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初詣

 何やら、姫が企んでいるようですが――


 アオがアカと話しながら居間に来た。


「アオ兄♪ 初詣~♪」


「サクラ、また出掛けるのかい?」


「だって~、お正月なんだも~ん」


「アカも行かないか?

 話の続きもしたいし」「ふむ」


「キン兄さんも」「そうか」


「ハク兄、起こした~♪」ずるずる。

「俺は寝正月するんだっ」じたばた!


フジを連れたクロが戻った。

「サクラ、急いでとは、どうしたのですか?」


「みんなで行こ~♪」


「また、騒ぎにならないかい?」皆、頷く。


「だ~か~ら~、蒼月煌(ソウゲツコウ)♪」


「ああ~」一斉。


「それならバレないなっ♪」「でしょ♪」

「俺はイヤだっ!」「初詣は大切である」

「うっ……」「アカ兄も~」「ぐっ……」

「婚約者の皆様を呼ばないでくださいね」


「あけましておめでとうございま~す♪」

客間の扉が開き、婚約者達が出て来た。


「あ……」「呼んじゃった~♪」きゃははっ♪


(サ~ク~ラ~)一斉。


「ならばじゃ♪ 皆、晴れ着を着るのじゃ♪

 確と詣るには不可欠じゃぞ♪」


「本当か?」「嬉しそうで怪しいよなっ」


「何事も正装で臨むは大切な事じゃっ!」


「ふむ。確かに一理有るな」「キン兄!?」


「城で着替えるのじゃ♪」


(なら、ルリも♪)(嫌だ!!)

(そう言わず~♪)(やめろ!)

(俺が複製だから)(アオ!!)




 そうして、晴れ着の集団は初詣に出掛けた。


「城にも神社あるじゃねぇかよぉ」


「足を運ぶ事にも意義が有るのじゃ♪」


「目立つのは好きではありません……」


「だよなっ。バラけねぇか?」


「それは許さぬぞ」


「なんでだよっ!?」


「シキタリも作法も知らぬであろ?」ニヤリ。


「うっ……」


「それと、喋るでない!

 顔と合わぬのにも程があるわ!」


「っせーな……」姫に睨まれた。


「ハク殿とクロは、歩き方も気をつけよ」


「チッ」もう一度、睨まれる。「はい……」


「しかし、確かに、目立ち過ぎているな」

「そうですよね」「み~んな見てるね~」

「あ、アレ……」「見覚えある男だなっ」

「あの名刺の……」「スカウトさんだ~」


「静香様~っ!」迫り来る!


(姫を置いて逃げるぞっ!)(曲空ダメだよ~)

(人に囲まれていますからね)(うん、ムリ~)

(だが、この格好では――)(走れませんよね)

(このまま待つのですか?)(仕方ねぇだろっ)


「静香姫様っ」ぜぃぜぃはぁはぁ――


「如何したのじゃ?」


「このっ、方々は?」けほっ。


「ワラワの腰元達じゃ」(えーーっ!?)一斉。


「あのっ、皆様でっ、新たなユニットを――」


「「「「「「嫌ですっ!!」」」」」」きゃは♪


(姫! 何としても断れっ!!

 上三人を怒らせたらオシマイだ!!

 ものスゲー怒りが伝わるんだっ!!

 ゲッ! アカもフジも……ヤバ過ぎだぞ!!)


(あい解った……)

 やむを得ぬ。此方は諦めるかの……。


「この者達は、仁佳(ニカ)の国より花嫁修行の為に来ておる貴族などの良家の娘達じゃからの。

 芸能活動は出来ぬ。諦めよ」


「そうですか……惜しいなぁ……見目麗しい美女ばかり十三人も――」


「十三人じゃと?」誰か逃げたのかの?


振り返る。後ろには十三人揃っている。


 し、しまったっ!

 姫様を入れてなかった!


「静香姫様は、また統括されるのかと――」

スカウトおじさん焦る焦る!


「確かにのぅ。それで十三人か……ふむ」


「そっ、それでは、失礼致しましたーっ!」

姫にツッコまれる前に、と脱兎(ダッシュ)した。


 一難去った……。


ホッと胸を撫で下ろす王子達だった。



 城下の西の守護である白龍大社に着いた。

ここもまた、ごった返していた。


「姫様、こちらにっ!」


 あ、またチョンマゲ磊蛇だ……。


そして、関係者通路から社殿の裏へと出た。



 社殿の前には、特設の舞台が有り――


「あ♪ 珊瑚さ~ん♪」ぴょんこぴょんこ♪


二人の巫女が神楽を舞っており、そのうちの一人が舞の途中で微笑んだ。


「もう一人って」「紫苑……だよな?」

「珊瑚さんソックリ~♪」「だよなっ」

「なんだか『怒り』を感じるのですが」

「そうだね」「我々と同じなのでは?」

「当然、望んでしてはいないよね……」


姫に視線集中。


「舞を頼んだだけじゃ」


「紫苑殿に巫女姿で、と?」


「それは……」「説明していないんだね?」

「いやその……」「それは怒って当然だね」

「じゃからのぅ――」「ちゃんと謝ろうね」

「……うむ……あい解ったぞ」「約束だよ」


「クロ、あとは頼んだよ」「……ああ」



 美女集団は注目を浴び続けながらも、どうにか参拝を終え、神社の裏の林で休憩していた。


「アカ、それ貸して♪」「うむ」


「皆さ~ん♪ 集まってくださ~い♪」


「なぁに~?」「記念撮影よ♪」「ん♪」


 兄弟と婚約者達、ぞろぞろ現れる。


「並んで、並んで~♪」「何が始まるんだ?」

「いいから~♪ ワカナさん、できたぁ~?」

「準備できたわ♪」「俺が撮る」「だ~め♪」


 三脚に見慣れぬ竜宝が載っている。

ワカナも皆と並んだ。

「は~い、皆さん♪ 最高の笑顔でっ♪」

「せ~のっ♪」


ぱちり。


「あ……」「まさか……」「その通りだ」

「ゲッ!」「アカ、先に言ってくれよぉ」

「すまぬ」「でも、内々の写真なら――」


「皆さ~ん♪

 こちらにも笑顔をお願いしま~す♪」


(記者だ!)(逃げろ!)(走るの?)

(林の奥だ!)(奥!?)(こっち!)


各々、婚約者を抱えて走った! 晴れ着娘のまま。


そして木の陰に隠れ、曲空!



 兄達はサクラを背で庇い、囲んで睨みを利かせ、辺りの気を探った。


(なんで俺を囲むのぉ?)

(撮られても平気そうだからなっ)

(余計な事をしちまいそうだからなっ)

(なんか、ひっど~い)

虹藍(ホンラン)様を護ろうとしただけなのですが……)

(その通りだ)(うむ)

(サクラ、ハク兄さんとクロも同じだからね)

(うんっ♪ 兄貴達、ありがと♪)


(もう大丈夫だね)

(待て! 闇の気配だ!)

(そうだね、ルリ。行くよ!)

(ラン、待っててねっ)


(アオ!?)(ルリさん!?)(サクラ!?)


瑠璃の2竜(アオとルリ)綺桜の竜(サクラ)が舞い昇った。


(魔物だ!!)複数、闇の穴が開く。


3竜は光の球を一気に膨らませ、平たく拡げていく。


次々と竜が飛ぶ。


(アカ、頼んだよ!)(うむ)


 婚約者達を包む結界が拡がる。

桜竜が光る掌を当てると拡大が速くなり、神社を包んでもまだ拡がり、城下を全て覆った。


青竜達と白銀の竜(ハク)が光る大座布団を更に拡げ、黒輝の竜(クロ)が真下から支えた。


黒竜が輝きを纏うと、全ての竜と、座布団と結界も輝きを増した。


(フジ、聖輝煌水を!)(はい!)


藤紫の竜(フジ)が拡散した紫炎に包まれた魔物から、闇黒色の被膜が剥がれ消え、色を戻した者達が落下し、大座布団に受け止められる。


(アカ、それ――)(うむ。頼む)(任せて)

ワカナが、アカから受け取った竜宝を上空に向けた。

深紅の竜(アカ)も一気に上昇する。


(キン様、結界の光は私にお任せください)

(そうか。では、頼む)(はい)

ボタンがキンに代わって結界に掌を当て、術を唱え、光を補充し始めた。

金華の竜(キン)も飛んだ。


地上に目を向けると、四方八方から続々と人々が城下に向かっているのが見えた。


(何で、こんな大勢、城下に向かってんだ!?)

(初詣じゃ! その為に周辺から集まるのじゃ)

(集めるぞ!)(供与は!?)(大丈夫だっ!)

(それなら私も集めるわ!)(ミカンさん!?)

(如何にして話しておるのじゃ?)(うふっ♪)


 黒輝の竜(クロ)彩橙の竜(ミカン)は、曲空を繰り返し、周辺の人々を結界の内に運んだ。


 上空では、何度も光が炸裂する。



♯♯♯



 魔物の放出が止み、闇の穴が塞がった。

兄弟皆、上空で背を合わせ、辺りを探った。


「終わったみたいだね~♪」

「皆に頼みが有るんだけど――」

「アオ兄、なぁに~?」


背を向け合ったまま、こしょこしょこしょ――


「ふむ。では、そのように。

 アオ、サクラ、頼む」


「アオ、頼む!」「オレもだっ!」「私も」

「勿論、アオだ」「当然だ」


「なんでぇ?」ぷぅ。

「俺は、そんなに出せないからね。

 ハク兄さんとクロと……もうひとり――」


「嫌ですよ!」「私もだ」アカは無言で睨む。


「フジはサクラと仲良しだよね?」


「ですが……」


「お願いだよ、フジ。

 俺が操れるのは三体が限界なんだ。

 複製を落下させたくはないからね」


「…………はい」渋々嫌々……。


「おいっ! アオ!」「オレは!?」

アオは、この二人の声を無視した。



 アオは複製の青竜を消した。

七竜は降下し、揃って掌を当て、結界を解除した。


 城下は、やんやの大喝采。

そして、輝竜を呼ぶ黄色い声で湧いていた。



 綺桜の竜の背から、サクラが顔を覗かせた。


歓喜の声が上がる。


兄達も各々の竜の背から顔を覗かせた。


もう、絶叫である。


輝竜の面々が極上の王子スマイルを振り撒き、手を振った。


「じゃあ、またね~♪」


サクラの声で、竜達は次々と上昇し、空に消えた。



♯♯♯♯♯♯



「まだ編集前ですが、映画は、これを元にして頂けませんか?」


 翌日、アオとキンは事務所を訪れていた。


「素晴らしい映画が出来そうですな」ほくほく♪


「俺達は、この竜達と共に、魔界へと進まなければならないんです。

 一日も早く平和にしたいんです」


「解りました」


「ありがとうございます!」


「では、その事を知らしめる為のツアーをして頂きましょう。

 それにて、魔王とやらを成敗する迄、こちらの活動は休業と致しましょう」


「いえ、引退します!」


「魔界でのご活躍も、きちんと伝えさせて頂きますよ。

 契約期間中ですからな」揉み手すりすり。


(兄さん、どうします?

 人々にとっては、ただの特撮でしょうけど、伝える事は出来ますよね?)


(そうだな……利用するのも、ひとつの方法かも知れぬな)


(では、受けますか?)


(本来の活動に支障の無い範疇ならば、な)


(解りました)

「俺達の本来の活動を妨げない事、これだけは、お約束願います。

 ツアーも、しても構いませんが、俺達が伝えたい事を自由に話しますよ」


「ツアーして頂けるなら、ご自由に♪

 それでギャラの方は――」


「それは、静香殿とお話しください。

 我々は、金銭の事には関与しませんので」


「然様ですか……。

 では、ツアーの為の新曲をお願いします。

 先行してアルバムを出しますので、十曲程」


「「え!?」」二人、揃った。


「流石、ご兄弟ですな♪」にこにこ♪


「……解りました。

 ただし、今回限りです。

 それと、契約の更新は一切しませんので」


「先程、静香姫様が更新されまして……ええっと。

 ああ、これですな。

 十年契約となっておりますので――」


「「待て!!」」また揃った。


「はい?」


「聞いていないぞ!」

「私達は無職ではないのだ」


「お城でのお仕事なら構わないそうで、ちゃんと許可を頂いておりますよ」


(もしかして、俺達は――)

(静香殿の配下という事なのか?)

顔を見合わせる兄弟だった。


(クロ! 姫を捕獲しておけ!!)


(え? アオ、どうし――)


(どうしたもこうしたもない!!)


(あ、ああ……捕まえとく)こ、怖ぇ……。


(逃がすなよ!!)





 前回、サクラはキンをどう説得したのか?

姫に初詣に誘われた後、サクラは――


桜(キン兄さん、今、よろしいですか?)


金(うむ。サクラ、改まってどうしのだ?)


桜(中の国では、年始に、その年の成功を

  祈願するのだそうです。

  これから魔界に進むのですから、

  私達も如何ですか?

  こちらの文化を学ぶ為にも、皆で詣でる

  方が良いと思いますが)


金(ふむ。だが我々が行けば――)


桜(はい。ですので、女姿で参拝するのは

  如何でしょうか?)


金(ふむ。確かに、それならば輝竜だとは

  思われまいな。

  では、皆を集めて欲しい)


桜(はい。キン兄さん、嫌がる兄様方に

  有無を言わせぬよう、お願い致します)


金(皆の無事を願うのだからな。

  揃わなければ意味が無い。心配無用だ)


桜(ありがとうございます。

  それでは、集めます)



『歴史』とか『文化』とかいう言葉が大好物な

キンを、こうして簡単に説得してしまった

サクラなのでした。




凜「でも、キン様を騙すような事して

  大丈夫だったの?」


桜「なんか、姫が企んでたからね~、

  確かめたかったんだ。

  後で、ちゃんとキン兄とアオ兄には言ったよ」


凜「こっちのサクラもクセモノだわ……」


桜「なんか言った?」


凜「なんにもっ!

  でも、クロも気づいたんじゃないの?

  途中で止めてたでしょ?」


桜「アレ、クロ兄だと思ったのぉ?

  止めたの俺だよ~」


凜「え???」


桜「クロ兄は、アオ兄に黙らせてもらって~

  俺が姫を止めたの♪」


凜「やっぱりクセモノだわ……」ボソッ。


桜「ん?」


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