第三十一話・これは駄目ですな
さ、さて...もうひとりの方はどうかな?
俺は期待を込めて、美人さんの横にいる人物へ目線を向ける。
本来、女性を顔や姿だけで評価するのはいただけない行為なのだが。
いいや...ここで虚言や見栄を張るのはやめておこう。
俺は美人さん....特におっぱいが大きいならそれでいい男......
そう、性格なんぞは二の次な男なのだっ!
おっと、いかんいかん。
こんな所で俺の趣理論を発表している場合じゃなかった!
「それでは改めて、お待たせの可愛い娘ちゃんはっと...」
俺は気を取り直して、もうひとりの女性の方へドキドキで目線を向ける。
「............」
「........ああ」
うん、これは駄目ですな。
可愛いといえば、確かに隣の美人さんと同じレベルで、めっちゃ
くちゃ可愛くはあるけれども、
どう見てもこの子、年齢が十代前半くらいだもん。
それに何故かわからんが、こんな可愛い顔立ちをしているのに、
この子からは全く女性っぽさを感じ取れない。
どちらかって言うと、この子からはルコールと同類の匂いがする。
「―――ハッ!?」
ル、ルコールさんがこちらをお睨みになられている!?
も、もしかして俺の思っている事がおわかりにっ!?
「あ、あの...?ど、どうかなされたのでしょうか?何やら先程から、
ボーッとしていらっしゃいますけれども?」
「はうっ!?」
ボケッと思考しているレンヤの顔を、美人さんが心配そうな表情をして
覗き込んでくる。
「す、すいません!?貴女方お二人があまりにも素敵でお美しい女性で
したので、つい見とれていました!」
「あらあら、とても御上手な御方ですわね。でも、悪い気はしませんかしら♪
ねぇ、アリア♪」
「ま、まぁ...私が美人なのは当然な事ですけど、お母様の言われた通り、
言われて悪い気はしませんことよ!」
美人さんの横で、アリアと呼ばれた少女が顔中を真っ赤に染めてつつ、
ツンデレっぽい事を述べて同意する。
「でも本当に貴方のおかげで助かりましたわ。危うくこの子とあの世へと
旅立ってしまう所でしたもの!」
「わ、私も一応感謝するわ。でも助けに来るんだったら、もうちょっと早く
助けに来なさいよね!」
キサリは頭を深々と下げ、感謝の意を表し、アリアは顔をしかめつつも
その頬を赤くし、同じく感謝の意を表した。
「はは...大事にいたらなくて本当に良かったです。こんなキレイな女性方に
もし傷でもついてたら一大事でした!」
「ふ、ふん...しかしどうせ助けられるのなら、あなたみたいにくたびれた
おっさんなんかよりも、勇者様のようなカッコいい殿方に助けられたかったけど、
で、でもまぁ...ここはあなたで、が、我慢してあげるわっ!」
にこやかな表情で述べるレンヤの言葉を聞いた瞬間、アリアの顔が耳まで
真っ赤に染め変わり、それを誤魔化したいのか、ツンデレッぽい言葉を懸命に
述べるアリアだった。




