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王太子妃になりそこねた公爵令嬢は、我儘をつき通す  作者: 星見蒼


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21/28

21、公爵夫人は夫を窘める

寝室に行けば、予想通り布団にくるまっていじけている夫がいた。

娘のクラリッサがアリス先生ことアリステア・ペンフォードに会ってから、ほぼ日課のように見る姿。


クラリッサには影がついている。

筆頭公爵家の娘であり、元王女の自分の娘なのだ、当然のこと。

だが、クラリッサ自身は影の存在を知らない。

一生知らせる気はない。

そんな存在に気づかずに生きていく方がずっといい。


「……だからあの男を排除すべきだと言った」


布団の中から夫が訴えてきた。


「まぁ、なんの罪もないのに?」

「たぶらかしている!!」

「クラリッサが一方的に振り回していると、そういう報告だったはずですけれど?」


影から常に報告を受けている。

学園で問題なく過ごせているか、危険はないか。

さすがに会話の内容までは報告させていない。

けれど、それが良くなかったのか。

夫と息子は勝手に想像を働かせて、アリステア・ペンフォードを敵視している。


(……まぁ、わたくしもとても気になっていますけれど)


それでも影の報告を聞く限りでは、彼はきちんと距離を保ってクラリッサに接している。どちらかというと、クラリッサの方が距離感を誤っている。


(過保護にしすぎたのかしら?)


親族以外の異性との交流はほぼない。

そこで遅まきながら恋愛小説を読ませているのだが、どうにもそっちへの反応を示さない。


クラリッサが彼に向けている感情は何なのか?

影からの報告を受けるたびについつい考えてしまう。


(……それにしても)


小説を読ませた効果を発揮した相手が、まさかの夫と息子。

あれには笑わされた。

慌てて口元を扇で隠したが、誰もいなかったら一人で大笑いしていただろう。


「……許さん」


ベッドの中で唸る夫。

昔から嫉妬深いところがある。


「わたくしも許しませんわ」


寝室のソファに腰を掛け、夫を見据える。

がばりと起き上がった夫は賛同を得られたと勘違いしたらしい。

嬉しそうにこちらにすり寄ってくる。


「そうだろう。そうだろう。こうなったら公爵家の力で」

「……その場合は貴方と離縁ですわね?クラリッサを連れてペンフォード家に行こうかしら?」


にっこりと微笑んで見せる。


愕然とした夫の顔。


(……クラリッサは夫に似たのかしら?)


直情的で単純で。


だからこそ、可愛くて愛おしい。


「……いや……あの……」


勢いを失った夫に手を伸ばす。


「わたくしはまだ公爵夫人でいたいですわ?」


そう告げれば、コクコクと夫は頷いた。


「では、クラリッサの夢を潰したりはしませんわね?」

「…………」

「あなた?」

「……う……う……う」


諦めが悪いところもクラリッサそっくりだ。

嫌だという気持ちが見えている。

けれど、可愛い娘の夢を壊させはしない。


「いいですわね?」


もう一度念を押せば、小さな声で「……うん」と返ってきた。

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