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異世界QOL爆上げ生活 〜【万物在庫管理システム】を授かったので、不便なサバイバルを最適化する〜  作者: にのまえあゆむ


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第1話 気がつけば異世界

新連載です。

「……え?」


 ふと目を覚ますと、柏木嘉人は森の中にいた。

 まるで見覚えがない。

 そびえ立つ木々は空を大きく狭め、右を向いても左を向いても道らしい道がなく、そもそも人工物らしきものさえどこにも見当たらなかった。


「なんで俺、こんなところに……」


 嘉人はこめかみを押さえ、思考を巡らせる。運動は苦手だが、情報の整理と管理は得意だ。その才能を活かして、物流会社の在庫管理担当として働いている。


「……あ、そうだ。棚卸しだ」


 朧気に思い出してきた。

 記憶にある限り、嘉人は会社の営業時間が終わった後、倉庫で在庫の最終チェックをしていた。

 手には、長年使い込んできた業務用のタブレット。画面には膨大なデータが並び、不備がないか目を光らせていた。


 なかなかどうして面倒な仕事だが、この手の作業は嘉人にとって苦にならない。どちらかと言えば、得意な部類だ。

 そうして在庫のチェックをして家に帰ったのは深夜過ぎ。帰宅の道中で夕飯を済ませ、安普請のアパートに帰って、着の身着のまま床に就いた──そこまでは覚えている。


 そして、この有様だ。

 どんなに記憶を辿っても、こんな森の中までやって来た記憶はない。


「どーなってんだ、いったい……?」


 兎にも角にもこんな森の中で寝転がっていられる状況ではないだろう。

 起き上がった嘉人は、ともかく人に──いや、せめて人の手が入った道を見つけようと考えて、道なき道を歩き始めた。


「………………」


 歩き始めてどのくらいの時間が経っただろう。

 五分か十分か……そこまで必死に歩き続けたわけではないが、嘉人は目の前の光景に思わず足を止めていた。


 轟々とうるさいほどに音を立てる大瀑布がそこにあった。


 カナダのナイアガラの滝よりも広く、大きく、高い。落ちていく膨大な水は、遠目に見ただけではどこまで落ちていってるのかわからない。

 ようやく巨木が途切れた空を見れば、大瀑布の上空を大小様々な鳥が飛んでいる。中には、プテラノドンより大きそうな鳥の姿まであった。


「なん……だ、こりゃ」


 こんな大瀑布やプテラノドンみたいな鳥は、少なくとも嘉人が住むアパートの近所にいない。いや、車やバス、鉄道を使っても、日本のどこにも存在しないだろう。

 そうなると、考えられることは一つ。


「もしかして……ここって地球じゃないのか……?」


 これが夢でないのなら、そういうことになりそうだ。

 そして、これが夢でないことは嘉人にもなんとなく理解できている。

 紛れもない現実だ。


「異世界転移……ってヤツかぁ~……」


 にわかには信じられないが、思考以外の五感がその事実を嘉人に伝えている。

 呆然と滝を眺めていたが、あまりにも壮大なスケール感に、今さらながら足が震えてきた。落ちたらただでは済まないし、パニックになって騒げば獣が寄ってくるかもしれない。


「……まずは落ち着け、状況を整理しろ……」


 そんな風に自分へ言い聞かせているが、グルグルとその場で動き回って、ちっとも落ち着いていない。

 しかし、そんなときに嘉人はふと気づいた。


「……そうだ、こういうときはアレだ」


 繁忙期に帰りが遅くなった時、テレビを付けっぱなしにすることが多い嘉人は、その流れで深夜に放送していた異世界転生・転移もののアニメを流し見することが多々あった。

 その中だと、こういう場面で口にするお決まりのフレーズがある。


「ステータス、オープン!」


 嘉人の声だけが、虚空に木霊した。


「あ、あれ?」


 嘉人が知っている作品では、その言葉で目の前に自分の能力やスキルなどが記された空間ディスプレイのようなものが現れていたのだが、どうやらこの世界には、そういう仕組みがないらしい。

 確かに、テレビアニメでも全部が全部、そういう世界観ではなかった気がする。

 中には深い理由も特別なスキルもなく異世界に放り込まれ、持ち前の現代知識でなんとか生き延びるハードモードな作品もあった。


 どうやらこの世界も、そんなハードモードな世界なのかもしれない。

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