第二十三話・助けない?助ける?
ハァ...それにしても、
何か俺の行く先々って、人と戦うイベントごとが多過ぎじゃねぇ?
俺はあの城で何十人の騎士、兵士、神官と戦った事を思い出す。
ホント、魔物と戦ったと言えば、未遂だけど ドラゴンだけじゃんか。
......まぁいい。
それを置いておくとして、
「盗賊かぁ......あいつらを相手をするのは少し...いいや、かなり面倒で
厄介そうだよなぁ......」
しょうがない。
ここは盗賊が消えていなくなるまで、その辺でのんびりと
休憩して、そして盗賊らがいなくなったら、リタイの町の旅を再開するか。
という事で、俺はルコール言う盗賊連中が消え去るまで、ここでのんびり
待つ事にした。
「お...あそこに丁度良い、休めやすそうな巨木があるじゃん♪」
俺は良い休憩所を見つけたと、心をウキウキさせながら移動し、その巨木へ
腰を据えて寄りかかる。
「ねぇ、レンヤ。盗賊に襲われている馬車を救出に行かなくていいの?」
俺がのんびり休憩をしていると、ルコールがそんな事を聞いてくるので...
「はぁ~?俺が救出に?何でさ?」
...と、ルコールの問いにハテナ顔をして返す。
「何でって...この展開は勇者であるレンヤが、盗賊に襲われている人を
助け出しに行くパターンかな~っと思ってさ?」
「イヤイヤイヤ...なんで何処の誰やも知れぬ他人の為に、俺が命を
張らなきゃいかんのよ?」
こんなの普通に考えても、至極当然な思考だと思う。
え...道徳心?んなの知った事か、俺は聖人君子じゃないし!
第一、自分の命の方が、他人の命なんかよりも何倍も大事だ!
そうさ、命あっての...なんとやらって言うじゃん。
それなのに、そんなくだらない正義感で死んでちゃ、元も子もない。
俺が勇者としてこの世界に召喚されていたとしたら、ルコールの言う
行動も吝かじゃないかもしれない。
だが現実は、勇者と言う肩書きを持っていても、勇者として落ちこぼれの
烙印を押された身だ。
そんな烙印を押された俺が、何が悲しくて勇者ヅラをして正義を執行しな
きゃいかないんだっていうの!
そう...あの城で蔑まれ、つま弾きにされた時に、俺はこの世界の救世主と
なる事を拒絶し、のんびりと冒険をするって...そう心に決めたんだよ!
「...とう言うわけで、そんな何の得にもならん事は無視するに限る!」
「うん、確かにレンヤの言う通りだよ。あたし達は正義の人じゃないしねぇ。
でも助けないってなると、あの子達ちょっと可哀想だね。あんなに美人さんに
可愛い 娘みたいだから、きっとこれから酷い目に合っちゃうんだろうなぁ...」
―――美人さんっ!?可愛い娘っ!?
「でも、それも運命。あの二人は運が無かったと諦め―――」
「おい、ルコール!そんな所で何をボケッとしてやがるんだっ!急ぎ、盗賊の
クソ野郎どもを全員無きモノにして、襲われている姫君を救出に行くぞっ!」
ルコールの示す盗賊のいる場所へ向かって、人差し指をビシッと突き付け、
俺はその瞳をメラメラと燃やすのだった。




