4−103:ここ、タイパ最強の狩場かも?
中央に赤いカーペットが敷かれた、長い廊下の真ん中辺りで。
――ゴォォォッッ!!
「……ぐぉぅ♪」
人間サイズに変化したフェルが、ガーゴイル3体から吐きかけられたファイアブレスを涼しげに浴びている。まるで人間がシャワーを浴びているかのように、フェルはとても心地よさげな様子だ。それでいて炎を後ろに通さないよう、翼でうまく受け流してくれている。
同時に、俺たちから見ると射線をフェルに塞がれてしまっている格好だ。ガーゴイルの炎は俺たちに届かないが、俺たちの攻撃もまたそのままではガーゴイルに届かない状況にある。
「"バースト・ハイドレート"!」
――ヒュッ!
――ガッ!
――パキンッ!!
「よっし、ガーゴイルの目を砕いたのです! やっちゃえフェル、なのです!」
……だが、九十九さんにとってはその程度の障壁など、無いも同然だったらしい。直球で狙えないなら変化球で当てればいいとでも言わんばかりに、炸裂する氷礫を曲げて飛ばし、ここからは視認できないガーゴイルの目へと正確に着弾させたようだ。何かが割れた音とファイアブレスが止んだことを見れば、結果は一目瞭然であろう。
――ドドドドドッ!!
「ぐぁぅっ!!」
――ドガァッ!!
――ボフッ!
フェルが正面のガーゴイルに素早く駆け寄り、右ストレート一閃。打撃をまともに食らったガーゴイル1体が、バラバラになりながら廊下の奥へと吹っ飛んでいった。もちろん、すぐにドロップアイテムへと変化したのは言うまでもない。
――ドガァッ!
――バギィッ!
――ボフッ!
――ドガァッ!
――バギィッ!
――ボフッ!
残った2体のガーゴイルにもフェルの尻尾薙ぎ払い攻撃が叩き込まれ、体をひび割れさせながら吹き飛んでいく。そのまま、ガーゴイルは壁へと激しく叩き付けられ……あっという間に砕け散り、ドロップアイテムへと姿を変えた。
「ぐぁぁぅぅっっ!!」
フェルの勝ちどきが廊下にこだました。
……城の上階を行き先に選択した俺たちは、城の中を上へ上へと突き進んでいる。階段を上っては通路を守るガーゴイルを倒し、また階段を上っては廊下を守るガーゴイルを倒し……それを繰り返して、通算13体目のガーゴイルを今しがた倒したところだ。
エントランスホールからここまで、経過した時間はおよそ30分ほど。敵として出てくるのはガーゴイルばかりだった。
「おっ? またスキルスクロールがドロップしたな。さっきは【ファイアブレスⅠ】だったが、今度はなんだ?」
「……これは、【ファイアブレスⅡ】のスキルスクロールね」
「ラッキーだな」
ガーゴイルは装備珠を全く落とさないようだが、代わりにスキルスクロールをかなりの確率でドロップするようだ。13体倒して【ファイアブレスⅠ】が1個、【ファイアブレスⅡ】が1個なら相当高確率だと言えるだろう。ハイリザードマンを探し回るより、よほど効率が良い。
……これは、タイパ最高なんじゃないか? 戦い方にさえ気を付ければ、ガーゴイルを倒すのはそこまで難しくないし……ガーゴイル自体の出現頻度もそこそこ高い。同時に複数体が出てくるのもグッドポイントだ。
探索者の実力さえ伴えば、ここは良い狩場になりそうだな。
「それで、【ファイアブレスⅡ】も売るか? それとも誰か使うかい?」
【ファイアブレスⅡ】のスキルスクロールともなれば、売れば相当な金額になるだろう。4人で分けても1人頭100万円はかたい。
だが、その金額を遥か超えるほどに【ファイアブレスⅡ】は有用なスキルだ。コスパの良い炎攻撃を放てるので、牽制に目眩ましに雑魚散らしにと多方面で大活躍するスキルになる。インプを除けば、第10層までの通常モンスターはこれ1つでどうにかなるからな……。
「うーん、そうね……帯刀さんはどう思うかしら?」
「私は【剣術】を貰っていますので、さすがにこれ以上は……」
「そりゃ、1人でレッドキャップを倒したんだから【剣術】を貰うのは当然の権利だろう? 【ファイアブレスⅡ】はまた別だと思うが」
「そうでしょうか?」
ガーゴイルを3体も斬り捨てた人が、一体何を言っているのか……まあ、とりあえず。
「……そうだな、ここは朱音さんが使ってみたらどうだ? この後もガーゴイルが出てくるなら、また入手する機会もあるだろうし」
「……いいの?」
「いいぞ」
スキルスクロールをおずおずと受け取った朱音さんが、それを両手に包んで念じ始める。
……そして、スキルスクロールは白い光となって朱音さんの体の中に入っていった。
「これで、朱音さんもファイアブレスのユーザーになったわけだ」
「早速スキルを試して……みようと思ったけど、ここじゃ意味が無いわね。ガーゴイルばかり出てくるもの」
「そうだな……」
火属性攻撃が効かない相手にファイアブレスを撃っても、魔力の無駄使いでしかないからな。
「試練の間から出るまでの辛抱だな」
「そうね」
アルラウネを焼き払うのは、ちょっと気が引けるしな。第4層に腐るほど居るモンスター共を相手にするのが、精神衛生上も1番良いだろうさ。
「……お? なんか開けた所に出てきたな」
廊下の最奥にあった階段を上った先は、4階分くらいが吹き抜けになった豪奢なホールに繋がっていた。そこの最下層に俺たちは立っている。
これまでとは、明らかに異なる雰囲気の場所……ここからが探索の本番なのかもしれないな。
「どう? 高良さん、何か気配する?」
「相変わらず、上からビシビシと強い気配が漂ってきてるな」
逆に、今俺たちが居る階層からはほとんど気配を感じない。この階層を探索しても、あまり意味は無さそうだ。
それならば、早めに上の階層へと移動したいところなのだが……。
「上り階段が見当たらないな」
ここから見える範囲内には、上り階段が存在しない。上に行くためには、結局のところこの階層を探索するしかないわけだ。
……随分と面倒な構造になっているが、ここが城であることを考えれば当然か。異世界ファンタジー系の作品だと、城というのは単なる貴族共の遊び場になっていることが多いが……現実の城は、防衛拠点だからな。守備側に有利な構造になっているのは当然のことで、この城もそうなのだろうさ。
おそらく、この近くに上り階段は無い。その上り階段も一気に最上階まで行くことはできず、次の上り階段は階層を横断するくらいに離れた場所へ設けられているはずだ。
「………」
ならば、吹き抜けを跳んで上に進めばいいと思うだろう? 高さはあるが、ハイジャンプの魔法を使えば決して実行不可能なことではない。
……下から見える分だけでも、相当な数のガーゴイルが居るんだよな。吹き抜けを囲う通路に大量配備されているから、俺たちが跳んだ瞬間に総攻撃を仕掛けてくる可能性が非常に高い。
フェルに俺たちを持ち上げてもらい、強行突破することもできるが……そもそも、敵がガーゴイルだけとは限らない。フェルの苦手な水・氷属性攻撃を仕掛けてくる敵がもし居たら、フェルごと叩き落とされてしまうかもしれない。それはあまりにリスクが高すぎる。
「……面倒でも、階段を探して地道に上っていくのが最適解か」
「急がば回れと、過去の人も言っているのです。ここは慎重に進むのが吉だと思うのです」
「そうだな、九十九さんの言う通りだ」
そうと決まれば、まずはこの階層で階段を探して――
――ピィ、ピィ……
「……ん? 鳥の鳴き声か……?」
「私にも聞こえたわ」
「確かに聞こえたのです」
「私にも聞こえました」
「きぃ」
「ぐぁぅ」
「ぱぁ」
3人娘が口を揃えて『聞こえた』と言っているし、ヒナタたちも頷いているから俺の聞き間違いではないだろう。
……まあ、人がいなくなってからかなりの時間が経過したであろう場所だ。これだけ周りが自然豊かなら、城の中に鳥の1羽や2羽くらい営巣していてもおかしくない。
……おかしくはないのだが。
「普通の鳥が居るわけないよな?」
「試練の間だもの、普通に考えたらモンスターの鳴き声よね?」
「きぃっ!」
全員で辺りを警戒する。オートセンシングにも【風魔法】にもガーゴイル以外の反応は無く、近くにモンスターは居な――
「――!? みんな、上だ!」
「「「「!!」」」」
唐突に、オートセンシングが動きを検知した。
場所は吹き抜けの最上階で、大きさはかなり小さい。人が吹き抜けから落下しないよう、金属製の手すりが設えられているのだが……手すりの支柱の狭い隙間から全容が分かるほど、そのサイズは小さい。
「一体、何が……」
パッと、動きを検知した方を見て。
「……ピィ?」
赤く燃える小さな鳥と、バッチリ目が合った。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
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