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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第121話 依頼


ダルケンとの作業を終えたリリィは彼に挨拶を交わすと火薬庫を後にした。


未だ瓦礫撤去は続いており、その中でも巨腕……ギガンティックアームで瓦礫を持ち上げているメガイラが見えた。


リリィに気付くとメガイラは瓦礫をゆっくりと地面に降ろしてから抱き着いてくる。


リリィが目覚めた事は既に他メカニカルワルキューレに通達されていたが、やはり自身の目で見なければ不安で仕方なかった。


「リリィ…!良かった!本当に良かったです!」


泣きながらリリィを抱きしめるメガイラの頭を優しく撫でる。


妹分に心配をかけてしまった事を申し訳なく思ってしまう。


「ごめんね……勝手に無茶した挙句、メカニカルワルキューレにすらなれなくなっちゃって……おまけに私のせいで足止めになっちゃったみたいで……」


ヴァルキリーの魔力結晶はそれこそ死んではいなかったが、それでもやはりメカニカルワルキューレを動かせる出力は無いらしく、エクゾスケレートの開発は急務だった。


これに目処が立たなければヴァルハラはこの場から移動が出来ない為、リリィは尚更申し訳なく思ってしまう。


「良いんです……貴女が生きている……それが何より嬉しいんですよリリィ……」


メガイラの温かな瞳にリリィも笑顔で返せた。


その時、リリィ達の後ろから誰かに声をかけられた。


「君は……瓦礫から助けてくれた……」


リリィが振り返るとそこにはリリィがパワードスーツで瓦礫から助けたアトラス兵士が居た。


足こそギブスで固定していたが、松葉杖をつきながらもしっかりと自分の足で立っている彼を見てリリィは胸をなで下ろした。


「……あの時はありがとう。君が居なければ俺は今頃死んでいたよ。


……最初に睨んでしまった事、許して欲しい。」


彼のその発言で彼がアトラスに来た時に睨んできた兵士の一人だと理解出来た。


しかし───リリィが睨まれたのはネガ・メガミドライヴを使うティターニアと何ら変わらない組織という自身の発言によるものだった為、リリィも彼に謝った。


「私の方こそ……貴方達の事情も知らなかったのに……


あんな失礼な発言をしてしまって……本当にごめんなさい……貴方達の境遇はダルケンさんとリーナ博士から全部聞きました……


本当に……すみませんでした。」


リリィが深々と頭を下げたのを兵士は穏やかな表情で見つめる。


「……俺だけじゃない。今アトラスに居るやつは少なからず君達メカニカルワルキューレを羨ましく思っていたんだ。


魔力結晶に選ばれた存在。苦労もなくティターニアの兵器を倒せる存在って。


でも……君達メカニカルワルキューレの戦いを生で見て実感したよ。


───まだ年端もいかない少女達が最前線でティターニアを食い止めてくれていた事、

君達も苦痛や苦悩の末に今ここに居ることを」


兵士の言葉に隣で聞いていたメガイラも微笑んだ。


リリィが眠っている間に他のワルキューレ達もアトラスの事情は理解出来ていた。


───自分達の様に理不尽に平和を、家族を奪われた者達。


それどころか、メカニカルワルキューレになれた自分達とは違い、戦う為の力も無く意思のみでここまで来た人達。




───こうして瓦礫を撤去しているメガイラも、今も空で警戒を続けているルキアとノアも……


傷付いた兵士達に治療しているディアナとソフィア……


これ以上彼らの様な悲しみを産まないためのメカニカルワルキューレなのだと、皆の意思は同じ方向を向き、より強固なものになっていく。


「……私達は目指している方向は同じはずです。……必ず終わらせましょう。私達で」


メガイラは兵士に右手を差し出すも、彼が松葉杖をついていることを思い出し右手を引っ込めようとする。


するとリリィは兵士に肩を貸してメガイラと兵士は握手することが出来た。


「ははっまさか……白亜の流星にそう言ってもらえるとは思わなかったよ」


メガイラの二つ名が兵士の口から飛び出しメガイラは思わず赤面し咳払いしていた。




兵士と別れた後、国連事務総長のソーマがリリィの元に駆け寄って来た。


「リリィ君。先の戦闘では本当にありがとう!君達メカニカルワルキューレの戦いにトニオも大変感銘を受けていたよ」 


「ありがとうございますソーマさん。

でも、事務総長の貴方がわざわざ私のところに来たのは何か理由があるんじゃ?」

リリィは当然の疑問をソーマにぶつけた。


ソーマがわざわざ駆け寄る理由も、リリィに話しかける理由も分からなかった。

もちろん事務総長として労いの意思はあるのだろうが……


「あぁ……話が早くて助かるよ。


僕がアトラスに来たのは彼らにある依頼をする為だったんだ。


……この惨状ではそれも難しいけど……


だからこそ君達メカニカルワルキューレが生きていたとなったら、ぜひ君達にも依頼したくてね。」


リリィは思わず首を傾げる。


その反応を見てソーマも首を傾げた。


「えっと……なんでその話を私に?」


「えっ…?君はメカニカルワルキューレのリーダーなんじゃないのかい?ベルも信頼しているみたいだし、アトラスに名指しされていたから僕はてっきり……」


「リーダー?私が……?」

リリィはそんな気は全く無かった。


リーダーならそれこそ最年長で後輩の指導育成もこなすディアナが適任だと思っていた。


「別にリリィがリーダーでいいんじゃない?」


突然現れた声にリリィが振り返ると、そこにはフィレアが頭の後ろで腕を組んで壁に寄りかかっていた。


「フィレアちゃん……?」


リリィはフィレアから少なからず良く思われていない自覚があった。


だからフィレアの発言に思わず驚いてしまった。


「まぁ……トーナメントでもそれなりに強かったし?


さっきのデカブツだって皆が道を作ったけど、結局……倒したのはリリィだし……」


そこまで言ってフィレアは寄りかかっていた壁から離れるとリリィを真っ直ぐと見つめてきた。


「だから……えっと……その……」

急にしどろもどろし始めたフィレアの顔を覗き込むとフィレアは顔を真っ赤にする。


「と、とにかく!あんたがアリアさんの隣に居る事は許すって言ってんの!」


リリィはフィレアがトーナメントの前に放ってきた刺々しい発言の数々を思い出していた。


……実はちょっと傷付いていたのは内緒だ。


しかし───少なくともフィレアが自分を認めてくれた事が分かり嬉しかった。


「……ありがとうね。フィレアちゃん」


リリィが笑顔で礼を言うとフィレアはバカ!と叫んで走って行ってしまった。


リリィはなんとも言えない表情でフィレアを見送るとソーマに向き直る。


「……リーダーって認められた娘にバカって言われましたけど」


「ま、まぁ……一種の愛情表現じゃないかな?」

ソーマは苦笑いを浮かべるも咳払いして本来の会話に戻す。


「それで……依頼のはなしだけど、これは君達の船、ヴァルハラの中でベルには既に伝えたんだけど……実働する君達にも直接と思ってね。」


ソーマは一呼吸置くと言葉を続ける。



「……君達メカニカルワルキューレに要人救助を依頼したいんだ。」



ソーマからの依頼……それは反撃の狼煙となるのか、今のリリィには分からなかった。

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