第十五話・ニヒルの似合わない大人
「お互いの自己紹介も無事に済んだ所で。素といえばさ、あたしも
ちょっと聞きたかった事があるんけど。今のレンヤの雰囲気って、
何か最初と全然違うよね?もしかしてその砕けた感じの方が
レンヤの本当の素だったりするのかな?」
「え!?」
改めて発するルコールの図星の言葉に、俺の心臓のドキドキが鼓動を
早くしていく。
「ふ。く、砕けた感じとは、一体どういう意味なのかな?わ、悪いが
キミが何を言いたいのか、正直まったくわからないのだが?」
「イヤイヤイヤ!今更隠したって無駄だからねぇ!だってレンヤったら、
さっきから素をこぼしまくってるからっ!宝の話しをした時や、あたしの
変身を見た後とかさぁっ!」
ルコールが呆れ口調でそう述べると、懸命に誤魔化そうとする俺の顔を
ジト目の表情でジィィーッと見てくるので、
「そ、それは多分、ルコールの気のせいだと思うぞ......うん」
俺は思いっきり動揺を見せつつも、素の自分を何とか誤魔化そうと
躍起になる。
「き、気のせいって...そ、それは流石に苦しい言い訳だと思うけど、
レンヤ......」
で、ですよねぇ~~!
「もう!一体全体なにを以て、そこまで頑な態度で自分の素を
隠そうとしているのか知らないけど、ハッキリ言ってその無駄な
ニヒル、悲しいくらいに薄ら寒いからねぇっ!」
「はうっ!?」
む、無駄なニヒルっ!?
悲しいくらいに薄ら寒いっ!?
う、嘘だろ......!
年を取った中年男性が醸し出す、クールダンディーを頑張って演じて
いたというのに、
まさか無駄なニヒル&薄ら寒いと思われてしまうとはっ!?
何か知らんけど、めちゃくちゃ恥ずかしいぃぃぃいい――――っ!!
俺はドンドン込み上がってくる、言い得ない羞恥心から真っ赤に染まった
顔を手を覆い隠して悶え苦しむ。
しばらく悶える苦しむこと、数分後。
「だぁぁあっ!もうクールダンディーはヤメだ!ヤメッ!!
それでいいんだろ、ルコールッ!」
「うん、うん。やっぱ、そっちの方がレンヤっぽくっていいと
思うよ♪」
お、俺っぽいって...
キミとはさっき出会ったばかりでしょうが。
「でもひとつわかんないのは、何でレンヤはそんなクソダサい喋り方を
していたの?」
「クソダサい言うなっ!ったく...それはお前と同じ理由だよ、お前とっ!
良い年したおっさんがこんなガキっぽい喋り方をしていたら、威厳も
クソもへったくれもないだろう?」
ハテナ顔をしているルコールに、少しムクれた口調のレンヤがその理由を
口にする。
「あはは♪それは大丈夫だって!いくらレンヤがニヒルにしてようが、
カッコつけて喋ろうがさ。レンヤに威厳と風格を感じる奴なんて、
誰ひとりいないと思うから♪」
ルコールが全く悪びれを感じさせない、屈託ない笑顔をそう言い放つ。
「こ、こいつ、マジでヒデェな......」
そんなルコールの笑顔を見た俺は、困惑と憤怒が入り混じった言葉が
口から洩れるのだった。




