第19話 ティシポネ
私達が各々の決意をハカセにぶつけるとハカセは今までに無いほどの大声で笑い始めたかと思うとグラスのお酒を一気に飲み干した。
「ふぅ……お酒なんて、やっぱり飲む物じゃ無いわね……全く……どいつもこいつも、綺麗事ばかり……全く……ふふっ」
「リリィ、アリア、ディアナ、メガイラ……これからも私は貴女達に戦場に出てもらうわ。
……一緒に地獄に行く覚悟は出来ているのね?」
ハカセは何時もの口調に戻ったかと思うと私達を見渡した。
「え、嫌だけど。」
アリアはピシャリと突っぱねる。
「あんたが行く先が地獄なんてアタシは嫌だよ!」
アリアはニカッと笑い飛ばす
「そうね。私もこれからの未来を地獄になんてさせるつもりは無いですハカセ。」
ディアナさんも爽やかな笑みを浮かべて言う。
「そもそも科学者の貴女が地獄と言う非科学的な表現を比喩だとしても、使うべきでは無いかと……ハカセ」
メガイラちゃんなかなか厳しい…
これからの未来が地獄だとしても、私はダルクを止める。もしかしたらこの思いすら魔力結晶が増幅させた感情なのかもしれない。数カ月前まで一般人だった私が戦う覚悟を出来たのが貴女のおかげなら、感謝しないとね、ヴァルキリー。
私達が和やかな雰囲気を指令室に漂わせていた時だった。
コツコツと誰かの近付いてくる足音が鳴り響く。
そして、指令室の自動ドアが、温かな空気を断ち切るかのごとく開くと同時に、あまりそういった経験の無い私ですら感じる程の、鋭く刺すような殺気が室内に流れ込む。
「……傷の舐め合いで世界が救えるなら、死人は出ない」
そう言いながら私達とハカセとの間に割って入って来た謎の少女は茶色い髪をたなびかせながら、私達を真紅の瞳で睨みつけて来た。
「あん?なんだよアンタ……」
アリアが珍しくドスの効いた声で睨み返す。
一触即発な空気に私は内心アワアワしていた。
「やめなさい、ナギサ ……彼女が5人目の適合者。これからのプロメテウスとの戦いに備え増員した、ティシポネの魔力結晶が選んだ少女よ」
ナギサ…あまり聞き慣れない感じの名前だなと私は思った。茶色い髪だしコトネさんと同じ極東の出身なのかも知れない。
「……私は名を捨てた。ティシポネで良い。」
ハカセが紹介した少女、ナギサ…もといティシポネさんは目を瞑りながら、自身の名前を捨てるとまで言った。何かが彼女にあった事はそれだけで分かった。
「ティシポネだぁ? 随分と気取った事抜かすじゃん。……そのツラ、少し……」
とアリアが肩に手を置こうとした時だった。
ティシポネさんはアリアの腕を捻り上げたのだった。
「ぐぅっ……!?!」
アリアは苦悶の表情を浮かべ苦痛の声を漏らしそのまま片膝を着いた。
「ナギサっ!やめなさい!」
ハカセが彼女に対し怒鳴った。
ティシポネは先に手を出したのはそいつだと言ってぱっと手を離した。
アリアが肩を押さえながらも
「……いいよハカセ…悪かったな"ティシポネ"」と漏らす
ディアナさんはアリアの肩を持つと無言でティシポネを恨めしそうに睨みつける。
私も大切な家族であり相棒の痛そうな表情を見てティシポネに批難の目を向ける。
メガイラちゃんは……どうなんだろ。何時ものポーカーフェイスだ。
とにかく私達とティシポネは最悪の出会いをした。
ティシポネのメカニカルワルキューレは次世代の性能試験機と言う事で私達の物より高性能との事だった。
特に私とアリアの最初期のロットと比べるとスピード、パワー共に大きな性能差がある事がハカセの提示してくれたデータから分かった。
「……データを見れば分かるだろう?お前達、試作品、型落ちの骨董品が何人集まっても、足手まといなだけだ。……これから戦場には私一人で行く。」
まるで棘だらけのその言葉だけど、私はどこか、少し前の自分を見るような、既視感を覚えていた。
彼女は宣言通りワンマンアーミーとして任務に赴いていた。戦果は上々、だけど彼女はラボの誰とも会話せず、報告以外ではラボにすら帰らないと言う徹底した一匹狼っぷりだった。
ハカセはその後、「……まぁ、あれも過去、色々合ったそうだから、ゆっくりと仲良くしてやってくれ」と言っていたけれど……アリアが傷付けられたあれ以来、ティシポネとはなるべく、距離を取る様になってしまった。
確かに彼女は強い。それは任務結果から見ても歴然だったけど……でも、いつかそんな頑なな彼女が折れてしまいそうで、私は不安だった。
───
仲間や家族と言う弱い繋がりがいったい何になると言うのか。強さとは力だ。力が無いから人は寄り添い合い傷を舐め合う。そして自身に隙を作る。
──私にも、家族は居た。でもその家族は私を変態に差し出して私腹を肥やそうと足掻く醜い者共だった。
結局、私を売り飛ばした醜い家族も家も私を買いに来た醜いブタも纏めて、直後の空襲により全て吹き飛んだが。
その後は………
魔力結晶の適合者としてキュベレが私を迎えに来るまで、私は山奥で誰に頼ることもせず、サバイバル生活をしていた。
だからラボの連中の"仲良し家族のおままごと"が、私は心の底から不快だった。
今日もまた、私は1人、剣を取り自身の力を証明する為任務に赴く。もう、他者に頼らずとも歩める事を証明する為に。
ここから新キャラ何人か増えるので頑張って皆の魅力伝えにゃ!
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