第15話 力の使い方
私達はブリーフィング後、準備を整えて威力偵察任務に出撃していた。
先の強力な魔力結晶搭載型の新型無人機、ハウンドとの接敵を想定し、私達はスリーマンセルで偵察を行う事になった。
ディアナさんには早速新型の遠隔武器を先に飛ばしてもらい、周辺のデータをより鮮明にスキャニングし、周囲のデータを網膜に投影し視界を確保してから私達はゆっくりと目的ポイントAに来ていた。
『敵機の機影は有りませんが油断だけはしないでくださいね』
コトネさんが無線でオペレーションしてくれている。更に
『リリィ。もし奴らが来ても、今回は救助に行けない。だから……』
今回はお留守番のメガイラちゃんもオペレーションスタッフとして強力してくれていた。
「おっ!なぁメガイラ!アタシ!アタシには?」
アリアが無線に割ってはいるが
『私のオムライス……』
と言い残すとメガイラちゃんはブチッっと通信を切った。
アリアは頭を掻く。
「あー、まだ勝手に食べた事怒ってんのかよ!あれは一種のコミュニケーションで……」
「自業自得じゃない」
ディアナさんが笑みを零す。
その時、敵機接近のアラートが鳴り響く。
ディアナさんの遠隔武器に、プロメテウスの機体が引っ掛かったのだ。
「……プロメテウスの…ハウンドを確認。
おまけに二機も……もしかしたら1箇所目で当たりかもしれないわね」
ディアナさんは私達にまだ動かない様にハンドサインを出した。
「……なぁリリィ」
アリアが神妙な面持ちで話しかけてくる。
「……どうしたのアリア」
私は何事かとアリアの方を向く。
「あのハンドサイン何だっけ」
「……アリア……」
私はジト目でアリアを見る
全くこの子は……
「ごめんて」
アリアは申し訳無さそうに肩を落す
「あ、貴女たち!」
もう……私までディアナさんに小声で怒られちゃったよアリア……
「いや…ごめんて」
しばらくあちらからのリアクションがあるか身動きせずに居たが、ディアナさんが攻撃の合図を出したことで私は一気にスラスターを放出。
一瞬遅れてアリアも追走して来る。
新しい武器……コンバット・メイデンの力、試させて。
私は新たなる剣に力を込めるとスラスターを全力で吹かせ、最高速のまま一気に敵機を切り払った。
今までの剣と違い、斬る瞬間に刃が展開し中からエネルギーブレードが放出される。
そして内蔵された小型スラスターにより加速した刃は真っ直ぐハウンドに向かう。
その時、私はハウンドの中の無もなき少女が頭をよぎる。
「っ……!」
一瞬躊躇するも、魔力結晶が翡翠の光を放つ。
──そうだ……この黒い棺に囚われた少女を救う為に。
生体ユニットごと、ハウンドを両断した。
両断後もそのまま自身の速度が落ちなかった為、スラスターを逆噴射しながら足を地面に擦り付けて、火花を散らしながら急停止した。
アリアは新型のエネルギークローで敵の両手を両断し戦闘力を奪った後、凄まじいクロー裁きで、そのまま両足も流れるように細切れにし、胴体を残してハウンドを無力化してみせた。
「へへーん!油断してなきゃお前なんてこんなもんだぜぇ!!」
アリアは勝利の雄叫びをあげた。
私もコンバット・メイデンの性能に確かな物を感じていた。
……この剣なら……
私達が振り返るとディアナさんが頭を抱えていた。
……そうだった。威力偵察任務だった。
私とアリアは再び怒られた。
『……まあいいわ。
ハウンドが単機で落とせる事、そして新たな武装の戦闘データが取れただけでも収穫よ。
ディアナ、残骸から情報を吸い出せる?』
ハカセはひとまず及第点をくれた。
「……承知しました。」
ディアナさんは地面に膝を付くとアリアが倒したハウンドの胴体をスキャニング。
敵の情報を吸い出し始めた。
「……ハカセ、出ました。敵本拠地では有りませんが、この機体を製造した拠点の座標を特定出来ました。」
ハウンドからもたらされた座標は市街地からそう遠くない場所を示していた……
『……市街地の至近距離ね。
奴ら、もしかしたら民間人を盾として意識しているのかもしれない。
……全機、作戦を変更。
威力偵察を打ち切り、このまま当該製造拠点の強襲破壊任務に移行しなさい。』
「ハカセ…でもそいつは…」
アリアが続けるであろう言葉は明確だった。
──民間人の被害が出る可能性がある
でも……
──市街地の近くなら、なおさら早く終わらせなきゃ。
二度と誰も、あの黒い棺に囚われないように。
黒い棺が、罪を犯さぬように。
「ハカセ、了解しました。……これから、最短経路で目標に向かいます。」
私が即答するとアリアがこちらを見た気がした。
私はそんな事は気にも留めず、コンバット・メイデンの柄を握りしめる。
まだ熱を帯びた刀身が、私の心と同じように静かに鳴っていた。
プロメテウスの製造拠点……戦火を産む負の源。
少女達をパーツに作り変える邪悪。
それを一つでも破壊すればそれだけ傷付く人が減る。
私は自身の内から沸き上がる"正しき使命感"にどんどん満ちていく。
……熱い。
メガミドライヴの中の魔力結晶が、私の思考に呼応するように脈動し、光を強めていく。
沸き上がる感情と共に飛行速度を上げていく。
スラスターからは悲鳴にも似た甲高い音が鳴り始めていた。
(リリィ……?…お前……)
アリアは市街地が近いと聞いたのに、それを気にも留めていない相棒……
リリィの後ろ姿に、何か嫌な物を感じていた。
おや…リリィの様子が…
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