第八十三話・Aランク
もう!ホント何なんだよ、この連中はっ!?
どうしてこんなにも自分勝手で自己主張の激しい、モノの見方しか
できないのさ!
典型的な自分の意見は正しく、間違いは絶対にない。だから他人の意見など、
聞く必要性がない!
心の底から、そう信じきってしまうタイプか。
しかもそれがパーティ全員とは......
「......な、なぁ、お前達。俺の言葉をちゃんと理解しているのかな?
さっきから何度も言ってるよね?この娘が勝手に、一方的に
まとわり付いてるってさ!もしかして...お前達の目、腐っていないか?」
ランスと呼ばれているイケメン青年と、その仲間の女性二人が見せる横柄な
態度に、いい加減、苛立つ気持ちを隠せなくなってきた俺は、少し挑発を
込めた口調で、愚痴と不満を相手に述べていく。
すると、
「き、貴様ぁぁぁあっ!言うに事欠いて、この美しい俺様の目に対して、
腐っているだとぉぉおおっ!!」
案の定、俺の言葉に癪の障ったランスが、顔が真っ赤に染めて激怒してくる。
「はいはい。腐ってないよねぇ、ゴメンゴメン♪......それよりか、プレシアさん。
キミはいつまで俺の背中に抱き付いていらっしゃるおつもりなのかなぁ?さっさと
降~り~な~さ~い~~っ!」
そんなランスの激昂を、俺は完全に無視かのように、心の込もっていない
謝罪を口にしつつ、その間、俺の背中に今も抱き付いているプレシアを、
激しく身体を揺らしては、何度も振りほどこうとするのだが、どういう訳か、
プレシアが俺の背中から離れてくれる気配は全くしなかった。
そのレンヤとランスと、そのパーティ仲間の女性二人達が言い争う姿を、
少し離れている場所にあるテーブルで、休憩をしていた冒険者達が見ており、
「お、おい...見たかよ、今のやり取りをさ?あのおっさん、すげえな!
この町きっての強者Aランクパーティの『紅の戦士』に対して全く物怖じて
いやがらねぇっ!?」
「...いや、あのおっさん。絶対、あいつらがどんな連中かも知らずに喧嘩を
売っちまったんだぜ!」
「そいつは可哀想にな。あいつらに喧嘩を売った結果、その後どうなって
しまうのか、知らないんだろうな?」
「あの連中...自分らに正義があると思ったら、聞く耳なんぞ全く持たず、
誰だろうと構わず、ボコボコにしやがるからなぁ......」
「そんな関わりたくないナンバーワンのランス達に逆らった挙げ句、
あんな舐めた態度を取るだなんてよ!?」
「ああ。くわばら、くわばら!喧嘩を売るのはおっさんの勝手だがよぉ、
その喧嘩に俺達を巻き込まないでくれよ~~っ!」
...と、
各々の冒険者達がザワザワと騒ぎ立てながら、
戸惑いの表情を見せる者。
驚愕な表情を見せる者。
そして両手を合わせて巻き込むと祈る者。
そんな様々な目線を向けてこっちを見ている。
こ、こいつら...めちゃくちゃ冒険者達から恐れられてるな。
いや...正確には嫌われているが正しいか?
それに俺が喧嘩を売ったみたいな流れになってるけど、喧嘩を売ってきたのは
俺じゃなく、こいつらの方ですからねぇっ!
それにしても、こんな連中でもAランクパーティになれるんだな。
俺がミュミュから聞いた話では、
「SランクやAランクともなると、戦闘能力が高いのは勿論なのですが、
その様々な経験を得た事により、心も精神も極めてしまうのか、結構人格者が
多いんですよ♪」
...って聞いたぞ!?
だけどこいつら、どう贔屓目で見ても、人格者というよりか、粗暴でガッカリな
クソガキにしか見えないんですけど!?
まぁ、実際ガキなんだけどさ。
だ、だからなのか!?
このランスってやつもひどくて話にならんが、それを飛び越えて、そことそこに
いる女性二人は特にひどいっ!
こっちの女性は、見た目は清楚で清廉潔白な貫禄を匂わせるというのに、
まるで品性の欠片もないし...
......あ、神官といえば、俺があの城で出会った神官達も全員が全員、
品性どころか、慈悲さもへったくれもない連中ばかりだったっ!
俺はあの城にいた神官達のふてぶてしい態度を思い出すと、
「じゃ、これで正解なのか......?」
と、軽く苦笑をこぼす。




