第五十五話・アイテムボックス
「......ふう。以上が買い取って欲しいアイテムだよ!それじゃ、
ミュミュ。買い取りの査定をよろしくね!」
「.........」
「ん?ちょっとミュミュ。俺の言葉、届いてる?おぉぉ~~い!」
俺の言葉を聞いても目を丸くしてボーッとしているミュミュの顔の前に、
スッと右手を持っていき、フリフリ振ってみると、
「―――ハッ!?レ、レンヤ様!今の空間って、もしかしてですけど、
あのアイテムボックスなんじゃっ!?」
我に返ったミュミュが、先程アイテムを大量に出したあの空間は
アイテムボックスなのではと聞いてくる。
なので、
「あ、うんそうだよ。これって、ホント便利だよね♪」
レンヤはその問いに、イエスと答える。
「しかしまさかアイテムボックスを習得していらっしゃるとは......
レンヤ様凄すぎですっ!」
「......え?このアイテムボックスって、もしかして取得が難しい
ギフトなのか?」
目の前で身を乗り出す様に近づき、尊敬の眼差しを向けてくるミュミュに、
俺は驚きと戸惑いを押さえつつ、そう問うてみると、
「はいです!難しいどころの話じゃありませんよ!アイテムボックスと
言えば、ギフトの中でも超激レアギフトと言われているんですからっ!
それを取得している人は、恐らく数える程しかいませんっ!」
鼻息荒くミュミュが、かなり興奮気味な口調にて、アイテムボックスの
凄さを淡々と説明していく。
数える程しかいないだと!?
マ、マジでか......。
それは確かに珍しい所じゃないな。
――ハッ!?
な、何かめっちゃ沢山の目線を感じる!?
あ!あのナイスバディの受付嬢や可愛い受付嬢も、こっちの方を
目を丸くして見ているじゃん!?
...って事は、
今あの二人の所に行けば、あのナイスバディか、可愛い子ちゃんの
サポートが受けられるのではっ!
「......な~んて事、思ってないよねぇ~?レンヤさ~ん?」
「――はぐ!?」
ル、ルコールさん!?
な、なんで俺の心の声がお分かりにっ!?
「はは、あはは...そ、そんな事、思うわけがないじゃんかよ!
も、もう~ホント、ルコールさんったら~!」
「......本当ですか?本当に信用してもいいんですよね、レンヤ様?」
「―――はぐ!?イ、イヤだな、ミュミュまでそんな目をしてぇ~!
ほ、本当だから!信じて下さいよ!あははっ♪」
俺は心の中で、ふと思ってしまったさもしい考えが、ミュミュに
バレない様、動揺を抑え込んだニガ笑いを浮かべ懸命に誤魔化す。
ごめんね、ミュミュ。
めっちゃ、邪な心が頭を過りちゃいました。
でも心から反省いたしますので、そのウルウル瞳をやめて下さい!
その視線、胸にグサグサ刺さってきて、死ぬ程痛いですからっ!!
「あっれ~?おかしいなぁ~だってレンヤの両の目尻、めちゃくちゃ
垂れ下がっていたみたいだけど、気のせいだったのかなぁ~?」
「おい!う、嘘は良くないぞ、ルコール!?ミュミュに決めたと以上、
他の受付嬢に直様乗り換える行為をするなんて。流石にそれをする程、
俺は落ちぶれても節操なしでもないぞ!う、うんっ!」
いやホント、マジで反省するから、ルコールさんもその悪戯っ子
全開の表情でニヤニヤするのやめてくれ!
俺は空気を読めやといわん表情で、からかってくるルコールに対し、
心の中でそう嘆願するのだった。




