第五十六話・竜の素材
「そうそう。ちょっと気になったんだけどさ、なんであたしのあげた
【カード・リング】を使って、それらをカード化してなかったの?」
アイテムボックスから無造作にアイテム出し、それをテーブルの上に
ボトボトと置いていくサマを見て、ルコールが何でとハテナ顔になる。
「ああ、あれね。俺もそうしたいのは山々なんだけどさ、でもあの
リングって、アイテムをカード化したり、それを具現化する時に
めっちゃMPを消費するんだよね。だから俺の今のMPじゃ、精々
数個カード化するのが限界なんだよ!」
「あ、そっか。そういやレンヤって、まだこっちに来たばっかだから、
そんなにLVが高くないんだっけか?」
ルコールが手をポンと叩いて相づちを打つと、レンヤのLVを低さを
ふと思い出す。
「そう言う事なので、貴重アイテム以外はアイテムボックス行きって
訳なのさ!」
因みに今カード化しているのは、さっきの盗賊共からドロップした、
鋼の剣を数本と、回復の為にポーションとMPポーションを数個している。
「では、レンヤ様。これらのアイテムの査定を今からしてまいりますので、
その場で少々お待ち下さいね!」
「うん、分かっ―――おっと、そうだ!ちょっと待って、ミュミュ!」
「――はう!?」
俺はある事をふと思い出し、アイテムの査定に入る為、奥の部屋へ
移動しようとするミュミュを呼び止める。
「えと、レンヤ様。何か言い伝えるのを、お忘れになられてましたか?」
ミュミュがクルッと振り返り「どうかしましたか?」という表情で
レンヤにそう問う。
「な、なぁ、ミュミュ。駄目なら駄目でいいんだけどさ、こ、これって
売る事ができる......かな?」
俺はミュミュを呼び止めた用件、あの時にルコールから貰ったゴミ素材、
その中から、取り敢えず竜の爪と竜の鱗を一個ずつ取り出してテーブルの
上にポンポンと置いた。
「ハッ!こ、これは......っ!?!?」
それを見たミュミュが「な、なんですか、これは!?」というビックリ
した表情で困惑している。
――あ!
ミュミユのこの顔を見るに、これらの買い取りは不可みたいだな。
こんなんでも、一応こいつの...竜の素材だからいけると思ったんだが、
やっぱ駄目だったか。
「あはは...ご、ごめんね、へんな物を置いちゃって!こんなゴミ素材、
売り物になる訳ないよね♪」
「おい、レンヤ!あたしの分身たちにゴミ素材って言うじゃないっ!
前にも言ったけど、失礼極まりないぞっ!」
レンヤに自分の分身?をゴミと呼ばれた事に、ルコールが身を乗り
出すかの様にして怒ってくる。
「ふう、だって買い取り不可だぜ。こんなのゴミって言われても
しょうないじゃんか!」
だがそんなルコールに、全く悪びれもしないレンヤが、やれやれと
言わんばかりに嘆息を吐いて肩をすくめる。
「ぐぬぬぬ...ね、ねぇ、ミュミュ!それってゴミじゃないよねぇえっ!」
「............」
「......って、おお~い、もしもし~ミュミュさ~ん。あたしの質問を
聞いているかな?おぉぉぉお~~~いっ!!」
「―――はうっ!?す、すいません!あまりのショックで、つい意識が
飛んでしまいましたっ!」
ビックリ状態のミュミュにルコールが大声で呼び掛けると、ミュミュが
目を大きく見開き、我に返った。




