第二百六十三話・青い星形のアザ
「お、おい、ルコール!」
「いいじゃん。どうせこの船の目的地もあたし達と一緒なんだしさ!」
「俺達と同じ目的地?」
「うん。ねぇあんた。この船ってグランディーネに向かってるんでしょ?」
「え?ああ、は、はい、そうです!」
ルコールの問いに、ミナルがコクンと首を縦に振る。
「で、でもどうしてそれが分かったんですか?私まだお二人にこの船の
行き先をお伝えしていなかったと思うんですが?」
「いやだって、この船って帝国グランディーネ専用じゃん?そして
進行方角もそのグランディーネに向かっているみたいだしねぇ!」
「――っ!?」
「な、なんだと!?帝国グランディーネ専用だと!?せ、専用って事は、
つまりこの船...お、王族関係の船って事かぁっ!?」
「うん、そうだよ♪この船ってば、ガルナド王の趣味趣向があっち
こっちと入っているからさ、一発で直ぐ分かったよ~♪」
ルコールはそう言うと、その趣味趣向という場所を指差す。
「それともうひとつ。この船がグランディーネ専用だと思ったのは、
さっき戦ったこいつらの陣形や戦い方かな?」
「え!?そ、それはどういう事でしょうか??」
「ん~それはね。昔あいつ...ガルナド王と戦った事があるんだけど、
その時に見せた戦闘の仕方と陣形、その殆どと一緒だったからさ♪
射程で相手を威嚇し、翻弄させた所に前衛が支援魔法で強化して突撃。
その間、後衛が同時に魔法攻撃...まぁ今回は船上の戦いだったから、
魔法は同時にとはいかなかったみたいだけど♪」
ミナルの疑問に対し、ルコールがその気づいたという理由を淡々と
説明していく。
「は、はい?お父様と昔に戦った!?な、何を仰っておりますの!?
貴女どう見ても、私と同じくらいの年齢ですよね?その貴女が昔の
お父様と戦えるなんて事、出来る訳がないではありませんか!」
昔に自分の父と戦ったというルコールの発言に、ミナルが眉をしかめて、
そんな事は有り得ないと口にする。
「いや、お嬢様。それがありえるんですよ。何故なら、こいつの歳ってば、
ゆうに数百歳を超えていますから......この見た目ではにわかには信じられ
ないでしょうが......」
「ええぇぇ!?はあぁぁあっ!す、数百歳を超えて......ですってっ!?!?」
レンヤから告げられる、ルコールの年齢が百を超えていると聞いたミナルは、
目を大きく見開いて、そんな馬鹿なといった表情でビックリしてしまう。
「いやいやいやいや!さ、流石にそのウソはどうかと思いますけど!?」
自分と同じくらいの娘が百を超えているという事実、それをミナルは
認めようとしない。
なのでルコールは、
「あいつの娘って事はさ、あんた多分...『ミディナール』でしょう?」
ミナルの顔をジッと見据え、ミナルの本名を口にする。
「―――なっ!な、何故、私のファーストネームがお分かりに!?」
「何故って...それはあんたとは赤ん坊の頃に会っているからだよ♪」
突如、初めて会った相手...ルコールから知り得ぬ自分の本名を暴露された
ミナルが目を見開いて喫驚していると、ルコールが本名を知っている
理由をミナルに告げる。
「へ!?わ、私の赤ん坊の頃に...ですか!?」
「うん。あいつからあんたのお世話を押し付けられて、何度かねぇ♪」
ルコールがそう言うと、おしめを変える動作をする。
「あはは...えっと...ですね、お父様と戦った事があるとか、年齢が数百歳を
越えているだとか...そういった冗談はそのくらいでそろそろお終まいに
しませんか?」
ルコールの言う事を冗談だと思っているミナルは、苦笑をこぼしながら
もう冗談はその辺で良いのではと口にする。
「あれ?まだ信じてないんだ?ん~そうだねぇ...だったら、こんな証拠なんて
どうかな?」
ルコールはニカッっと微笑み、ミナルの耳元にソッと顔を持っていく。
そして誰にも聞こえないくらいのか細い声で、
「あんたのおケツ、青い星型のアザが左右にそれぞれ一個ずつあるでしょ♪」
ミナルの秘密ごとを囁く。




