第14話 任務遂行の為に
私の腕の中で散々泣いたアリアだったが、気恥ずかしくなったみたいで急に
「うぉらっしゃー!!」
と顔を真っ赤にして飛び出てきた。
「あー!やめだやめだ!とにかく今まで通り敵を倒すのに変わんないんだよな!
やってやろうじゃん!」
アリアは目を瞑ったまま両手を上げつつ叫んだ。
……またアリアは無理をしてる……
ディアナさんも泣き止みほんのり笑顔になってくれた。
不器用なアリアの、真っ直ぐな笑顔を守りたい。
アリアだけじゃない……ディアナさんやメガイラちゃん、コトネさん……ハカセだって……
ん?ハカセって笑った事あったかな?
……とにかく、みんなの笑顔を守るためには、私が誰よりも確実に
───最短で敵を倒さなきゃ……
そうすれば……皆が傷付くよりもずっと早く……
私は改めて皆の方へ視線を向ける。
うん……間違ってない。
───きっとこれが最適解なんだ。
私達が落ち着いた頃、見計らうかのようにハカセとキュベレさんが病室に入って来た。
「ん…ちょうど良いわ、メカニカルワルキューレが全員揃っているなら……都合が良いわね」
ハカセはいつも通り…
「ハカセ?全員が揃っているのは確認済みでは?しばらく入室をせず立ち止まって……」
キュベレさんがそう言うとハカセはキュベレさんの脇腹を小突いた。
「いたい」
「……コホン。とにかく、あなたたちの回復状況を確認しに来たのよ。
それと……次の作戦、プロメテウスの本拠地特定のための、威力偵察についての簡易的なブリーフィングを始めるわ」
ハカセは咳払いして一呼吸置くと何時もの感じに戻りガラス板を思わせるタブレット端末に目をやる。
威力偵察──敵とあえて交戦し、その位置、規模、配置、戦力などの情報を収集する軍事作戦……。
小規模な交戦をこちらから仕掛けることで、敵の反撃から情報を得ようというのだ。
「あのさ…ハカセ。」
その時アリアがブリーフィングを遮ってハカセに質問した。
「作戦の説明が先……」
ハカセが言いかけるがアリアは食い気味に遮る。
「聞いてほしいんだ。お願いしますハカセ。」
アリアは普段絶対にしないであろう敬語とお辞儀をした。
「……手短に。」
ハカセはタブレットを下ろしアリアの話を聞いてくれるみたいだ。
「今回……凄い怖かったんだよ」
「………。」
「アタシだけじゃない。ここに居るワルキューレも、スタッフの皆も、凄い怖かった筈なんだ。」
「……えぇ。」
ハカセは目を閉じる。
「……誓ってほしいんだ。私達は、誰一人、あんな事にならないって。」
あんな事……あの少女の様に生体部品として消費される事……
「………ええ。誓うわ。あなたたちを、あんな無様な姿にはさせない。
……あんな…美しさの欠片もない姿……
私が、私自身の命に代えても」
ハカセは真っ直ぐアリアを見つめゆっくりと皆の顔を見渡す。
「……そっか!ありがとうハカセ!」
アリアはニカッと笑った。
「……ではハカセ、改めてブリーフィングの再開をお願いします。
プロメテウスの本拠地特定、必ず遂行してみせます」
ディアナさんも赤い瞳に普段の凛々しさが戻った。
「そうね、では改めてブリーフィングを始めるわ。キュベレ」
キュベレさんは小型端末を操作するとホログラムを展開。
既に何か所か目星が付いていることが分かった。
「これらはあくまで予測であり、多少の振れ幅は有りますが、これまでのプロメテウスの動きから私とメガイラが導き出しました。」
「……凄いねメガイラちゃん」
私がメガイラちゃんにそう言うと、今までと違い、メガイラちゃんは俯いてモジモジしている
「先の強力な敵機、解析データから機体名"ハウンド"がまた出てくる想定で新たな武装をワルキューレ各位に配備するわ。」
「まずアリアは最新型のクローユニットよ。新型対策と言うか元々開発していたの。」
アリアは提示されたデータに目を輝かせる。
これまでのヒートタイプではなく、ビーム刃のクローユニットだった。
「かっけー、いや、マジでかっけーよハカセ!」
本当に嬉しいらしく先ほどの繕った笑顔では無く心の底から嬉しそう。
性能よりデザインしか見ていなく、ハカセの解説をアリアはガン無視している。
「次はディアナね。
貴女は射撃戦特化の装備故、敵に接近された場合の補助ユニットよ。
メガイラの遠隔武器の技術を応用した物で、デバイスの量子コンピュータによる補助機能で脳波により簡単な指示で操作可能よ。」
ディアナさんの武装は4基のバインダーユニットで攻撃に使用しない時はスラスターユニットになるんだとか。
「これは言わば、私達を護る為の力……ありがとうございます。ハカセ」
ディアナさんがそう言うとハカセはタブレットで口元を隠しながら
「……あくまで貴女達に欠けられたら困るから戦力増強目的でしか無いわよ」と言っていた。
「メガイラ、貴女はもう少し調整をさせて。
まさかあんな機体状態で実戦に出るなんて想定外過ぎたわ。
合理的判断の出来る子だと思っていたのに……残念だわ」
ハカセはメガイラちゃんを口では悪く言っているのになんだか嬉しそうだった。
「リリィ……貴女の装備だけど……リリィ?」
ハカセは不意にリリィの顔を覗き込む。何か今までと違う雰囲気を感じた気がした。
「……?なんですかハカセ」
しかしハカセは気の所為と首を振り話を続けた。
「いえ……貴女の装備は、貴女の想定以上の高い接近戦能力から新たに剣を再設計したわ。
貴女の戦闘スタイルである高速飛行からの斬りはらいに耐えうる設計を行った、名付けて
───コンバット・メイデン」
コンバットメイデン……両刃の大型の剣であり剣自身に備え付けられた小型スラスターにより攻撃能力を高めた剣だとか。
「ありがとうございます、ハカセ。この剣なら……」
「……ええ。でも忘れないで。これは貴女が『生き残る』ための剣よ。
効率を求めるあまり、自分を壊しては……意味がないわ」
ハカセはリリィに何か嫌な物を感じ、忠告した。
「……分かっています」
私はただひと言だけ、そう答えた。
「準備が出来次第、出撃よ。
……いいわね、これはあくまで威力偵察。
……深追いは厳禁よ」
こうして威力偵察の為のブリーフィングは終わった。
出撃の準備をしているとアリアが話しかけてきた。
「リリィ?…その、さっきは、怒鳴っちゃってごめんな?
アタシ、お前を嫌いになったとかじゃなくてな、その…」
「大丈夫……ちゃんとわかってるよ。偵察任務頑張ろうね。相棒」
「っ…っ…!おう!!!」
アリアは今日1番の笑顔を見せてくれた。
しかし──鏡に映るリリィの顔はまるで無表情に見えた。
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