とうとう告白?
ルリは身体を失い、アオの中で生きています。
アオの心の中では、アオも姿を形成しています。
二人は、ひとつ体で仲良く暮らしているんです。
「なぁ、アオ」
「何?」
「コレ、何て料理だ?」
「片田舎の家庭料理だよ」
「どこだよ、片田舎って」
「天竜王国の南西の端……小さな村だよ」
「なんで、そんな所の――もしかして、行方不明だった間、そこに住んでたのか?」
「ま、そういう事にしておいてくれよ」
「って、違うって事だろっ」
「もぉいいじゃない~。
今は、こやって、いっしょに食べてるんだし~」
「ん……ま、言いたくねぇなら、しゃーねぇよな。
で、コレ、作り方か隠し味かなんか教えろよ」
「ん……じゃあ次に作る時に」
「約束だからなっ」
「うん。クロと違って忘れないからな」
「あのなぁ」
「ね♪ クロ兄、ソレは? チョコでしょ?♪」
「サクラは食べただろ! 1ダースでっ!」
「1ダース?」
「複製いっぱいで、1ダースいたんだよ」
「サクラだらけ?」
「そうなんだよぉ」
「複製も食べたり出来るんだね?」
「「「「「「できる~♪」」」」」」
どんどん増えている。皆でもぐもぐ♪
「器用だね」「増やすなっ!」
「ね~、チョコは?」一斉。
「本体だけだっ!」
「俺が本体~♪」また一斉。
「うっせー! コレはサクラにはナシだっ!」
「え~~っ!」一斉に、ぶぅ~っ。
「あとで俺の分をあげるからね」
「うん♪」しゅるるっと、ひとりになった。
「で、アオ、仕事は?」
「お休み~♪」
「アオに聞いてるんだよっ!」
「サクラが言った通りだが?」
「休んだのか?」
「そんな不安そうな顔をするな。
元々休みだったんだよ。
でも、この事も手は打つからね」
アオがチラッと横を見た。
「もいっこの袋は? ちょ~だい♪」
「これは姫のだっ! ……あ……」真っ赤!
「そんなに赤くならなくても、もう知っているから。
後片付けはしておくから、行っていいよ」
「いや、でも――」
「さっきの片付け方じゃ不満か?」
「いや、大満足だ。そうじゃなくて――」
「パパッと言っちゃうんでしょ?
もぉ行っちゃえば~?」
「今朝はサクラが悪役してくれたのに、兄さん達に飛ばされてしまったからね。
そのチョコでクロらしく、いい所を見せないとな」
(見てたの?)(神眼でね)(そっか~♪)
(自分の天性なんだから、眠ったりしないよ)
(やっぱり~♪)(ルリの気持ちも解るからね)
「サクラ……アレって……わざとだったのか!?」
おもいっきり睨む!
「ふえ~~~っ」首ブンブンブンッ!
「怒るな。サクラが怒るのも当然だろ。
その上で、クロを姫のヒーローにしてやろうとしたんだ。
礼を言うべきだろ」横に光を当てる。
「そっか……サクラ、悪かったな。
で、その二人、まだ起こさないのか?」
「朝までは、このままだよ」ぽんぽん。
「マジで、ずっと寝てなかったのか?」
「そうだよ。だから手は打ってあるからな」
「アオ兄達のも、なんとかしないと~」
「カフェは人集りにはなってねぇけどなぁ」
「姫がニラミ利かせてるから~」
「マジかよ……」
「その分、病院も美術館もヒトいっぱ~い」
「病気でも、絵や彫刻を見たいのでもない女の子達でね」
「だからって、夜勤にしても同じだろ?」
「まぁね。来るけど、通院患者さんは来ないし、救急籠が来た時だけは優先してもらえるように頼んでいるよ」
「ね♪ 頼んだら聞いてくれるんだったら、輝竜衆の みんなにお手紙書こ~♪」
「そっか! 年賀状みたいになっ♪」
「保護動物の『出会い広場』にも招待しない?」
「イベントで歌ってみるか?」
「うん♪ クロ兄、いいアイデア~♪」
「そうか。ペットの世話の仕方とかの教室も開けばいいかな……そっちにファンを流せば、患者さんには迷惑にならないね。
うん、院長に話してみるよ」
「なぁ、店の方は、どうなってるんだ?」
「おっきくなってる~」
「アオに聞いてるんだっ」
「俺は行っていないから。
納品しているフジとサクラしか行っていないよ」
「アカは?」
「機器もサクラが運んでいるから」
「そうだったのか……マジでオレだけなのか……なんにも知らなかったのは……」
「お店はねぇ、3ブースになってて~、サプリ屋さんとエステと輝竜グッズ屋さんになってるよ~」
「ゲ……」
「もぉすぐ化粧品屋さん、独立するの~」
「それでフジがブッ倒れたのか……」
「アカ兄もフラフラだったんだ。
見せないけどね」
「二人共、颯竜丸が主食みたいになっていたんだ。
それでも限界が来てしまったんだよ」
「そっか……姫と話してみる。
このチョコ、皆に食わせてくれ。
栄養剤レベルだからな」
「まっかせて~♪」
「食うなよっ!」
「サクラは、ちゃんと解っているから、変な心配するな」
「中の小袋に名前書いてるからな。
各々に渡してくれ」
「中身が違うのか?」
「キン兄とアカのは甘さ控えてるし、ハク兄のは酒入りだ。
フジのはリリスさんがナッツとか入れてた」
「アオ兄のは?」出している。
「それが販売用だ。味見してくれ」
「解った。ありがとう。
今日こそ頑張れよ」
「だな。いい加減、伝えねぇとな。
行ってくる!」曲空!
――城の外。
(姫、今いいか?)
(うむ。部屋に居る)
(部屋……いいのか?)
(他の場所の方がマズいじゃろ?)
(そっか……じゃあ、行くからな)曲空。
――姫の部屋。
(コレ、おかわりだ)
(うむ♪)ぱくっ♪
やっぱ可愛いよな~♪
旨そうに食ってる顔が最高なんだよな~♪
あっ、いけねぇ。
ヘラヘラしてる場合じゃねぇっての!
(姫、今日こそ聞いてくれ)
(…………)こくり。
(オレは――)足音が近付く。
(ただの巡回じゃ。
静かにしておれば通り過ぎる)
灯りが揺らめきながら近付き――
部屋の前で止まった。
外を照らしているようだ。
「何奴!」ガササッ!「出合え! 出合えーっ!」
人か? ……えっ!? 空に魔物も!?
(姫、じっとしてろよ!)曲空!
(クロ!?)
(大丈夫だ。庭にゃあ、もういねぇよ)
(しかし――)
(じっとしてりゃ大丈夫だっ)
(クロ……)
(オレが退治してやっからなっ)
(……あ……ぃゃ……無事で……)
(ったりめぇだろっ♪)
(……うむ)
(ん? って! 乗ってるのかっ!?)
(……咄嗟に……)
(しゃあねぇなぁ……しっかり掴まっとけよ!)
(うむ♪)
庭の捕物を眼下に、黒竜は闇黒色の魔物を追った。
魔物は二体。何も持ってはいない。
どうやら偵察していたようだ。
意外と速いな……負けねぇけどなっ!
魔物が闇の穴を穿つ。
逃げる気かっ! だったら――
「透嵐槍!!」
竜巻が槍と化し、魔物達を貫く!
「暴風撃!!」
星空の如く煌めく暴風に呑み込まれ、闇の穴も、魔物達も消えた。
「クロ!♪ 凄いのぅ!♪」ハグッ♪
「こんくらい朝飯前だ♪」
「いや、真、凄いぞ♪」なでなで♪
「うわっ! やめっ! 落ちるっ!!」
カクンッ! ひゅるるるるる~~~――
「わわっ!? 如何したのじゃ!?」
「そこっ! 手っ!」「およ? て?」
「その鱗はダメだ!」「・・・手か?」
「だよっ! 離せ!」「然様か。ふむ」万歳。
竜ヶ峰に激突寸前で回避し、舞い上がった。
がるうぅぅ~~~。はぁぁぁ~~~。
「鱗を撫でてはならぬのか?」
「その鱗だけは、な……」
「この鱗は何なのじゃ?」
「逆鱗だよ。
ソレ撫でられると飛べなくなるんだ」
「然様か……申し訳ない」
「いや、知るハズねぇからな」
「して、何処へ向こぅておるのじゃ?」
「寒いか?」
「それは大丈夫じゃ」
「ここなら邪魔は居ねぇからな。
だから、聞いてくれ」
「うむ……」背に抱きついた。
え? 密着!? ソレは流石に……
オレがダメだぁっ!!
でも、離れてくれなんて言えるかよ!
落ち着け~オレ。落ち着くんだ!
「……クロ?」
「あ……」なんだか頭の中が真っ白!!
「う……」つーか、爆発!? 沸騰!?
「まぁよいか。
……待つのみじゃ……」頬も、ぴとっ。
や~らかい……何だろ……?
位置的に……顔!? 姫の頬かっ!?
いや……落ち着けって!
落としたら大変だからな!
オレとしては、風受けて頭冷やしたいが、
冬だからな……姫が冷えちまうよな。
風が強く当たらないように、ゆっくり飛ぶ。
う……ほんわかしてて……幸せだぁ~♪
――とか考えてる場合じゃねぇだろっ!
姫の鼓動まで伝わっちまってるよ……。
でも、コレって……ちょい速い?
緊張してくれてるのか?
しっかし! オレのがウルサ過ぎっ!!
落ち着けって! オレ!!
そのままフラフラと飛び続ける。
ここで言わずに、どーすんだよ! オレ!
何度も練習しただろっ!
落ちない為とか、必要に迫られてでもなく、
勢いで、とかでもなく、
姫が、自分から、
くっついてくれてるんだからなっ!
このチャンスを逃すのはバカだぞ!
「姫……」
「ん?」
「ぁ、ぃゃ……さ、寒くねぇか?」
「それは、先程も申したじゃろ。
加えて申せば、クロの背は、熱い程じゃ。
ふさふさに包まれておるのも心地良いぞ♪」
「そっか……」それで、くっついてるのか……。
でもっ! 言うっ!!
「姫、オレは姫が、す――」「くしゅっ!」
「あ……やっぱ寒いよな。冬だもんな」降下。
「降りるのか?」「風邪ひかすワケには――」
「んくしゅっ!」「ほら、やっぱ寒いんだろ?」
「いや、これは違うのじゃ」ふさふさが――
「部屋に戻るぞ」「嫌じゃっ!」くしゅっ!
「だから、寒いんだろ? 我慢するなよ」着地。
「ならば、ここで……このまま聞きたいのじゃ」
「なら、せめて風が遮れる場所に行くよ」
「うむ」
竜のまま背の上ならば、顔が見えぬからのぅ。
目を見ると、ワラワの心の臓が暴れて、
破裂しそぅになるのじゃ……。
オレは、やっぱ、ちゃんと言いたい。
姫の顔を見て、ちゃんと!
でも……竜のオレがいいって事なら、
それでも……いい……かな……?
また、黙ってしもぅたのぅ。
逆鱗近くの ふさふさに邪魔されてしもぅた。
静かじゃのぅ……
それに、温こぅて……心地良いのぅ……――
だいぶ、気持ち、落ち着いたな……よし!
もっかい深呼吸だ。そしたら言う!
「姫、オレは……姫の事が好きなんだ。
竜だけど……人じゃねぇけど……。
たいした取り柄も無ぇし、他の兄弟みたく凄いモノは何にも無ぇ。
でも、大事にする。姫の幸せを一番に考える。
姫を護る。何があっても絶対、姫を護る。
中の国の将来なんて、まだまだ考えられねぇ。
けど、それでも姫の為だったら何だってする。
だから……だから、オレと付き合ってくれ!」
……あれ?
「……姫?」
ず……ずず――「ん?」ずるっ。「うわっ」
慌てて人化! 空かさず受け止めた!
あは、は……。
「可愛いけどよぉ……寝るって……お~い。
しゃあねぇなぁ、ったく~」曲空。
桜「ハク兄、ほっぺ、どしたの?
ミカンさんとケンカ?」
白「枝に引っ掛けただけだよっ」
桜「なんで?」
白「巡視してたんだけどな」
桜「引っかかるくらい低空を?」
白「ちげーよ! 聞けよ。
魔物を見つけてな。弱そうだったから
クロのエサにしてやろうと思ったんだよ。
昼間、サクラの邪魔したからな」
桜「うん。クロ兄いいトコなしに
なっちゃったもんね~」ひゅ~~んって♪
白「クロの気が城に有ったから、
魔物 引き付けて、クロの近くの庭に
降りたんだよ。
クロが出て来たら曲空する、
気付かなかったら自分で退治するって
つもりでな」
桜「クロ兄、気づいたの?」
白「みたいなんだが……。
袖が枝に引っ掛かってゴソゴソしてたら
クロが魔物に気付く前に
城の者に、俺が見つかっちまったんだよ」
桜「デアエー! デアエー!」きゃは♪
白「それそれっ! 大騒ぎだよぉ」
桜「すぐ曲空すればいいのに~」
白「クロがなかなか出て来なかったんだよっ」
桜「コクハク中だったのかなぁ?」
白「どうだかな。
んで、やっと上空に現れたから
俺も逃げて帰って来たんだよ」
桜「魔物は?」
白「クロなら大丈夫だろ。
姫様 乗っけて行ったしな」
桜「じゃ、いいトコ見せられたね♪」
白「これで、うまくいってくれりゃ
いいんだがなっ♪」
桜「だね~♪」
そうは問屋が卸さない。