第二十四話・盗賊が馬車を襲う理由
――レンヤが盗賊退治を決めたその頃。
「あ、貴方達は何なんですかっ! 私達をフォーラム帝国の王族の者と知ってこんな狼藉を働いているのですかっ!」
綺麗な装飾に身を包まれた貴族と見られる女性が、恐怖に脅えながらも盗賊へと叫声を上げてその行為を非難する。
がしかし、
「ぐへへへ...なぁにをほざくかと思えば...そんなのはよぉ、この馬車の立派な紋章を見れば、一目瞭然だろうがぁっ!」
強気な貴族の女性の態度を嘲笑うかの様に、盗賊が下卑たガラ声で馬車の紋章をバンバンと叩く。
「な、なら、貴方達はそれを知っても尚、このような愚行を行うというのですか!」
自分の身柄も素性も知って全く動じない盗賊達に、流石に貴族の女性も動揺を見せてしまう。
「知っても何も、貴様らがフォーラム帝国の王族だと知っているからこそ、俺達はここで待ち構えて襲っているんでなっ!」
「――な! し、知っていた...ですって!? そ、それじゃ貴方達はもしかして義兄様...ヴィレン義兄様の命令でこのような事を!?」
元々自分達の事を知って襲ったと言ってくる盗賊に、貴族の女性が身に覚えのあるひとつの仮定を想像してそれを口にする。
「ぐふふふ...さぁて、それはどうだったかな? 見ての通り、俺達みたいな下賎な輩はそんな事は直ぐに忘れちまうからなぁ~!」
盗賊がワザとらしい声と行動をして、貴族の女性を小馬鹿してニヤニヤしてくる。
「それに知らない方が幸せって事もあるぜ。もしそれを知ってしまったら、お前ら死んでも死にきれねぇかもしれねえぞ? おっと、いかんいかん。少し喋りが過ぎたようだな、カカカ!」
「くぅ、はやり...そうなのですね......!」
うっかり洩らした盗賊の言葉に、貴族の女性が怒り顔を浮かべて拳を強く握る。
「これは参りましたわね。まさかこのタイミングでヴィレン義兄様が動くとは......」
今回の行事にはギガン城が一枚噛んでいますので安堵しておりましたのに、そのせいでスッカリ油断してしまいましたわ。
「しかしここで私達が行方不明にでもなったと知れば、ギガン城の人達も一番最初にヴィレン義兄様を疑うでしょうに......」
ヴィレン義兄様には王家の調査力をくぐり抜けられる、何かしらの策があるのでしょうか?
「おいおい、何をボーッとしているんだ、キサリ様? まさか今の状況が夢か幻かと思っているんじゃねぇだろうなぁ? まぁ気持ちはわかるがよ。だが現実は残酷だ!」
「くくく、そうそう! 現実を直視しなよ、キサリ様♪」
考え事をしている貴族の女性...キサリの頬を、盗賊のひとりが持っているナイフでペチペチと叩きながら、ニヤニヤする。
「なぁ~リーダーよぉ。本当にこのまま、こいつらを消しちまうのか? こんな上玉...消すには、ちと勿体ないと思うんだが?」
「俺だってお前と同じ気持ちだ。こんな上等品、味わうか奴隷として売って儲けたい所だ! だがそれをやると俺達の方が消されてしまう!」
「ああ...そうだったな。クソッ! 悔しいがここは我慢するか......っ!」
盗賊達はこの二人の女性を消すのは勿体ないと考えはするものの、やはり自分達の命がズット大事なので、ここはグッと我慢するのだった。




