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神の名を求めて  作者: ササン木
神獣編
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目標は目の前に





リトとヒロはドンのサーカス団が拠点にしている街外れの広場へと足を運んだ。

色とりどりのテント、眩い装飾、そして大きな檻の並ぶその光景は、まるで異世界の遊園地のようだった。


「ここが……ドンのサーカスか。」

ヒロがぼそりと呟く。


テントの入口に立っていたのは、雑用係らしき団員の男。

ヒロは一歩前に出て、堂々と告げた。


「団長のドンに会わせてほしい。俺たちは、このサーカスに入団したいんだ。」


男は訝しげに二人を見たが、やがて奥へと引っ込んだ


すると、程なくして――ドン、ドン、と地響きのような足音が迫ってくる。

そして、酒の匂いをまとった低い声が暗がりから響いた。


「……なんだぁ? 朝っぱらからガキどもがうるせぇなぁ?」


姿を現したのは、巨体に不釣り合いなほどぎらついた眼を持つ男――団長ドンだった。

睨みつけられただけで空気が張りつめる。


「俺のサーカスに入りてぇ? ハッ、子どもの遊び場じゃねぇんだぞ。消え失せろ。」


その言葉にリトが一歩前に出る。

小さな体を震わせながらも、真っ直ぐにドンを見据えた。


―「待ってください! 私は……“光源こうげん”というSネームを持っています!」


空気が一変する。

ドンの目がギラリと光り、数秒の沈黙の後――。


――「……“光源”だと……? はっはっはっは!! 面白ぇ!!」


豪快な笑い声がテントを揺らした。


――「よし、歓迎だ! お前みたいな光の持ち主なら、このサーカスをさらに輝かせてくれるだろう!」


リトがほっと息をついた時、ヒロがすかさず口を開く。


――「じゃあ俺もどうだ? 彼女をサポートする役が必要だろ?」


ドンは一瞬睨んだが、やがて肩を揺らして笑った。


――「まぁいい……! 宴だ!! 新しい仲間のために、夜明けまで飲み明かすぞォ!」


こうして二人は団員たちと盛大に宴を楽しんだ。

酒と歌声、笑いに包まれたその夜。

リトはすっかり酔いつぶれ、布団に倒れ込む。


――「……なんとか、潜入成功ね……」


ヒロは余裕の笑みで彼女を見下ろし、壁に背を預けた。


――「心配すんな。あとは俺が何とかする。……おやすみ、リト。」


そうして二人は眠りについた――。


しかし事件は起こる。


朝六時。まだ薄暗い空の下で、ヒロは目を覚ました。

何かに導かれるように、足は自然とサーカスの中心――動物小屋へ。


そこにあったのは、布で覆われた巨大な檻。

異様な気配が漏れ出している。


――「これが……神獣の檻……!」


ヒロは震える手で鍵穴に手をかける。

カチリ……と、金属音が響いた瞬間――。


ピ――――!!


突如、甲高い警報音が鳴り響いた!

テント全体が震え、団員たちが次々と飛び出してくる。


そして――。


――「……おいおいおいおい……やってくれたな、ガキがぁッ!!!」


酒臭い息と共に、ドンが姿を現す。

その巨体が怒りに震えていた。


拳が振り下ろされる――が、酔いのせいか大きくブレる。


――「ドン! 待て、落ち着け!! 誤解だッ!」


必死に声を上げるが、ドンの耳には届かない。

その眼は理性を失い、獣のように殺意だけを宿していた。


――「クソッ……作戦失敗か……!! リト……ごめんッ!!」


ヒロは舌打ちし、咄嗟に後ろへ跳ぶ。

ドンの拳が檻を叩き砕き、火花が散った。


次の瞬間、ヒロは全速力でテントの外へと駆け出した――


ヒロの失敗から2時間後――

リトは魘されていたかのように起きる。


「……起きたか、女。」


重々しい声が響いた。

リトは寝床から飛び起き、声の主を探す。


「あれ……ヒロは?どこに行ったの?」


「あいつなら――裏切った。神獣を盗もうとしたのだ。あんなに楽しく宴をしたというのに……」

影の奥から低く告げる声。冷たい刃のような響きが胸を突き刺した。


「お前は……裏切らぬと誓えるか? Sネームの者よ。」


その眼差しは魂を見透かすかのよう。

リトは息を呑み、抵抗することもできずに――


「……は、はい……」


ただ頷くしかなかった。何が起こったのか分からない。問い返す余裕もなく、ただ心臓の鼓動だけがやけに大きく響いていた。


そのまま怪しまれぬよう、リトは次の公演のための練習に没頭する。


「次は……分かっておるな? これは我が全身全霊を賭けた、とても大事な公演である。」


「……はいっ!」


その言葉にリトは確信した。

――神獣は、ここにいる。

だが胸の奥では、ヒロの行方がずっと気にかかっていた。

「ほんと、どこ行っちゃったのよ……ヒロ……」


夜。練習で身体は鉛のように重く、湯船に浸かりながらぼんやりと天井を見上げていたその時――。


「……おい、聞こえるか?」


窓の外から男の声。

リトは慌てて振り返った。


「だ、誰っ!?」


「……俺だ。ヒロだよ。」


湯気の向こうで、確かに聞こえる懐かしい声。

リトの胸が一気に高鳴る。


「あんた!どこ行ってたのよ!?」


ヒロは朝からの出来事を簡単に語った。

自分ひとりで動いた理由、そして裏切り者として疑われぬための選択を。


「……ってわけでさ。二人一緒じゃ危険だと思ったんだ。一人にして悪かったな。」


「……なるほどね。てっきりビビって逃げたのかと思ったわよ。」


「それで、もう一つ伝えたいことがある。牢屋から神獣を盗むのは難しい。だから……サーカス当日に仕掛ける。酒好きのドンなら、きっとその時は警戒が緩んでるはずだ。それまでお前は、このまま潜入を続けてくれ!」


「はぁ!? 勘弁してよ! 今日だって練習で死にそうだったのに、一週間も続けたら本当に死んじゃうわよ!」


必死の声も虚しく、ヒロの気配はもう消えていた。

窓の外には夜風だけが吹き抜けていく。


「……あいつのアホォーーー!!!」


リトの叫びは、夜空に溶けていった。


作戦は失敗に終わった。

果たして、リトとヒロは神獣を盗み出すことは、果たして成功できるのか。

少しでもこの拙い文章を「面白い!」「続きが読みたい!」と思って頂ければぜひ星を付けてたり、ブックマークなどして貰えると作者が泣いて喜びます感想もいっぱい待ってます\^^/

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