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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第一章 プロメテウス編
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13話 追憶(サイサ)


……おそらく、データが抜き取られたのだとしたら、あの時……それは今から約20年前……私が親友を殺し、心身共に衰弱していたあの時。

あの時の私はデータの管理どころでは無かった。唯一無二の友、共に生きた家族と呼ぶにふさわしい存在を自らの手で殺めたのだから。


──未来を明るくする為の、抑止力となる筈の力が、奪うための力に変わった瞬間だった


ハカセは思い出す。かつて互いの技術を「比べっこ」して笑い合っていた、唯一無二の幼馴染にして"家族"だった、サイサとの日々を。



──全ては、あの美しくも禍々しい魔力結晶「女神の欠片」との出会いから始まった。

魔力結晶を見つけた私とサイサは震え上がった。戦争孤児としてお互いに戦争を憎んでいた私達にしか認識出来ないそれに、世界をも覆す程の力があったのだから。

私達は直ぐに魔力結晶を核とした基礎理論を構築し魔力結晶と適合した少女にしか起動出来ないエネルギー機関『メガミドライヴ』を製造。

それを最大限活かす為、魔力結晶の力を引き出せる少女のみが装着出来る機械の鎧、『メカニカルワルキューレ』を開発した。

──しかし、後の研究で魔力結晶には人の内に眠る感情を爆発的に膨れ上がらせる副作用が有る事が分かった。サイサは、親友はその干渉を受け、彼女の場合はおそらく、元々あった感情の、私への「嫉妬」と自身の「美学」の歪な増幅に耐えられずに飲み込まれていった。

それに気付けたのは親友を殺めてからしばらくしてからだった。


私は最強の揺るぎ無い抑止力として、サイサはこの争いの絶えない世界を変える力として。

サイサがテロ行為を計画した事で2人はぶつかり合った。

空を舞う翡翠と紫の光。史上初であろうパワードスーツ同士の決戦。


そして最後にサイサを貫いた、この右手の感触。

挿絵(By みてみん)

今も震え続ける右手と、解析モニターに映る

プロメテウスの新型機を、私はただ見つめていた。


───



私の病室にアリアとディアナさんが来てくれた。

「……いやぁ~今回の敵は強かったなぁ。ちょっと……油断しすぎたぜ」

アリアは頭を掻きつつ普段のトーンで喋る。

「ハカセからのデータで敵は魔力結晶の力を使った新型って書いてあったでしょう。仕方ないわよ」

ディアナさんも続けて何事も無いかのように話す。


──二人は肝心な部分の話を避けている。


「次アイツが来たら絶対負けないぜ!」

アリアは貼り付けた様な笑顔を浮かべていた。

「……アリア。あの機体のスキャン結果、『人間』って、出てたよね」

私のその一言で、アリアの笑顔が凍りつく。ディアナさんが視線を逸らす。

「逃避は、生存確率を上げません。……あの機体の中身は、私たちがなるかも知れなかった姿です」

メガイラちゃんは続けて2人に告げた。

「っ……あー、あとさ、メガイラ!お前こないだの戦闘で凄い強かったらしいじゃんか!今度模擬戦してくれよ!」

アリアは笑顔を崩さず続ける。

「……っ」

ディアナさんは私とメガイラちゃんの話を聞いて俯いてしまった。

「アリア……」

私は痛々しい相棒見ているのが辛かった。

「だってさ、これからも戦争は続くしさ、平和の為には、アタシ達、敵は倒して倒して倒さなきゃ……だろ……だから」

「……アリア、もういいわ……私も……本当は怖いのよ。あの時、スキャン結果を見た瞬間、自分の腕が、動かなくなったの……」

ディアナさんは涙を零しながらか細く話す。そこにいつもの凛々しいお姉さんは居なかった。

「っ……っ!!リ、リリィ!!そう言うお前は、怖く……無いのかよ!!資料見ただろ!!脳だけだぞっ!!アタシ達と年も変わらない様な女の子のっ……脳だけなんてっ!……そんなの……ひ、酷すぎるよぅ……」

泣き崩れるアリアを私は受け止める。ごめんねアリア……私達が落ち込まない様に、明るくしようとしてくれたんだよね。そういう優しい所、大好きだよ。


でも……


「私も……怖いし……悲しいよ……でもね……でも……」

私も思わず泣き出してしまう。

年上が全員泣き出した事でメガイラちゃんは珍しくオロオロしていた。


「倒すんじゃない……助けよう。こんな悲しいこと、私たちの代で終わりにしようよ」

私は泣きながらも必死に伝える。

半分はアリアとディアナさんを励ます為の方便。

結局、ああなってしまった少女達を救う手立てはない。

ああなった少女は脳が電気刺激や薬品によりほぼ焼き切れて自我は既に消失しており、救済は医学的にもほぼ不可能に近い…ハカセの資料にはそう記されていたから。


「……でも、だからこそ、救わないと。……せめて、彼女達が、一番憎いはずの、戦争の当事者になる前に。」


方便だとしてもこの思いは、本当だから。



病室の扉の外で、ハカセはすべてを聞いていた。右手が震えてドアに触れられない、

何より、病室に入る勇気が無かった。

震える右手を反対の手で強く押さえつけながら。


「……救う、か。……リリィ、あなたは……私と……同じ道を……」


ハカセは20年前にサイサを殺める事で世界と彼女を救う道を選んだ。リリィの救済とはそれと同義ではないのか……救ったのか、ただ殺したのか…

あの選択が正しかったのか、

——ハカセは今も答えを出せずにいる

ちなみにですが、前日譚のメカニカルワルキューレ・ゼロはここのプロットから生まれました。

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