4−98:城門前の戦い
――ザッ、ザッ、ザッ……
「「「「………」」」」
滅びた街の、元は大通りだったと思われる道を歩いていく。この道を進んだ先にお城があり、そこに何かしらのお宝がありそうな気がするのだが……道中でもそこかしこからモンスターの気配を感じ、なるべく見つからないよう息を潜めて移動していた。
今のところ、それはうまくいっているらしい。従来のオートセンシングによるレーザー探知に加えて、今回は遮蔽物の向こう側も探知できるよう【風魔法】を用いたモンスター探知法を併用しているのだが……おかげでレッドキャップとの戦闘以降、モンスターとの戦闘には1度も至っていない。
ただ、【風魔法】を併用するとやはり魔力消費量が多い。オートセンシングだけなら自然回復量が上回るのだが、【風魔法】を併用するとさすがに少しずつ魔力が減っていってしまうのだ。
幸い、【風魔法】に関しては制御がわりと細かく利く。もう少し探知方法の最適化を進めれば、トントンくらいまではもっていけそうだな。
そうして、お城の近くまで無事に到達したわけだが……。
「城門があるな」
お城を守るようにして、石造りの城壁がぐるっと周囲を囲っている。城壁の高さはそれほどでもないが、壁の上端部辺りになにやら怪しい魔術的模様が描かれており、あまり触れたくないような雰囲気を醸し出している。
そして、道の正面には立派な城門。門扉は見た限り全金属製で、とても頑丈そうなのだが……その金属の扉に、大きめの穴がいくつか開いている。1番大きな穴の直径は俺の身長の半分くらいあり、低い位置に開いてるので這って進めば中に入れそうだ。
……ただ、そのまま城門の向こうへ、とはいかないようだ。
「門の前に、何か居るのです」
「金属の鎧に金属の兜、金属の手甲に足甲まで身に付けてるな……探索者か? 結構な重装備だぞ」
「でも、4人も居るわよ? 槍装備が2人と弓装備が2人。ここに入ってる探索者って、確か2人だけだったわよね、高良さん?」
「ああ、確かそうだったはず。ならば、アレは一体……?」
一体……なんて思わせぶりな言い方をしたが、まあ普通にモンスターだろうな。見た目がわりと人間っぽかったので、一瞬だけ探索者と勘違いしたのは否定しないが。
ただ、それにしては装備が画一的すぎる。弓装備なら軽装、槍装備なら重装となる探索者が多い中で、4人も居て全員が全く同じ金属鎧を装備しているのはよほどのことが無い限りあり得ないのだ。
「【鑑定】」
そして、初見のモンスターとなればまずは【鑑定】だ。消費魔力量は確かに多いが、今のところは自然回復分でそれなりに相殺できている。いざという時には、また朱音さんから魔力を貰えばいいしな。
☆
名前:リビングアーマー (槍型)
種類:モンスター
スキル: (スキルレベル3が必要)
属性耐性: 闇 (無効)
状態異常耐性: (スキルレベル3が必要)
弱点: (スキルレベル2が必要)
説明:武具に強い魔力が宿り、意思を持って動き出したもの。通常ダンジョンには現れず、特別な場所でのみ出現するモンスターである。
体が金属でできているため守りが固く、打撃以外の物理攻撃はまともに通らない。なお、鎧の中にある核はとても脆い。
アンデッドではないので、ターンアンデッドや浄化系の攻撃は効かない。
(スキルレベル3が必要)
(スキルレベル3が必要)
☆
「……ん?」
槍型? 確かに、【鑑定】を掛ける時は槍装備の個体に意識を集中させていたが……ということは、弓装備のほうはリビングアーマー (弓型)ということか。レッドキャップと比べると情報開示に必要なスキルレベルが少し低いので、強さ的にはレッドキャップを少し下回る程度だと思われる。こちらは数が多い分、厄介度は数段上だけどな。
あと、ああいうモンスターはアンデッド系として扱われることが多いのだが……それを先読みしているのか、【鑑定】にリビングアーマーはアンデッドではないと言われた。
……それにしても、ターンアンデッドか。某アニメの残念な青い女神様も、アンデッドをそういう魔法であの世に還してたっけか。第25〜29層は、そういう階層だと持永局長からも聞いたし……一応、準備だけしておこうかな。
とまあ、それはともかく。
「金属鎧か……もしかしなくても、雷が効くか?」
金属は電気をよく通す。ならば、雷属性が効く可能性は高い。ゴブリンジェネラルもそうだったので、予測とはいえ確度はかなり高いだろう。
闇属性が無効なので、あるいは光属性に弱い可能性もあるのだが……アンデッドではないらしいので、光属性に弱いイメージがちょっと持ちにくい。やはりここは、雷属性一択だな。
「ここは俺に任せてくれないか? 相手が金属なら、雷が効くかもしれない」
「ええ、分かったわ」
朱音さんから返事が来て、他の皆もコクリと頷く。
……【鑑定】のスキルレベルが上がって、弱点属性がそのまま見れたらこんな手間も掛けなくて済むんだけどなぁ。まあ、無いものねだりしても仕方ないか。
「………」
リビングアーマー共は、まだ俺たちの存在に気付いていない。
手に雷属性の魔力を集中させる。どうせ不意を打つのだから、一撃で仕留めてしまいたいところだ。それなら反撃されるリスクも低いしな。
「"ライトニング・ボルテクス」
――ゴロゴロゴロ……
――カッ!!
「「「「!?!?」」」」
ここでようやく、リビングアーマー共が俺たちの存在に気付いたようだが……残念ながら、もう遅い。既にライトニング・ボルテクスは発動した、あとは耐えるかやられるかだ。
――ドドドドドドドドドドドドッッ!!
「「「「!?」」」」
降り注ぐ雷撃の向こうに、リビングアーマー共の断末魔……まあ、あいつら喋れなさそうなので、俺の想像でしかないのだが……が溶けて消えていく。仮に雷撃を耐えてこちらに飛び出してこれば、俺の【杖術】に雷属性を乗せて叩き返してやろうと思う。
「……ねえ、高良さん」
「ん? どうし……!?」
朱音さんの返事を聞く前に、モンスターの気配を察知した。
「「「「ギャギャギャ!」」」」
「……これ、雷の音でモンスターが近寄ってくるんじゃない?」
「うおっ、忘れてた!?」
「「「「ギャギャッッ!!」」」」
後ろを振り向くと、通常ダンジョンでも見かけるゴブリンアーミーとゴブリンアーチャーが大量に並んでいた。どうやら雷撃音を聞いて、近寄ってきたらしい。
……最近は、雷撃音を聞くと逃げていくモンスターばかりだったからな。ちょっと油断してた、これは猛省が必要だな。
「迎撃するぞ! "ライトニング・サークル"!」
「ああもう、"飛刃・裂花"!」
「灼熱の"バーンストライク"なのです!」
「舞い飛べ、"烈波"!」
「きぃっ!」
「ぐぁぅっ!」
「ぱぁっ!」
――ドガガガガガガッッ!!
「「「「ギャァァッッ!?!?」」」」
敵軍の隊列が整う前に、各々が遠距離攻撃を無造作に叩き込む。若干1名ほど、アイテムを使ったら濃いカットインと共に強烈なカウンターを叩き込んできそうな掛け声を発しているが……まあ、何も言うまい。
……そこからはまあ、なかなかひどい乱戦だった。リビングアーマーが雷撃の嵐から飛び出てこないか警戒しつつ、目の前にいる大量のゴブリンアーミーとアーチャーをひたすら滅していく。普通に第4層のモンスター軍団よりも数が多かったんじゃないか? 一体どこに潜んでたんだか……。
それでも、今さらこの程度の相手に遅れを取る俺たちじゃない。致命打を受けないようケアしつつ、大胆にしかし確実にゴブリン軍団の数を減らしていった。この分なら、ライトニング・ボルテクスが止むまでには殲滅完了できるだろう。
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