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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第一章 プロメテウス編
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第19話 ティシポネ/ナギサ


私達が各々の決意をハカセにぶつけるとハカセは今までに無い、大声で笑い始めたかと思うとグラスのお酒を一気に飲み干した。



「ふぅ……お酒なんて、やっぱり飲む物じゃ無いわね……全く……どいつもこいつも、綺麗事ばかり……全く……ふふっ」



「リリィ……アリア……ディアナ……メガイラ……これからも私は貴女達に戦場に出てもらうわ。


……一緒に地獄に行く覚悟は出来ているのね?」


ハカセは何時もの口調に戻ったかと思うと私達を見渡した。


「え、嫌だけど。」


アリアはピシャリと突っぱねる。


「───あんたが行く先が地獄なんてアタシは嫌だよ!」


アリアはニカッと笑い飛ばす


「……そうね。

私もこれからの未来を地獄になんてさせるつもりは無いですハカセ。」


ディアナさんもアリアに続いて爽やかな笑みを浮かべて言う。


「……そもそも科学者の貴女が地獄と言う非科学的な表現を、比喩だとしても、使うべきでは無いかと……ハカセ」


メガイラちゃん……なかなか厳しい…



これからの未来が地獄だとしても、私はダルクを止める。


───もしかしたら、この思いすら魔力結晶が増幅させた感情なのかもしれない。



数カ月前まで一般人だった私が、家族を失ったばかりの私が戦う覚悟を出来たのが貴女のおかげなら、むしろ感謝しないとね、ヴァルキリー。



私達が笑顔を交わし、和やかな雰囲気を指令室に漂わせていた時だった。



コツコツと誰かの近付いてくる足音が鳴り響く。



そして……指令室の自動ドアが、温かな空気を断ち切るかのごとく開くと同時に、あまりそういった経験の無い私ですら感じる程の、鋭く刺すような……殺気が室内に流れ込んだ気がした。




「……傷の舐め合いで世界が救えるなら、死人は出ない」



そう言いながら私達とハカセとの間に割って入って来た謎の少女は茶色いトゲトゲとした髪をたなびかせながら、私達を真紅の瞳で睨みつけて来た。



「……あん?なんだよアンタ……」


アリアが珍しくドスの効いた声で睨み返す。



一触即発な空気に私は内心アワアワしてしまう。



「……やめなさい、ナギサ、アリア。


……紹介するわ。


彼女が五人目の適合者。


これからのプロメテウスとの戦いに備え増員した、MV-05ティシポネの魔力結晶が選んだ少女よ」



ナギサ…あまり聞き慣れない感じの名前だ。



……茶色い髪だし肌の色からコトネさんと同じ、極東の方の出身なのかも知れない。



「……私はもはや名を捨てた。


メカニカルワルキューレの名前、ティシポネで良い。」


ハカセが紹介した少女、ナギサさん……もといティシポネさんは目を瞑りながら、自身の名前を捨てるとまで言った。



……過去、何かが彼女にあった事はそれだけで分かった。



「あぁ?ティシポネだぁ?


随分と気取った事抜かすじゃん。……そのツラ、少し……」


とアリアがティシポネさんの肩に手を置こうとした時だった。



ティシポネさんは素早くアリアの手首を掴むとそのまま腕を捻り上げた。


「ぐぅっ……!?!」


アリアは苦悶の表情を浮かべ苦痛の声を漏らしそのまま片膝を着いてしまう。



「ナギサっ!やめなさい!」


咄嗟にハカセが彼女に対し怒鳴る。



ナギサ……ティシポネは先に手を出したのはそいつだと言うと、おどけた様な身振りでサッと手を離した。


思い切り捻られ相当痛いのだろう、アリアは肩を押さえながらも

「……いいよハカセ…悪かったな"ティシポネ"」と漏らす



姉貴分であり、メカニカルワルキューレの実質リーダーでもあるディアナさんはアリアの肩を優しく持つと、ティシポネを恨めしそうに睨みつけていた。



……私も大切な家族であり、大切な相棒の痛そうな表情を見てティシポネに批難の目を向ける。



メガイラちゃんは……どうなんだろ。何時ものポーカーフェイスだ。




───とにかく、私達とティシポネは最悪の出会いをした。



場を落ち着かせる為か、ハカセは咄嗟にホログラムを展開してティシポネのメカニカルワルキューレの情報を表示してくれた。




ティシポネのメカニカルワルキューレは次世代の性能試験機と言う事で、様々な新機軸の技術を多数搭載していて、私達のスーツより高性能との事だった。



特に私とアリアの最初期のメカニカルワルキューレと比べるとスピード、パワー共に大きな性能差がある事がハカセの提示してくれたデータから分かった。


「……データを見れば分かるだろう?お前達は試作品……型落ちの骨董品が何人集まっても、ただ足手まといなだけだ。


……これからは戦場には私一人で行く。」



まるでハリネズミの様な、棘だらけのその言葉だけど……



───私はどこか、少し前の自分を見るような、既視感を覚えていた。



そして彼女は宣言通り、言わばワンマンアーミーとして任務に赴いていた。




確かに戦果は上々



だけど……任務から帰還した彼女はラボの誰とも会話せず、報告以外ではラボにすら帰らないと言う徹底した一匹狼っぷりだった。



ハカセはその後


「……まぁ、あれも過去、色々合ったそうだから、ゆっくりと仲良くしてやってちょうだい」


と言っていたけれど……アリアが傷付けられたあれ以来、ティシポネとは、距離を取る様になってしまった。


確かに───彼女は強い。



それは任務結果から見ても歴然だったけど……


でも、いつかそんな頑なな彼女が折れてしまいそうで、私は不安だった。




───




仲間や家族と言う弱い繋がりがいったい何になると言うのか。


───強さとは、力だ。


力が無いから人は寄り添い合い傷を舐め合う。そして自身に隙を作る。



───私も人の子、家族は居た。


でも、その家族は私を変態に差し出して私腹を肥やそうと足掻く醜い者共だった。



結局、私を売り飛ばした醜い家族も家も、私を買いに来た醜いブタも纏めて、直後のプロメテウスの空襲により全て吹き飛んだが。


その後………


プロメテウスの施設から逃れた私は魔力結晶の適合者としてキュベレが迎えに来るまで、山奥で誰に頼ることもせず、サバイバル生活をしていた。



だからラボの連中の"仲良し家族のおままごと"が、私は心の底から不快だった。



今日もまた、私は1人、剣を取り自身の力を証明する為任務に赴く。


もう、他者に頼らずとも歩める事を証明する為に。

ここから新キャラ何人か増えるので頑張って皆の魅力伝えにゃ!

励みになりますので面白いと思って頂けましたら評価お願いします!

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