第十一話・ドラゴンの頼み事
「なるほどのう。もしかしてこの部屋の中に上へとあがる階段があるやも
しれんと思い、ここへ入ってきた。そういう訳なのじゃな?」
「.........ああ」
ドラゴンの確認の問いに、俺は静かに頭を縦にコクンと小さく下げる。
「しかし貴様。いくら出口があるやもしれんからといって、よくもまぁ
そんな低い可能性の理由だけで、あんな馬鹿重い扉を開けようと思ったな?」
「ん?それはあんな大きな扉だ。もしかしたらこの部屋の中に何か良いレアな
おたか―――ゲフン、ゲフンッ!イヤ!な、なんでもない......ぞ!」
俺は語っている途中で「この部屋の宝=このドラゴンの持ち物じゃん!」と、
ふと気づくと、うっかり喋りそうになった言葉を強引に口の中に引っ込めた。
「ほう...この部屋に入ったのは、お宝が目的だったというわけ...か...?」
ハヒィィィイイィ―――ッ!?
誤魔化せてなかったぁぁぁぁああぁぁっ!!?
「はは...え、えっと、そ、それは言葉のあやというか...なんと言うか......」
俺はドラゴンの地獄耳に目を丸くして驚き、身振り手振りで説明して、
懸命に言い訳を吐き続けていると......
「そんなに我のお宝を欲しいのなら、別にお前にくれてやっても構わんぞ?」
え!
マジで!?
このドラゴンさん、今俺に宝をあげてもいいって言った...よね!?
「ほ、本当に貰っちゃってもいいの?マジ貰っちゃうよ?」
あっさりと宝をくれてやると述べてくるドラゴンに、つい俺の素の性格が
表に出てしまう。
「ああ...構わん。別にあんな物、我に取っては全くいらん無用の長物じゃしのう。
じゃからお前にくれてやっても良い...のじゃが、但し...ひとつだけ条件がある!」
「条件...ですか?」
そ、それは俺に叶えられる範囲の条件なんでしょうか?
身体の一部や、命に関わる何かを差し出せとかだったら、嫌だな。
もしそうだったら、どうしよう。
そうなった時は、全力で逃げ出さなきゃなっ!
でも絶対に逃げ切る事は無理だよね。
だって、これから逃げ切れる自信が全くないもん。
くぅ、こ、こうなったらどうかお願いしますっ!
俺にもできるような楽勝の条件ごとでありますようにぃぃぃいっ!
俺がドラゴンの条件とは何なんだと、思考を懸命にグルグル、グルグルと
回していたその時、
『我をお前の仲間として、一緒に連れて行け!』
ドラゴンがニヤリと口角を上げて、お宝との交換条件を発してくる。
「は、はぁあぁぁっ!?あ、貴方を一緒に連れていけだってぇぇええっ!??」
ドラゴンの発する条件を聞いた俺は、目を大きく見開いて喫驚してしまう。




