第7話 『プレゼント』
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翌日、俺の誕生日のために陛下達がいらっしゃった。
前にエリサ達に会ったのがエリサの誕生日だったので、もうかれこれ一ヶ月ぶりである。どうやらその間に従者をつけられていたらしい。
ルーミリア王国の王族の従者は、基本貴族の次男次女がやることになっている。
従者と言えど、王族の従者になれることはとても名誉なものである。
グレンの従者はパラケルス伯爵家の次男、レオン=パラケルス。元気な子で、ハキハキとしている。
なんと父親が騎士団の第二部隊隊長であり、ヘクトルさんの上司。世の中狭いものだ。
それにガレノス隊長は王国三聖の一人だ。
帝国との戦争の時に活躍した三人の一人で、その中には父上も入っている。
父上の二つ名は『剣豪』。至ってシンプルだが、厨二感がどうしても否めない。
エリサとルナの従者は二人同様姉妹で、ルナが次女のリオーネ嬢、エリサが三女のシャルロッテ嬢。父親は領地の統治だけでなく財務局でも働いており、コーナー財務卿の右腕だとか。子爵から伯爵への昇爵の話も出ているらしい。
それよりも驚いたのが、なんと二組とも性格が似ているのだ。
リオーネ嬢は明るく性格を表に出すタイプで、シャルロッテ嬢は淑やかで子供離れしている。陛下も良く分かっていらっしゃるな。
「レイの従者は女の子なんだな。普通は同姓が従者になるんだが」
「俺の家に代々仕えている家の子なんだ。信頼できるさ」
「レオンもいい奴だぞ。一緒にいて飽きない。リオーネ嬢とシャルロッテ嬢はどうなんだ?」
「私は相性バッチリ!」
「シャルもよく尽くしてくれていて、とても助かっていますよ」
エミリィも実際、悪い子には思えない。ただ、教育上仕事に熱心すぎるというのが問題なのだが。エミリィは少しレオンに似ている所があるな。
というか、さらっとグレンは自分の従者の事を馬鹿にしていなかったか?
今は従者同士で仲良く交友を深めている。レオンもまだ異性といることに何も感じないらしい。元気に笑っていた。
皆と話していると、紅を基調とした大型の馬車が門の前で停まった。どうやらアーノルドお祖父様が到着なさったようだ。
「おお、レイじゃないか! また大きくなったなあ」
「お祖父様! ご無沙汰しております」
中肉中背の健康そうなご老人。
もう七十は越えておられるはずなのだが、そんな雰囲気は全くない。まだまだ健在なようで何よりだ。
「男子一週間会わざれば刮目して見よとはまさにこの事じゃな」
「まだ子供ですから、どんどん大きくなりますよ?」
「ホッホッ! それは楽しみじゃ!」
随分賑やかなパーティーになった。陛下の護衛にお祖父様の護衛が合わさり、門の外には大量の騎士がいる。
サラザール騎士団も中々の粒揃いで、何でもお祖父様が一人一人面接したとか。数はまだしも、質では王国騎士団に引けを取らない。
「アーノルド先生、お久し振りです」
「陛下、頭を上げてください。子供達に示しがつかないですぞ?」
元師弟関係の二人はやはり仲が良さそうだった。そう言えば、陛下が誰かに謙った態度をとったのを初めてみたな。
「レイ君、お久し振り。元気にしてた?」
「僕も、久し振りだねレイ君」
「ロズベルク伯爵にヘクトルさんもお元気そうで何よりです」
「あら、そう言えばアングレン卿は名前なのに、私にはどうして名字で呼ぶのかしら?」
「それは恐れながら伯爵、僕の方がレイ君と仲がいいからでは?」
「あら、それじゃ私とレイ君は仲が良くないって? 失礼しちゃう」
ヘクトルさんとフィオナさん(?)もあまり変化はなかった。しかし、前よりも格段に二人の距離が近くなっているのは気のせいではないだろう。これはもしかしてもしかするかもしれん。
招待した人が全て揃い、庭で立食パーティーが始まった。
俺の意向もあり、いつも誕生日パーティーは少数でやっている。前の仮婚約パーティーみたいな人の多さは嫌だ。面識のない人からの挨拶はいらないし、祝われても何も嬉しくない。この位の人で充分だ。
「じゃあ、最初は僕からのプレゼントだよレイ君。はい、これ」
ヘクトルさんから貰ったのは少し大きめの箱だった。でも、大きさの割には重さがない。
「開けてみてもいいですか?」
「もちろん」
箱には靴が入っていた。サラザール家の紅のラインが入っている。
安くなかっただろうなあ。ヘクトルさんはまだ若いし、貯金のは大丈夫なのだろうか。大切にしなくては。
それから、次々とプレゼントを貰った。
フィオナさんからは魔法書とデザイン重視の照明の魔法具を。陛下からはシンプルなデザインの財布を。父上と母上からは魔法仕様の懐中時計を。使用人を代表してエミリィからベルトを貰った。
フィオナさんが選んだ魔法書ならきっと読みやすくて面白いに違いない。早く自室に籠って読みたくなってきた。財布と時計もそろそろ欲しかった頃だし、完璧なタイミングだ。エミリィから貰ったベルトも積極的に使ってこう。
グレンとルナからは花束を貰った。自分達では用意していないと分かるのだが、やはり手渡しされるとそれだけで嬉しかった。
「レイさま、私からはこれを…………」
「これは、ハンカチ?」
「はい。その、いつも使える物がいいかと思って」
エリサから貰ったのはこれまた紅いハンカチだった。白のラインが入っていて上品さを出している。センスの良さが見れる。
「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」
「はいっ!」
俺の返答が気に入ったらしく、満面の笑みを見せてくれた。やっぱりどこかエミリィと似ている。可愛らしい。
「やれやれ、最後が儂か。これでは下手な物は渡せないのう」
お祖父様がそう言うと、準備をしていたらしい騎士がお祖父様の前に跪く。手には大きい木箱を持っていた。
お祖父様が箱を開けると、そこから長い杖が出てきた。これまた紅を基調とした年季の入った杖だ。
「お祖父様、それは……?」
「これはな、我が妻の使っていた魔法杖じゃよ」
「魔法杖…………」
お祖父様からそれを受け取ると、重くもなく、また軽くもない重量があった。
杖の頭にはとても大きな蒼く輝く魔法石が嵌められている。それが、ダイヤモンドよりも綺麗に見えた。
「ランドルフは剣術馬鹿じゃったからな。渡さなかったのじゃ。陛下からレイの魔力はとても多いと言われていたのでな。どうじゃ、気に入ったか?」
「はい! それはとても! お祖父様、お祖母は魔法師だったのですか?」
「うむ。妻はその時の宮廷魔法師長じゃった。それはそれは優秀な魔法師だったのじゃよ」
もしかしたら、俺の魔力量の多さは先祖返りなのかもしれない。ご先祖様万歳! 転生万歳!
「これは父上に一本取られましたな。さすがの婚約者もこれには敵わなかったか」
「いえいえ! 皆様、本当にありがとうございました! どれも大事にします!」
俺は盛大な拍手の中、両手に持ちきれないほどのプレゼントを抱えて笑った。
社会人になってから祝うことがなかった誕生日。この世界に来て本当に良かったと思える瞬間だった。
次回で遂にターニングポイントが…………