5−25:意外と珍しいランク4の装備珠
さて、そろそろお楽しみのドロップ品分配タイムだ。ゴブリンキングはなんだかんだで強敵だから、ドロップ品も貴重なものばかりになる。
「大魔石が1個に、装備珠が5個、スキルスクロールが3個か……」
ちなみに、ホブゴブリン2体分のドロップ品はここに含まれていない。そちらも改めて確認する必要はあるが、まずはゴブリンキングの分だけ確認しておこう。
「………」
赤くてデカい大魔石を横目に、まずは装備珠を順番に覗き込む。
……ランク4の装備珠が3つ、これは赤・青・黄の3種類が揃ってるな。前回討伐時もそうだったので、どうやらこれは確定ドロップらしい。
続いて、ランク5の武器珠と防具珠が1つずつ。前回はランク5の武器珠が1つだけだったはずなので、1個は確定だが2個目は確率ドロップといったところか。これから何度かゴブリンキング戦をこなせば、ドロップ率も少しずつハッキリしてくることだろう。
「………」
それにしても、ゴブリンキングは強さのわりに装備珠のランクが低い気もするな。第20層のボス・オノドリムがランク4の3色装備珠をドロップした (確証は無いが、おそらく確定ドロップだと思う)が、ハッキリ言ってゴブリンキングより弱かった。オノドリムは弱点が見た目でバレバレなうえ、距離を開ければほとんどの攻撃が届かなくなってしまうからだ……ファイナルアタックも無いしな。
これでもし、次の第30層ボス辺りがゴブリンキングと互角の強さを持っているとしたら……今度は、権藤さんの反応に違和感が出てくる。権藤さんはもっと深い階層にも行っており、ボス含む様々なモンスターも見てきているはずだが……それでもなお、ゴブリンキングのメテオストライクが一番強力な攻撃だったと言っている。あの不可避の一撃が、だ。
……単純に比較はできないが、俺の予想ではゴブリンキングにはランク6の装備珠を3色ドロップしてもおかしくないくらいの強さがあるんじゃないかと、そう見ている。
いくら特殊ボスとはいえ、序盤のモンスターが高ランクの装備珠を大量ドロップするのはさすがにマズいと思ったのだろうか? その辺、ダンジョンマスター的な存在が難易度調整のために、あえてそう設定している可能性はある。代わりにスキルスクロール【オートプロテクト】がやたら高性能だから、それはそれでバランスブレイカーな気がしなくもないけどな。
「………」
……さて、それはともかく。装備珠をどう分配するか考えつつ、スキルスクロールにも目を向ける。3つあるスキルスクロールに、それぞれ触れて中身を確かめてみた。
――スキル【鼓舞】は既に習得しています
――スキル【杖術】は既に習得しています
――スキル【地魔法】を習得しますか?
「【鼓舞】に【杖術】、あとは【地魔法】か……」
大変残念なことに、【オートプロテクト】は無かった。いや、本当に残念だ。習得しているだけで弱点でない物理攻撃をほぼシャットアウトでき、魔力の消費も無いというのは【鼓舞】や【杖術】と比べても圧倒的な性能を誇っている。ただ、その分ドロップ率も低いのかもしれないな。
だが代わりに、今回は【地魔法】のスキルスクロールをドロップしている。ゴブリンキングの【地魔法】による攻撃は強力なものが多かったが、俺としては【地魔法】の可能性はそれだけに留まらないと思っている。
……ちなみに、千鬼王の王冠はドロップしなかったようだ。非常に残念だ。
「それで、ドロップ品の分配ですが……まず、大魔石は権藤さんに預けようと考えています」
「ん? なぜだ?」
「エレベーターに乗ってゴブリンキングの間へ行くには、大魔石か王冠のどちらかが必要です。移動手段は分散させて保管しておくべきかと」
王冠は俺が持っているが、万が一ということもある。いつでも挑戦できるよう、大魔石は権藤さんに預けた方がいいだろう。
……フェルとピーちゃんが魔石を食べたそうにこちらを見ているが、残念ながら今回は我慢してもらう。確かに大幅な戦力増強にはなるが、状況が状況だからな。
「ん〜、なるほどな。ただ、それなら大魔石を買い取りさせてもらってもいいか? 以前ならまだ良かったが、今だと特定個人からの過剰な利益供与だと思われてしまうからな」
「……あ〜、なるほど。確かにそうですね」
「互いにそのつもりは全く無いが、念のためだ。痛くもない腹を探られるのは、恩田探索者だって嫌だろう?」
「はい」
"以前"というのは、迷宮関連基本法が施行される前の時期を指しているのだろう。あの頃は確かに自由 (三店方式なんていうグレーゾーンがまかり通るくらいに……)だったが、その分自己責任の範疇もかなり広かった。
今はその辺、法律で厳しく規制されている。開発局長の権限も大幅に強化されており、迷宮開発局の秩序を保つためなら独自に逮捕・拘留や処罰を行っても良い権限さえあるのだ。
……そんな立場の人がもし、特定個人や組織と深く繋がり過ぎてしまったら? 公共の福祉だのなんだのを一切無視して、その特定個人や組織のためだけに権限を行使するようになってしまう。端的に言えば、汚職が蔓延する事態になるわけだ。
そうならないためには、互いに節度というものが大事になる。仲良くするのはいいが、決して踏み越えてはならない一線というものがあるわけだ。
「では、大魔石はカウンターで買い取りしてもらいますね。"アイテムボックス・収納"」
「ぐぁぅ……」
「ぴぃぃ……」
フェルとピーちゃんが、とても残念そうな表情を浮かべる。申し訳ないな、ホブゴブリンの大魔石は貰うつもりだからそれで我慢してくれ。
「それで、装備珠の分配ですが……」
「横からすみません。ランク4の防具珠だけ頂くことは可能でしょうか?」
高城さんがそう言う。
「パーティ内で話し合いましたが、我々だけではゴブリンキングに勝てなかっただろう、という結論になりました。その状況で多くを求めるつもりはありません。
……ですので、我々はランク4の防具珠だけ頂ければ十分です」
「いや、それはダメです。貢献度にあまりにも見合わない。少なくともランク5の装備珠1つか、ランク4の装備珠2つを受け取って頂かなければダメです」
トドメを刺したのは伸子さんだが、その前にダメージを蓄積させたのは高城さんパーティの皆だ。あれでゴブリンキングの注意が分散したことで、伸子さんの一撃が綺麗に入ったのだ。その貢献度は十分に高い。
「では、ランク5の防具珠を頂けますか? 澤井の守りを固めるために必要ですので」
「……え?」
澤井さんが疑問の声を上げているが、俺も同じ考えだ。防具珠を求めるのであれば、タンク役である【聖騎士】の粟野さんに使ってもらうのが普通だろう。
「あの、高城さん? なぜ私なのでしょうか……?」
「うちのメンバーには、それぞれ大事な役割があるが……特に澤井が果たす役割は大きい。何より、【癒し手】のギフトは他者への回復魔法に大きなプラス補正がかかるが、自身への回復魔法には何も補正がかからない。そうだな?」
「え、ええ」
……なるほど、さすが高城さんはよく考えてるな。
粟野さんの守りは確かに大事だ。ただ、【癒し手】のギフトがそういう仕様なのであれば、澤井さんの守りを固めた方が確かにパーティは安定するだろう。そういうことなら俺も納得だな。
「では、防具珠ランク5はお渡しします。ご確認を」
「ありがとうございます……はい、確かに確認しました」
高城さんが防具珠を覗き込み、小さく頷いてから持っていく。これで、高城さんパーティがより良い方向へと向かってくれることを願おう。
「……さて、それならランク5の武器珠は伸子さんのものだな」
「ええっ!? それこそ貰いすぎっすよ!? ボク、そこまで大きな貢献はしてないっすけど!?」
「ゴブリンキングにトドメを刺したのは誰だったかな? いくらゴブリンキングにダメージが蓄積していたとはいえ、その隙を突いて強力な一撃を叩き込むのは並大抵のことじゃない」
「あ……」
ゴブリンキングのことを、弱いだのザコだのと散々煽り倒したが……実際のところ、ゴブリンキングは相当手強い。懐に飛び込むのは勇気が要る相手だ。
……あえてここでは言わないが、朱音さんが死にかけた相手だからな。弱いはずがないのだ。
「九十九さん、帯刀さん、それで構わないな?」
「問題無いのですよ」
「私も問題ありません」
「え〜っ? 高良さん、私には聞いてくれないの?」
「朱音さんは、目を見たら分かるからな」
「……♪」
……なんてキザったらしい台詞を吐いてみたが、実際は目を見なくても分かる。
朱音さんは既にランク5の武器を使っていて、今さらランク5の武器珠など気にするはずがないのだから……。
「というわけで、これは伸子さんのものだ。遠慮なく受け取って欲しい」
「……あざっす!」
これで、伸子さんの打撃力はさらに強化されることだろう。
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