したためそれの殲滅との事だった。
今回、私はハカセからナギサ……ティシポネとの合同任務を言い渡された。ティシポネは私という足手まといが付く事を反対したがハカセから「命令違反をすると言うなら魔力結晶とのリンクを切っても構わない」と釘を刺され渋々了承してくれた。
「あの……ナギサ…さん?一緒に頑張ろうね?」
私はぎくしゃくしたままはやっぱり嫌だったので、無理と分かりつつ手を差し伸べた。
すると
「まだ馴れ合いごっこがしたいのか。そんなに馴れ合いたいならこの間のあの頭の悪そうな金髪としてくれ。」
頭の悪そうな金髪…?アリアの事言ってるのかな
「……確かにアリアはあまり頭は良くないかもだけど……誰よりも心の優しい、いい子だよ……それを……」
何も知らないくせに言わないで、と言い終わる前に
「優しさ?戦いにおいて情けなんて不要だと、まだ理解出来ないのか。」
ティシポネの言いように流石にむかつきを覚える。なんなのこの子。見た目はすごく可愛いのに刺々でハリネズミみたい。
私もむくれてそっぽを向いてやった。
キュベレさんが途中までステルス輸送機で移動してくれる事になったけど……移動中もやはり沈黙。ティシポネは一人で調整を続けてるし、私の視線に気付いてるのに無視して拒絶する。本当に、可愛くないよっ。
「……目標地点に到着。これより降下を開始してください」
キュベレさんの無機質な声と共に、ハッチが開く。
私が「気をつけて」と言う間もなく
ティシポネが弾丸のように飛び出していく。
私もため息を零しつつ追走した。
私達は殲滅拠点に到着するも、そこはすでに「もぬけの殻」と言っていいほど敵の数が少ない……何かが可笑しいと私はティシポネに待ってと伝えるもティシポネは聞こえないのか、或いは無視したのか敵製造拠点内部に突き進んでいってしまった。
私も同じメカニカルワルキューレとしてやっぱりティシポネが心配なのでついて行くしかなかった。
気配もなく静まり返った倉庫の最奥部にティシポネが着いた時だった。
ティシポネが周囲を見渡す為立ち止まった瞬間、周囲のコンテナから赤く光る無数の「眼」が浮かび上がる。
「…っ!ティシポネ!!」
ハウンドの反応が一気に周囲を包んだ。その数は15以上。流石に多すぎる。
「ちっ……!!」ティシポネは舌打ちをすると二刀流のサムライソード風のエネルギーブレードを展開し左右から放たれるハウンドの手刀を受け止めてみせた。
凄い……確かに凄いけど……
私もコンバットメイデンを構えると一瞬スラスターを吹かせハイジャンプしティシポネの背後を狙うハウンドの手刀を弾く。
「罠だよティシポネ!!」
「言われなくても分かっている!!」
弾いても弾いても、次から次へとコンテナの影からハウンドが飛び出してくる。
ティシポネのブレードが1機を斬り伏せる間に、別の3機が四肢に食らいつこうとする。ハウンドたちは個々の破壊よりも「拘束」を優先し始めていた。
1機が盾になり、その隙に2機がティシポネの背中のブースターを狙う。
「くっ!!離せっ!!」
ついにティシポネは腕を掴まれ、足を掴まれ組み伏せられる形になってしまった。
私は咄嗟に
「ティシポネ!!エネルギーフィールド最大展開して!!」と指示を出す。
すかさずティシポネがエネルギーフィールドを展開したのを確認し、私はコンバットメイデンを横持ちすると組み伏せられているティシポネの真上、コンマ数センチ上を薙ぎ払った。私の剣で3機を同時に破壊し、ティシポネの拘束が解ける。
「……余計な……真似を。あんなの、私一人で……」
言い切る前に、私が
「いいから今は前を見て!」
と一喝し2人が背中合わせになる。ティシポネは舌打ちしていたが、互いが互いの死角を補う事で、敵の攻撃をいなし破壊していく。
「ティシポネ!!後ろ!!」
「ちっ!後ろだ!!」同時に互いの後ろのハウンドを両断した。
最後の1機を2人の刃が同時に切り裂き、倉庫に静寂が戻る。
立ち上るオイルの臭いと火花の中で、肩で息をする2人。
「や、やったね……ティシポネ……」
私はティシポネに声をかけたけど、ティシポネは悔しそうに歯を食いしばっていた。
1人では死んでいた……その事実をティシポネ自身が1番理解していた。
「…ティシポネ……私達と一緒に頑張ってみない?1人で無理な事でも皆と力を合わせれば……」
「……私…1人でっ!!倒さなければ意味がないんだ!!」
ティシポネは四つん這いのまま地面を叩きつつ叫んだ。
「私は……強くならなければ行けないんだ!!誰の手も借りず!!最強に!!」
──そうすれば私以外誰も傷付かないのだから。
私は息を飲んだ。彼女の言う「誰も傷付かない」という矛盾
自分以外の誰も傷つけないために、自分一人で傷つく茨の道。ティシポネの強迫観念にも似た叫びに私は、以前魔力結晶の干渉で正しさに囚われた自分と近しい物を感じた。
私はそんなティシポネに手を伸ばしたが
ティシポネはこちらに一瞥もせず、天井を破壊しながら何処かへ飛び去ってしまった。
彼女が開けた天井の穴からは朝日が差していた。
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